軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そういう生き物

三人揃えば文殊の知恵、文殊って確か神様? 菩薩様?の名前だったはずなので六人揃えば単純計算で二倍の叡智が手に入ることになるわけだ。ダブル文殊……!!

それに気づいたのは偶然だった。

俺、ルスト、そしてレイ氏が立方体の中に入った時、箱が動いたのを外にいたモルド、サバイバアル、ヤシロバードの三人が観測したのだ。

そして何度かの試行を繰り返した結果、この空間内に入ることで箱を動かすことができるのは俺、レイ氏、ルスト、ヤシロバードの四人であることが分かった。では俺達とサバイバアル、モルドを分けるものは何か。

「金を毟られたコンビだろ、なぁ?」

「ははは……」

「いやちゃんと返すから……」

「……ツケでよくない?」

ルスト、お前に人の心はないのか。いやルストの場合は多少の手間ですぐに稼げるからいいのかもしれないが……だがその着眼点、あながち間違ってなさそうだぞ。

俺、レイ氏、ルスト、ヤシロバードにあってモルド、サバイバアルにないもの。

俺がマップにあったこの箱について聞いた時に「勇魚」が発言した「カゴ」という単語。

そして一層が迷宮、二層が牧場、三層が娯楽施設であるならば第四殻層全体のコンセプトを考えれば、答えは見えてくる。

「─── 買い物かご(・・・・・) だ」

「なんだと?」

「俺達とお前らの違いはここでモノを購入したか否か、だ。俺とレイ氏とルストはインベントリアを、ヤシロバードはチェストリアを。そしてアホ二人に金を貸したお前らは何も買ってない!」

「……アホ二人?」

異論を挟む立場にないだろ。

「じゃあなんだ、つまり……」

「買い物の総額で……落ちていく、ということです、か?」

「ああそうか、この箱……天秤とエレベーターが複合してるのか。重い程下に落ちていく……でもそれは中にいる僕らの体感だ、外から見ればこの箱は第五殻層に昇っていく」

クソが、そういうことかよ。第四殻層の仕組みが コレ(・・) だとするなら第三殻層はとんだ茶番だ。

俺はさも公平そうな顔で空間に表示されているホログラムへと半目で振り返る。

「お前これ……どう考えても三層でスコアを稼いでこいってことじゃねーか……」

『私が見たいのは貴方達の先へ進む意志。手段を問わず、道を問わず……立ち止まらない貴方の歩みは、見ていてとても楽しいものです』

「おいどうするサバイバアル、こいつラスボスみたいなこと言い出したぞ」

「俺はまぁ最初からラスボス説はあると思ってたぜ」

「なんてやつだ、笑顔の裏で僕らを操ってスコアを奪っていたなんて……!」

「いやヤシロバードおめぇなに正義の側に立とうとしてんだ」

「破産したの十割自業自得じゃねーか」

「え、「勇魚」を糾弾する流れじゃないの?」

俺が言いたいのは公正な娯楽施設のフリしてイカサマなんでもありの集金施設だったことに対する文句だよ、単純に破産しかけてたアホが糾弾する資格は無いと思う。

「でもこれ相当お金を積まないと駄目なんじゃないかな? インベントリアとかチェストリアを合わせた合計でも上まで届かないなんて……」

「……モルド、この中でだけ別ウィンドウが出る」

「え?」

本当だ、特定の場所でしか出てこないウィンドウって大概初見殺しだなオイ……何々?

「SPとDP……SPはスコアポイント、かな?」

「じゃあDPは?」

『デンジャーポイントですね』

変なところで親切だし変なところで不親切だな……スコアポイントは文字通りスコアのポイント、このルーム内に持ち込まれた購入物品の総額と考えていいだろう。ならこの異様に低いデンジャーポイントは……

「危険度、か?」

インベントリアの有用性は何度もナーフされたとはいえ、依然として強力なものだ。だが物理的に凶悪かというと……刃物より危険とは言い難いだろう。凶悪なものを取り出せるとしてもインベントリア自体はあくまでも転送ツールだ。

「つまりなんだ? 危険かつ高額な兵器をぶち込んでいきゃあ良いってことかよ」

「……三層で稼ぐしかない」

「どうするの?」

「全員で戻って稼ぎ直して……いや、ルストとヤシロバードはここに残ってDP高そうな兵器を探してもらった方がいいか?」

「……審美眼には」

「自信がある」

それ以外の部分に不安がないわけでもないが、俺やサバイバアルは性質的に一個一個武器防具の性能を事細かに見ていくのには耐えられないだろうし適任なんだろう。

「となると問題はどう稼ぐか、だが……それに関しては俺の方はいくつかアテがある」

「サ、サンラクさん……や、約束の金だ。だから……」

「麻薬取引みたいなロールプレイやめてもらえます?」

「あ、すんません」

「えー、じゃあ 煉牙(レンガ) さん。こちらが出品していた水晶群蠍デッキです、中身の枚数確認を」

「水晶群蠍、金晶独蠍……はーすげぇ、意外とこれは使えそうだな」

「出品した俺が言うのもアレだけど、このデッキ使える? 事故率高くない?」

「あーいや、欲しいのはこの極限環境下分岐進化と分岐剪定だけっていうか。シングルじゃ売ってくれない感じだったからデッキごと買おうかなって」

「……つまりこの二枚のためだけに?」

「カードゲーマーって、そう言う生き物なんで」

……

…………

………………

「なあ「勇魚」、これって転売じゃね?」

『発売元が公式に定めたシステムによる取引ですので転売には当たらないんじゃないです?』

成る程つまり問題ないということだ。

四層に上がる前、「勇魚」との会話により大義名分を得た俺は一時的に錬金術師としての素晴らしい才能を開花させていた。即ち、カードゲーム=マネーゲーム、現状俺しか持ち得ないアドバンテージを最大限に活かしたオークションの開催である。

水晶群蠍というカードは本来、もっと排出率の低いカードであるらしい。だが俺のマイパックはイかれてるのでアホ程水晶群蠍を引くことになる、金晶などのレアモンスターも十パック引けば二、三枚くらい出てくる。つまり、俺は他の者達よりも安価に水晶群蠍デッキを組めるということだ。

そこでやってみましたオークション、俺が相場を知らずともそれを求めて競合するカードゲーマー達が勝手に相場を決めてくれる。いやむしろ相場以上の価値をつけてくれるというわけさ。

「仮に俺から買ったデッキを転売したところで無駄だ」

こっちの在庫は収入の一割を使うだけでいくらでも補充できる、そしてさっきの煉牙氏もそうだったがどうやら特定のカードは皆喉から手が出るほどに欲しいらしいからなァ……

「最大手、なんて甘美な響き……」

『その理論でいくと最大手は「勇魚」では?』

「じゃあ最大手さん これ(・・) ってどれくらいレアなの?」

『トゥルーレアですね、エクスペリエンスパックのカードプールを拡張できるレアカード。「勇魚」的所感を言わせてもらいますと……大人気間違い無しですね』

「その言葉、最高だぜ」

さぁーて……稼ぎますか。