軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

我が身命は人と共に在りて

「 当機(ワタシ) は 征服人形(コンキスタ・ドール) エルマ型317番機、故にこそ特殊強化装甲の代理装着及び代理運用を可能としています」

「ほーん? だが俺が持ってる武器はそんじょそこらの量産品とは訳が違うんだが?」

「 当機(ワタシ) の 演算能力(インテリジェンス) を正しく認識できていないようですね。脳細胞の正しい運用をしていますか?」

おっと? 向こうから契約勧めてきたくせにいきなり右ストレートで煽られたんだが?

「 当機(ワタシ) を含むエルマ型は回収オブジェクトを用いた戦闘を想定して設計された探索兼戦闘用モデル、多少のセキュリティロック程度……えぇ、既に機体情報の八割は確認済みです」

「おうしれっとハッキングしてんじゃねーぞ」

だがまぁ要するに規格外シリーズでも自分は扱える、と言いたいのだろう。なんか窓ガラス割って家に乗り込んできたセールスマンが「こんな時我が社の強化ガラスなら!」って売り込んでくるみたいな……ゲーム中最強の武器を完成させた次のイベントシーンでフルボッコにされる感じというか……数値として強いのは分かるが体感としてガッカリするというか……い、いや、こんなポンコツでもロボ系キャラである以上、インテリジェンスは高いのだろう。

「規格外戦術機獣を動力源とし、遠隔エネルギー供給で起動する規格外特殊強化装甲のエネルギー供給システムにハッキングを行う事で、エネルギーラインを 当機(ワタシ) から装甲へと形成、擬似的に 当機(ワタシ) 自身が戦術機獣として機能することで装甲を起動させます」

「成る程?」

「無論、該当機種用のリアクターがあるに越したことはありませんが、この状況下で最善の状態を整えることは困難であると判断。次善策としてこの方式を推奨します」

ぶっちゃけ、一日くらいあればオイカッツォかペンシルゴンのどちらかが持っているだろう規格外エーテルリアクターをインベントリア経由で受け取ることができるだろうが、それは同時に俺の現状を説明する必要が出てくる。

「ノワルリンド情報を頼りに新しい稼ぎポイントに乗り込んだらロボとユニークモンスターをパーティに加えました。あと現在EXシナリオ発生四つであと一つでコンプです」と言えと? ハハハ、空メール連打の嫌がらせは御免だね。

「……成る程、言いたいことは分かった。確かに現状は猫の手だろうと兎の手だろうと借りたい状況だ」

ソロとコンビじゃ動き方が変わってくるがやはりマルチ戦は役割をある程度分割できるメリットが大きい。

それに契約とやらが征服人形なる種族……種族? との繋がりであるのならばここで関係性を太くするのは間違いではないだろう。

「いいぜ、その契約とやら……乗ってやる」

「承認: 再征服(レコンキスタ) 計画……フェーズ1 省略(スキップ) 。フェーズ2、部分的に 省略(スキップ) 。フェーズ3移行、「 貴方の人形(ユアドール) 」プロセスを開始……契約候補者サンラク、跪き視線を合わせてください」

「オッケー」

跪いた俺と、膝ごと損失したエルマ=317の視線が同程度の高さで交わる。見てくれこそ人に近いポンコツではあるが、その瞳孔がカシャリと音を立てて生物的にあり得ない動きで俺の眼球を捉える。

「網膜情報、登録……契約候補者サンラク、掌を前に掲げてください」

「あいよ」

ぺたり、と俺が前に出した手にエルマ=317のズタボロの左掌が重ねられる。僅かに見えるエルマ=317の掌に青色のラインが幾本か走り、そのままペタペタと無事な掌に俺の指紋を重ねていく。

「指紋及び掌紋情報、登録……契約候補者サンラク、最後に腕を出してください」

「プロセス長いな……」

まぁそういうものなんだろう。指示に従い腕を出すと……

「がぶ」

「ちょっ」

噛んだ! 噛んだぞこいつ! っつーかちょっと体力減ってるし! え、どういうこと!?

