軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第016話 神「うぜっ」

朝になり、起きると、エルシィとウェンディを起こし、簡易ベッドを片付ける。

そして、朝食の缶詰を食べ終えた辺りで飛空艇が降下し始めた。

「もうそろそろ着きますかね?」

「9時前だし、そうだと思う」

このまま着陸だろう。

「ポードの王都の空港に着くんですよね? 着いたらどうします?」

うーん……

「とりあえずは観光でいいだろ」

まずは町を見て回ろう。

「王都は危ないんじゃなかったですっけ? イラドの密偵がいるかもしれませんよ?」

「わかっている。でも、さすがにまだ大丈夫だとは思うし、情報集めをしないといけない。まずは観光しながら情報を集めよう」

「なるほど。ますます新婚旅行を装う必要がありますね」

まあ、それが一番目立たないだろう。

「あなた方は装う必要がないような気がしますけどね。ひゅー、ひゅー」

うーん……

「こいつがめっちゃ目立つな」

「仕方がないですよ。ウェンディちゃんに目立ってもらい、私達は目立たない作戦で行きましょう」

絶対に意味ない気がするが、まあいいか。

窓から外を眺めながら到着を待つ。

上から見る街並みはビルが立ち並んでおり、やはり王都なだけあって都会だった。

とはいえ、イラドの方が栄えているように見える。

「綺麗な街並みですね」

「そうだな」

イラドの方が栄えているし、建物が密集している。

しかし、この街は綺麗に区画整理されており、こちらの方が美しい気がする。

飛空艇がどんどん降下していき、綺麗な街並みも見えなくなると、すぐに飛空艇が完全に動かなくなったので席を立った。

そして、出入り口まで行き、少し待つと、扉が開いたのでタラップを降りる。

「着きましたねー」

ウェンディを抱えているエルシィが手足を伸ばした。

「やっとな。エルシィ、これから町を見て回るが、追手のことは考えなくていいぞ。ずっと緊張しっぱなしだったし、今日は楽しもう」

多分、イラドも俺達がここに来ているとは思ってないだろうし。

「そうですか? じゃあ、今日は一日、王都を回りましょう」

「ああ」

俺達は歩いていき、空港を出た。

「あ、先輩、ちょっとウェンディちゃんを持って、ここで待っててください」

エルシィは抱えていたウェンディを渡してくると、売店の方に走っていく。

「どうしたんだ?」

「お腹でも空いたんですかね?」

さっき朝食を食べたばかりだぞ。

売店に向かったエルシィの後ろ姿を眺めていると、何かの本を買って戻ってきた。

「何の本を買ったんだ?」

「旅行雑誌です」

あー、そういうことね。

確かに空港近くの売店には売っているだろう。

「観光名所も載ってるか?」

「ええ。まずはこっちです」

エルシィが歩いていったのでついていく。

エルシィは旅行雑誌を読みながら歩いているので俺がウェンディを抱えたままだ。

可愛らしい人形を抱えた男が歩いているので変な目で見られないかなと思ったが、周りの人はこちらを見る様子もないし、気にしている様子もない。

「変じゃないのか……?」

「どうしました?」

腕の中にいるウェンディが見上げてくる。

「いや、俺がお前を抱えていて変な目で見られないなーって」

「そりゃエルシィさんが一緒ですもん。誰がどう見ても私はエルシィさんの持ち物ですし、旅行雑誌に夢中な奥さんの代わりに人形を持ってあげている優しい旦那さんですよ」

そう見えるのか。

「まあ、天使ちゃん人形は先輩のなんですけどね」

お前からもらったやつな。

正直、いらないと思ったが、一生懸命作りましたって言われたらそんなことは言えないので寝室に飾っておいたものだ。

「外に持ち歩くことになるとはな。まあ、目立ってないならいい」

「そうやって持っているくらいならセーフでしょうね。問題は食事の時ですけど」

ウェンディが目立つのは食堂とか、か。

まあ、仕方がないと思いながら王都の街中を歩いていく。

やはり人が多いし、俺達みたいな周囲を見渡している観光客らしき男女も多い。

それに街並みが綺麗なだけでなく、ゴミも落ちておらず、清潔感のある町だ。

「どこに向かっているんだ?」

「大きな橋があるんですよ。この先を抜けたところですね」

橋ねー……

そのまま通りを歩いていくと、川に出た。

川は幅が数十メートルはあり、結構大きい。

そして、その川を渡るためのアーチ状の橋がかかっていた。

「おー、橋だな」

「橋ですねー」

うん、橋だ。

「なあ、別に橋ならイラドの王都にもあるだろ」

確かに大きめな橋だと思うが、そんなに驚くものでもない。

まあ、石が積まれて作られているし、歴史的価値は高そうだけど。

「まあ、渡ればわかりますよ。こっちです」

エルシィが手を取ってきたのでそのまま歩いていき、橋を渡る。

ちょっと風が気持ちいいなとは思うが、特に感じることはない。

「楽しいか?」

「楽しくないですか? 新妻と手を繋いで歩いているんですよ」

新妻って……

「いや、そこはいいんだが、単純に観光名所として。旅行雑誌に載ってるんだろ?」

「ええ。先輩、橋の下を見てください」

「んー……おー……」

橋の下を覗いてみると、水が透明のように澄んでおり、川底で泳ぐ魚が見えていた。

「綺麗な川だな」

「レスターさん、川の先を見てください。綺麗ですよー」

ウェンディが言うように川を見てみる。

すると、川がまるで鏡面のようになっており、周囲の建物を映していた。

「これは綺麗だわ……確かに観光名所だな」

旅行雑誌さん、失礼した。

「ここが本当に観光地になるのは夕日が見える夕方と周りの灯りや月が反射する夜ですね。恋人やこれから告白するって感じの男女に人気らしいです」

確かにそれは綺麗だろうし、女が好きそうだ。

「ロマンチックか?」

「ロマンチックですね」

「じゃあ、夕方か夜にでも来てみるか」

「橋の中央で告白すると成就するらしいですよ」

へー……

「新婚の俺達には関係ないな」

「それもそうですねー」

エルシィが腕を組んできた。

「世界中の人の声を代弁してあげましょう……うぜっ」

天使が言うセリフじゃないな。