軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

天に落ちる箱

時間制限によりバニーガール装備が弾け飛んだので着替え直しつつ、物凄い「力」を込めて俺を見つめているルストへと弁明を開始する。

「───買えるなら、買いたくなるじゃん?」

「……分からないでもない」

おっとこれは無罪判決では!?

「……でも独断で買ってるのでギルティ」

「裁判長、控訴します」

服が破れたので着替え直しつつ控訴してみたが、流石に外道連中ほどの対応力をレイ氏に求めるのは酷だったか。わたわたと慌てる重甲冑を見ているとそう思わずにはいられない。

「わ、私が裁判長…ですか!?」

「いや、いや、気にしなくていいよ」

というか買った本人である俺ですら絶対に必要かと言うとそうでもない……

「なぁ「勇魚」これ返品とかできる?」

『売値の三割で買い取りますが』

「うぅゔぅぅぅむ………」

「サンラク、半値で買う」

「その値切りがなんか気に食わないので却下、ていうかまだ在庫残ってなかったか?」

確か残り三個とか書いてあったような。俺が一個買ったから二……あれ、残り一個?

『サイガ-0様、購入していただいた格納鍵インベントリアは只今ご用意しておりますので暫くお待ち下さい』

「………」

「………」

「え、あの、えと、やっぱり必要かな……と」

流石はレイ氏と言うべきか……フッ、既に購入済みである俺の意識すらをも潜り抜けたステルス購入とはな、数多のゲームをプレイし数多のプレイヤーと遭遇してきたこの俺をして二、三人しか見たことのない「高み」にいる存在のようだ。

「ほらほら、残り一個らしいぞいいのか?」

「ブルジョワジー、共め……!!」

わかる、わかるよその気持ち。共産主義ってこういうところから生まれるんだろうな……でも サンラク(この俺) は資本主義の勝ち組ィ! 鼻で笑ってやるぜコミィーッ!!

「……あれ、ギリ買える?」

「え?」

『割引セール中ですからねー』

無言、だがしかし迅速なウィンドウ操作で残り一個のインベントリアを購入したルストがゆっくりとこちらに振り向き……

「……お金は全てを解決する」

「この世の真理に気づいたようだな……」

「あ、お金だけが全てではっ! ないと思います……っ!」

「例えば?」

「え? いや、あの、その……ぁ、ぁい、とか?」

愛は金で買えるのか、それは誰にも分からないことなのかもしれない……

「ふふふ、残念だったねルスト君……サバイバアルに頭を下げたお陰でこの僕がチェストリアを先に手に、入れ……」

「………これ? 格納鍵インベントリア(・・・・・・・・・・) 。チェストリアと比較して収納できるアイテムの大きさが十倍近く違って、なおかつ装着者も格納空間内に入る事ができる……控えめに言って、上位互換?」

「……っはぁーーーー??? 別に悔しくないから、そもそもロボとかビークルに興味ないから、銃器だけ収納できれば不足ないから」

兵器マニアであっても全員が仲良く手を取り合えるわけではない、消費しなければレゾンデートルを満たさない人類の醜さを濃縮したような光景だ……

「サバイバアルはああいうの欲しくないのかよ?」

「あ? まぁ欲しいっちゃ欲しいがあいつらほど切羽詰まってねぇからなぁ。それにちょっと前まで最低限のモン以外は素寒貧になるプレイスタイルだったしよ」

「物欲は捨てられてもロリコンは捨てられなかったんだな、身投げしないと断捨離できないのか?」

「ちょっと待てなんで質問に答えてそこまで罵られるんだ俺は!!」

ロリコンだからだよ、なんなら懇切丁寧に説明してやる。ちょっと前屈みになって、上目遣いで、ニッと笑いつつ……

「ロリコンだからじゃないの〜?」

「ぬっっっっっ!!!」

「え、何その反応」

いきなり近くに展示されてたマシンガンに頭突きしだしたんだけど……怖……

「俺はロリコンだ、できれば中学生以下」

「お、おう。堂々と宣言する事じゃないと思うんだが」

レイ氏もドン引きだよ、やたらゴツい声したネカマがいきなりロリコン宣言とか素面でできる事じゃないぞ。だが奴にとっては何らかの効果があったのか、頭突きをやめてキリリとキメ顔をする……いやなんなんだ、何がお前を狂わせているんだ。

「……で、一応聞くけど何か攻略法を見つけ出せたか?」

「いや聞いてくれよサンラク、チェストリアの為になかなか諦めたんだけどその場で弾丸を生成するなんとも興味深いライフルがあってね」

「戦術機用の拡張パーツが充実しているのはある意味想定通りであったけれどそれをアシストするメカまであるとは思いもよらず」

『ちゃんと買ってくださいね〜』

バカ二人は論外、という事で……俺とレイ氏もそこまで大した情報をゲットしたわけじゃないしデカい顔はできない。

「俺の方はとりあえずいくつかぶっ壊してみたんだがな、弁償させられるだけで敵が出てくるわけでもなかった」

どうしよう、現状攻略への貢献度はサバイバアル以下だ。そうか確かにセキュリティが敵として出てくる可能性もあるのか、だがサバイバアルが試した限りでは違うようだ……ここからはやはり考察が重要なのか? いやまだ材料が揃ったとは言い難い。と、

「……モルド」

「あ、皆……探したよ。ほら、マップの中心? にある変なところまで行ってきてさ」

「ほう。で、ボスでもいたかよ?」

「ううん、なんていうか……いや、実際に見た方がいいかも」

実際に?

……

…………

「なんだこれ」

「柱の生えた、箱……でしょうか」

成る程、確かにレイ氏の言う通りだ。そしてその通り過ぎて用途が全く分からない。第四殻層全体マップでも異彩を放っていたこの妙な物体、空間全体から見れば小粒かもしれないが人間の視点から見れば庭付きの豪邸くらいあるガラス張りの立方体だ。

「これ、ええと……実際に見た方がいいかも。ちょっと見ててね?」

ガラス張りの立方体には自動ドア(中学生が考えた近未来、みたいな摩訶不思議な開き方をする)が備え付けられており、モルドが近づいた事でそれが開く。そしてモルドが一歩踏み出し……その姿がフッと消えた。

「……消えた?」

「いや違ぇ、上に飛んだ!!」

「飛んだ、というよりもこれは……落ちたって言うべきなのかな」

上に落ちた? いや、これは……モルドに起きた現象と周りの会話から推測を立てた俺は躊躇う事なく立方体の 空間(・・) へと背中から身を投げ出す。

そして全身が立方体の中に入った瞬間、真下から押し上げられるような力によって上に………いいや違う、これは紛れもなく、「下」に落ちている!!

「天地逆転程度ォ!!」

空中で身を捻り、落下速度で迫る 天井(地面) へと着地。この高さなら完璧に着地してもダメージが入ると思ったのだが、どうやらノーダメージになるよう最初から設定されているらしい。

「この中だけ重力の向きが逆になっているのか……ちなみに「勇魚」解説とかは」

『特に無いです』

オーケー、鍵はこの立方体のようだな。態々天地逆転にする理由はなんだ? 第四殻層から隔離された物理法則の理由は? 第五殻層にはどうやって行けばいい?

もう時間は深夜帯に入ろうとしている、明日は学校だ……だったらスッキリとした気分で登校したいもんだ。