一瞬突き飛ばすべきか迷ったが、僅かに漏れたダメージエフェクトがエルマ=317の口の中に吸い込まれていったのを見て、ゲーム的エフェクトで分かりづらいがどうやら今血液的なものを採取されたようだ。

「血液情報、登録。「 貴方の人形(ユアドール) 」プロセス………、……完了。 契約者(マスター) サンラク、 当機(ワタシ) は貴方だけの人形です。使い熟すも使い潰すもどうぞ御随意に……」

一瞬ものすごいゲスい顔をしたディープスローターが頭の中で叫びながら湧いてきたので脳内火炙りの刑に処しつつ、邪念を薪としてくべる事でピュアな心を取り戻す。脳内で火炙りの快感を実況し始めた脳内ディープスローターを迅速にウェルダンにしつつ、もしやと俺はメニューウィンドウを開く。

「……項目が増えてる」

人形(ドール) ステータス、なるアイコンが増えている。パーティに加えたNPCや他プレイヤーのステータスを確認したりするのとは根本的に別物、これはプレイヤー側に征服人形のステータス操作が委ねられているのか。

っつーことは征服人形という存在は森人族とか魚人族みたいな種族ではなく、プレイヤーのオプションパーツとしての前提を持っているいわばモンスターをテイムするシステムの亜種、という事か……?

問題は外面が事案過ぎる、という点だな。モンスターを捕まえてオプションパーツにするのと人形とはいえ見てくれはほぼ人間な征服人形にアレコレしてオプションパーツにするのでは視覚的な犯罪臭が……い、いや前例がないわけではない筈だ! そら、R18系のゲームならそういうのもあるかもだし……なおさらアウトじゃねーか!!!

くっ、そんな目で見ないでくれサミーちゃん! 外見が人間っぽいやつに見られるより心にダメージが入るんだが!?

「と、にかく! 改めて作戦会議だ! おめーも参加するんだぞヘタレニーネ!!」

「そ、そのよびかたはなにかあくいをかんじるのだけれど!」

「じゃあなんて呼べばいいんだよ、ゴルドゥニーネだと重複しまくってるじゃねーか」

最低でも同名のキャラが九人いるからなゴルドゥニーネ……下手すりゃ百人くらいいるんじゃないか?

「え? えーと……えーと……」

「提案: WIMP(ウィンプ) 。古い言葉で凍えた暗黒物質を意味する天文学用語であり、斯様な性質を持ちながら 征服人形(コンキスタ・ドール) の捜索のみならず同種別個体の殺戮行動からも逃げ切った驚異的な隠密性を 当機(ワタシ) は評価します」

「ちょ、おまっ……」

「ふ、ふーん! よくわからないけどいいなまえね! ほめてるのよね?」

「 肯定(ソウダヨ) : 重ねて肯定(ホメテルヨ) 」

「あ、いや……あーうん、本人が満足ならそれでいいんじゃないっすかね……」

かっこいいこと言って誤魔化してるけどそれの意味って……いや、言うまい。ヘタレニーネはヘタレニーネということだ。リアル世界における 罵倒(スラング) は関係ない、きっとそうなんだろう。

「まぁいい、とりあえず主目的はツァーベリル帝宝晶の確保だ。だが採掘じゃ効率が悪い、そのための 帝晶双蠍(アレクサンド・スコーピオン) 討伐だ」

奴の外殻は実質ツァーベリル帝宝晶と言っていい。水晶群蠍の生態から奴も同質の特性を持っていると考えていいだろう。

アイテム判定として宝石と外殻がイコール扱いにならないのは若干の残念さを感じなくもないが……まぁそこはどうでもいい。問題は奴の戦闘力だ。

まず第一に奴は金晶独蠍と比べると物理的な戦闘力がそこまで高くはない。いや、鋏と呼ぶには少々異質な形状の前脚で殴られるだけでも即死ものではあるのだが、奴の本領は 魔力(レーザー) を用いた射撃戦にこそある。

インパクトだけならチャージを経た極太ビームが印象的だが、実のところあれは近距離戦に持ち込めば早々使って来ることはない。

あの威力だ、下手に誤射すればお隣さんがキレることになるからな。だから大砲クラスの砲撃は考慮しなくていい、問題は3WAYレーザーと地形反射だ。

「ソロなら回避に専念しないといけないが……コンビなら取れる選択肢も増えるってもんだ」

「了解: 命令(オーダー) を、最高のインテリジェンスで最良の結果をお見せしましょう」

果てしなく不安だが……いざ行かん、二十一回目のトライ!!