軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本質を示す秤

それはそれ、これはこれ。

マギバイトでその場にいたほぼ全員をドン引きさせるといういやな偉業を達成してしまった俺であったが、ここで一つ問題が発生した………そう、エムルである。

エムルは二号人類種ではない、バリバリのヴォーパルバニーであり……要するにベヒーモスはエムルをモンスターと認識している。ベヒーモスに入った時点で俺とパーティを組んでいなければ強制排出もあり得たかもしれない。

で、一兆手前までマギバイトを溜め込んだ俺は試しに「象牙」へと交渉してみた、これだけ集めたならエムルも次の階層に同行させてくれてもいいんじゃないか? とな。で、それに対する「象牙」の返答は……

『ペット枠なら』

これに物言いをぶちかましたのが他でもない、エムル氏である。

曰く、なるほど確かに自分はヴォーパルバニーでありサンラクサン達人間と同じカテゴリでないことは重々承知している。だが知性持つ存在としてその立場は対等なものであって断じてペットではない、ペットではないのだ!!!!! と 熱く語っ(キレ散らかし) たエムル氏の魂のシャウトに「象牙」は何言ってんだこいつという表情を隠しもしなかったが……どれだけ説得しても尊厳だけは捨てられないとの一点張り。

仕方がないので俺が「 象牙(母上) 」を拝み倒してなんとかエムルも 二号人類(プレイヤー) 同様の条件達成で次階層に行けるようにしてもらったのだ。何故かおしゃぶりを咥えた重戦士に友を見るような目で見られたがあいにくおしゃぶりを咥えた友人はゲームにもリアルにもいないので気のせいだろう。

で、計測した結果微妙にノルマへ届いていなかったので六層の「ショッピングモール」で買い物をすることにしたのだ。俺が何か適当に渡せばいいのかもしれないが、まぁ単純に見てみたかったという感情もある。

「基本的にはリヴァイアサンの四層と似た感じか……」

ただ、なんというか品揃えがショボい。いや違うな、ショボいというよりリヴァイアサンでも高額で販売されていた大規模兵器や「鍵」シリーズがそもそもラインナップされていないのか。六層……リヴァイアサンで言えば丁度三層くらいの進捗だ、八層くらいまで取り扱うつもりはないとかそういうことなんだろう。

「エムルこれなんてどうだ」

「それなんですわ?」

「んー、そうだな。例えばこのパーツをこっちに……もう一方をこっちに置くじゃん?」

「はいな」

「で、この二つのパーツ同士でこう、魔力の紐みたいなのがピンと張られるわけよ」

「はいな」

「そんでもって、それに触れると盛大に爆発する」

「とんでもなく物騒な代物ですわ!?」

世間一般ではこれクレイモア地雷って言うんじゃねーかな……しかもワイヤー起爆ってことは無差別なやつ。まぁFPSの経験なら衛生兵とか衛生兵とかクソほど経験してるのでこの手の地雷も仕掛けたし仕掛けられたし………うーん、有用性を身を以て知っているからこそ印象が悪い。だが有用だ。

「いやほら、エムルって小柄なわけだしこういうのをこっそり仕掛ける方針でもいいと思うんだよな」

「妙な確信があるですわ、多分それに引っかかるのはサンラクサンですわ」

「馬鹿言うな、流石に……………まぁ、偶然そうなる可能性は否めない」

ワイヤー式は誤爆率めちゃくちゃ高いからな……忘れた頃に引っかかる。そしてクレイモア地雷の常として殺傷力がやたら高いのでそのまま死ぬ、誰だよ鉄球入れたやつ! 俺だよ!! みたいなオチはそう珍しくないのだ。フルダイブだからこそリアル志向のFPSだとフレンドリーファイア対策が意図的にされていないなんてザラだからな。

ちら、と視線を台座の方に向ければまた一人条件を達成したプレイヤーが出たようだ。そもそも黒天無塵鎌一個で8万マギバイトらしく、ぶっちゃけ買い物しなくても一回ベヒーモスの外に出て倉庫なりなんなりからリソースを引っ張り出せば余裕でクリアできる類の関門なのだ。

余談だが、レイ氏は7000億という驚異のスコアを叩き出していた。船込みの俺に匹敵するマギバイト……情報質量を保有しているとはさすが廃人、聞けばリヴァイアサンを攻略した時点でそれまで様々な所に預けていた自身の装備、アイテム、諸々を全部インベントリアに突っ込んだらしい。

俺が数ヶ月で揃えた「質」と「量」に対して、レイ氏が一年ほどで貯めたリソースは若干届いていない……と、思ったのだがこっそり「象牙」に俺の情報質量の 割合(・・) を聞いた所、四割くらいヴァッシュから預かっているあの「刀」が占めていた。

つまり実際の情報質量は5000億に届くかどうかってことだ、やはりレイ氏がやべぇってことだろう。

そのレイ氏であるが、なにやら「象牙」に話しかけられて釘付けにされている。チラチラとこちらに視線を向けているが……ふふふ、心配ご無用。レイ氏の言わんとしていることは理解しているさ、さっさと次の階層に行こうぜってことだろう。

「もうなんでもいいだろ、好きなの選べよ」

「じゃあこれにするですわ」

「ん、いいじゃん悪くない。じゃあ軽く100個くらい買っておくか」

「そんな持てないですわ!!」

気合いで担げ。いや駄目か、情報質量だもんな……あ、そうだ。

「じゃあこれ持っとけ」

「これは……」

「再誕の涙珠、これ結構マギバイトありそうじゃん?」

「とりあえず持っておくですわ」

「あとこれラピステリア星晶体」

「なんか面倒臭くなってないですわ?」

いやそりゃ面倒臭いでしょ、ぶっちゃけさっさと次に行きたい。見た限りベヒーモス六層はリヴァイアサン四層よりも品揃えが少ないくらいっぽいし。メーカー違いの同カテゴリ武器で大興奮できるのはルストやヤシロバードくらいだぞ、そもそもこのゲームの銃って近代地球のように近接物理武器や原始的遠距離武器を完全駆逐できるほど優秀じゃないし。

他の武器と違って銃そのものの威力を外付けで強化できないんだよね。例えばレイ氏がダメージ100を出せる剣と銃をそれぞれ持ったとして、攻撃する前にキョージュが強化魔法を付与した場合、剣での攻撃は120になるが銃の攻撃は100のままだ。

それを差し引いても銃にしかないメリットも多いが………なんだろう、そこに 引っ掛け(・・・・) がある気がする。このゲームの運営が「人権武器種」なんてものを作るのか? という疑問だ………

まぁぶっちゃけ魔力のつまってそうなものを抱えていればクリアできる関門だ、ヴォーパルバニーも備えているインベントリに大量のラピステリアを突っ込んだエムルも無事10万マギバイトを達成、なにやら「象牙」との会話も済ませたらしいレイ氏も合流して俺達は七層へと進む。