軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ライト・ビフォー・トリリオン

「女専用装備ィィ!!」

「黒死の怨涙……ははーん、さてはハズレ枠ね?」

「 黒天無塵鎌(ノーブルー・サイスレント) !! デバフで攻撃!?」

悲喜交交とはまさにこの事だろう。浴びるように回復ポーションを食らった黒死の天霊さんが消えたと同時、各自の手元にドロップアイテムが現れる。

黒天無塵鎌を引き当てて狂喜乱舞する者、女用装備を引き当てて膝をつく重戦士(男)、黒死の怨涙を手にため息をつく者。俺? そりゃ当然 素材枠(黒死の怨涙) ですよ……黒天無塵鎌を引き当てた秋津茜は見なかったことにする。

「しかし残念だったな「象牙」、あっさりと五層も突破だ」

『……残念? まさか、私は今歓喜の感情に浸っていますよサンラク』

ほう?

『黒死の天霊は一号人類種より発生したイレギュラー、人類としての「型」を持ったままマナに近しい存在となった興味深い観察対象でした。しかしながらその性質はあらゆる「戦う者」にとっては天敵に等しいものであり……しかしながら、貴方達は完封と言っていい成果を示しました。貴方達は死の顕現すらをも踏み越えている、その足取りはこの私にとって至上の喜びなのですよ』

長い長い長い、だがなんとなく奴の気持ちがわかったぞ。これあれだ、自分じゃなくて育てたモンスターとかを戦わせる系の心情で俺たちを見てるのか。

愛着もあり、愛情もあるがそれはそれとして戦わせるし勝ったなら喜ぶ……俺達が育成される側という状況でピンと来なかったが今気づいた。

「成る程な……なんだかお前のことが少しわかった気がするぜ」

『嬉しいことを言ってくれますねサンラク……では愛しき我が子達、第六階層へと転送しましょう』

第六階層、ようやく折り返しといったところか。

思えば結構いたはずの初期のメンツが十人にまで減るとはな、地味に難所なのは三、四層ってところか。五層は黒死の天霊についての情報が出回れば下手すればソロでも突破可能だ……恐らく「情報共有できて偉いね」みたいな感じで「象牙」はそれを許容するだろうしな。「勇魚」もそうだったがこいつらは人類が文明的な事をする事を容認、むしろ歓迎している節がある。

「で、六層では何をするんだ?」

『ここからは少々方針が変わります。ここからは……より文明的なフェーズに進みます』

というと?

『一人につき情報質量10万マギバイト、それが突破条件です』

「マギバイト……って、何? キョージュは?」

「私も初耳の概念だ、だが大凡の推測は立てられる。情報質量、マギバイト、それすなわち……インベントリ、かな?」

『良い推理ですキョージュ。その推測は正しい、情報質量とは一、二号人類がデフォルトで備える拡張空間技術……いわゆるインベントリ内に納められたマテリアルを次世代原始人類種の肉体に記録したものです』

「要するに剣でも石でも、インベントリに入れたものには全て情報質量という数値があり、その単位がマギバイトってことかな」

『───素晴らしい』

褒め称える前に磐斎氏のように分かりやすく説明するスキルを身につけろと言いたくなるが、あって何か起きるわけでもないので飲み込んでおく。

要するにインベントリやインベントリアに物を詰め込んで10万マギバイトにまで届かせればいいんだろう。

「じゃあ俺が一番の」

「いや待ってほしいサンラク君、すまないがね……君が最初だと参考にならない」

「えぇ……」

「まず持ち物が少ないプレイヤーから初めて大体の基準が知りたい、誰かインベントリが殆ど空いている者はいるかな?」

「じゃあ私が、素材以外じゃもう回復アイテムが二、三個くらいしか残ってないわ」

手を上げたのは四層で爆泳魚相手に足止め、五層で黒死の天霊を相手にしたことであらゆるアイテムをぶん投げまくったことで弾切れの炸裂グリンピース姉貴だった。なにやら色々と物が多い、街のような光景の広がる六層の中心部に設置された台座の上に姉貴が立つと、彼女の頭上に数字が表示される。

「350……」

「350か……」

「炸裂グリンピースさんは350……」

「ねぇ、 マギバイト(・・・・・) の話よね?」

そりゃ勿論、誰も キログラム(・・・・・) の話はしてませんよ。とはいえ四桁に届かないってのは単純に量が少ないからか、フルで入れたとしても素材や回復アイテム程度じゃ足りないのか。

「ふむ……次は私が行こう。激しく消費してるわけではないし、私の情報質量より少し多いくらいが「基準」になるかもしれない」

キョージュのインベントリは回復アイテムや状況に応じたいくつかの武器防具、そしてこれまでの攻略で得たドロップアイテム……まぁデフォルトって感じの手持ちだな。

「……ふむ、3280」

「キョージュ、多分ですがインベントリの空きが多い僕の方が高い結果が出ると思いますよ」

「ほう? 実証と根拠を見聞きさせてもらおうかな」

「恐らくですがマギバイトはアイテムよりも多くの手間がかけられた武器や防具などの方が大きい数値になるのでは? であればキョージュよりも武器防具を多く入れている僕のインベントリであれば……」

キョージュに代わり、台座の上に立った磐斎氏の上に表示された数値は果たしてこれまでの全てを超える4012であった。

「あれ、5000超えないのか……思ったよりも厄介だなぁ」

「いやそうでもないだろう、今の実証で攻略の糸口はほぼ確定した。インベントリ内をレア度の高い武器防具で埋めれば突破は簡単そうだ……いや、ある意味では難しいかもしれないがその場合は周囲の施設を使う、そうだろう?」

『その通り。ここに来るまでの過程で得た、あるいはこれから得るベヒーモス内限定通貨を使用することでこの階層では買い物ができます。エンターテイメント性ではリヴァイアサンに劣るやもしれませんが、技術力で劣るという事実に直結するわけではない……ふふふ、ある種の対決とは懐かしい構図です』

成る程ね、服屋みたいなツラしてタイプメンシリーズが並んでいるのはそのためか。尤も、どうせ八とか十層くらいまで攻略しないと船外に出せないとかそもそも使えないってオチだろうが。

と、いうわけで。

「じゃあ景気づけに頼むよサンラク君、最高スコアを期待している」

「任せとけ」

いざ、「象牙」も含めてこの場にいる全員が俺に注目する中……念のためほぼ全ての装備(+サイナ)をインベントリアに格納し、台座の上に飛び乗る。

「待って何桁ある?」

「一、十、百……」

「万、超えてますね」

『8965 億(・) 3861万5246マギバイト、文句なしの歴代最高記録ですね』

「兆行かなかったか」

武器? 防具? デキる男は懐にロボや船を入れておくものさ……