軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第014話 天使ちゃん「にやにや」

朝、目覚めて部屋に設置されている時計を見ると、6時半だった。

「起きるか……ふわーあ……」

上半身を起こし、身体を伸ばす。

やはり人間は手足を伸ばさないといけない。

けっして、せまいカバンの中で体育座りしてはいけないのだ。

そう思いながらベッドから降り、隣のベッドを見る。

そこには可愛らしい寝顔のエルシィが可愛らしい天使ちゃん人形と一緒に寝ていた。

非常に微笑ましい光景なのだが、その人形が『すかー……すかー……』と寝息を立てているのがシュールだ。

「エルシィ、ウェンディ、朝だぞ」

2人に声をかけると、エルシィが眠そうに目を開いたのだが、ウェンディは布団に潜ってしまった。

「ウェンディ」

『眠いです……』

お前、天使だろ。

「飛空艇でいくらでも寝られるから起きろ。8時までには空港に行かないといけないからな」

「はーい……」

ウェンディが出てきたので顔を洗い、着替えると、1階に降りる。

昨日とは違い、冒険者風の若い男や商人らしきおっさんがすでに朝食を食べていた。

「おはよう。すぐに朝食を持ってくるから適当な席に座ってちょうだい」

女将さんが勧めてくれたのでテーブル席につく。

その際、冒険者風の若い男と商人らしきおっさんがエルシィを見て、ちょっとにやついたのだが、すぐに飛んでいるウェンディを見て、怪訝な顔で固まった。

「朝ご飯は何ですかね?」

ウェンディがテーブルの上でニコニコしながら聞いてくる。

「パンとかの軽食じゃないか?」

朝食は決まっているっぽいし。

「楽しみですねー」

俺達が待っていると、女将さんがちゃんと3人分の朝食を持ってきてくれた。

メニューはサンドイッチとサラダとスープだ。

「おー……美味しそうですね」

「だな。中身はハムと卵か……」

オーソドックスだが、美味そうだ。

「美味しいでーす」

ウェンディはすでにパクパクとサンドイッチを食べている。

なお、冒険者風の若い男と商人らしきおっさんが目をこすり始めた。

「俺達も食べようぜ」

「はい。いただきまーす」

俺達もサンドイッチを食べる。

パンはふわふわだし、中のハムと卵と合っていて非常に美味しい。

「なんかパンにしても違う気がするな」

「そんな気がしますね。何の違いでしょうか?」

「さあ?」

「まあ、美味しいから良しとしますか」

俺達はあっという間に朝食を平らげると、食後のコーヒーを飲み、2階に上がった。

そして、準備をし、宿屋をチェックアウトすると、空港に向かって歩いていく。

「おおっぴらに外を歩けるっていいな」

息苦しくもないし、明るい。

朝日ってこんなに爽やかだったんだ。

「お疲れ様です」

「大変でしたね」

ホントにな。

二度とごめんだ。

「ウェンディ、空港に着いたら人形のふりをしてくれ。たまに使い魔の料金を取るところがあるらしいからな」

そう聞いたことがある。

「わかりました。それと気になったんですけど、審査は大丈夫ですか? 前回は時短のために資格証を使っていましたけど」

現在の時刻は7時半であり、あと30分しかない。

審査があればちょっと難しい時間だ。

「大丈夫。ああいう審査にうるさいのはウチの国だけだ。他はもっと緩い」

「なんかあなた方の国ってあんまり良いところがありませんね」

うん。

「経済的には豊かだし、国力は強いんだよ。まあ、貧富の差はすごいけどな。それに貴族社会で差別的とはいえ、俺達みたいに一芸に秀でていれば職はいくらでもあるな」

「孤児で庶民の私達でも奨学金や補助金で魔法学校に入れましたしねー」

一芸がなければお察しだけど。

「へー……そう聞いても良い国とは思えませんね。まず、ご飯が美味しくないのはいただけません」

お前、ウチで美味しい美味しいってトーストを食べてただろ。

「ウェンディちゃんがこう言ってますし、ちゃんとアトリエを開く場所はそういうことも考えて選びましょうよ」

「そうだな。それも大事なことだろう」

俺達は話をしながら歩いていき、空港にやってくる。

そして、ポード行きの搭乗口がある受付に向かった。

「ポード行きを2枚。3等の個室だ」

受付にいる若い男に料金の160万ゼルを渡す。

「えーっと、ちょっと待ってくださいね……」

男が金を数え始めた。

「なあ、俺達、ちょっと旅をしているんだが、おすすめの国とかってあるか?」

「新婚旅行なんですよー」

またそれか。

「へー。羨ましい限りだね。おすすめって言うと、今から行くだろうポードは良い国だよ。他は……南のターリーじゃない? 有名な観光地だしね」

ターリーが観光地なのは知っている。

でも、住むのはどうだろう?

「治安が良いところがいいな」

「まあ、新婚さんならそうだろうね。でも、俺はあまり旅行に行かないからなー……イラド以外ならどこでも良いんじゃない?」

イラド以外……

「イラドってダメか?」

「あ、ごめん。イラドの人だった?」

「いや、この国の田舎出身だ」

ここは嘘をついておく。

「そう? いや、イラドってさ、観光名所は結構あるけど、貴族がうるさいんだよ。それにメシマズ国家で有名だしね。観光に行くなら現地の美味しい料理を食べたいじゃない?」

本当に飯が不味いで有名なんだ……

「そうか。参考になった」

「まあ、ポードで楽しんできなよ。はい、チケット」

金を数え終えたようでチケット2枚を渡してきたので受け取った。

「ありがとよ」

エルシィに1枚のチケットを渡すと、先に見えている飛空艇に向かって歩いていく。

「今回の飛空艇はそんなに大きくないですね」

俺はカバンの中にいたから知らんがな。

「なあ、新婚旅行設定で行くのか?」

「他に若い男女が色んな国に行く理由があります?」

うーん、仕事は変だしな……

「素直に永住の地探しでも良くないか?」

「なんでって思われますよ。明らかに自国にいられなくなった逃亡者じゃないですか」

それもそうか……

他国もイラドほどじゃないが、スパイなんかは警戒しているだろうし、変に怪しまれるようなことは避けた方が良い。

「そう思うと、新婚旅行がベストか」

どうせ観光名所は見るつもりだ。

「そうですよ。楽しみましょう」

エルシィがそう言って、腕を組んできた。

「お前、エルシィ・ハートフィールドな」

「ふふっ、これからそう名乗りますね」

とりあえず、これでいくか。