軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一念水晶をも通す

臨界速を使用し、遥かな高みに位置する水晶冠へと一息で到達する。ターゲットたる外縁テリトリーの帝晶双蠍は既に魔力のインターセプトに用いる尻尾の針を失っている。もはや乗り込む際の奇襲を警戒する必要はない。

「いくぞエルマ……長い。サイナ、貸した武器に見劣りしない戦果を期待するぜ……!」

「訂正: 当機(ワタシ) の名称はエルマ=317です。しかしながら、呼称プロセスの短縮及び最低限の識別条件を満たしていることから該当音声を呼びかけと認識設定します」

「作戦開始!」

「 契約者(マスター) の遺伝子情報を参照、格納鍵インベントリアにアクセス……機装展開」

片腕のみで背中にしがみついていたサイナが分離、それと同時にウィンドウを操作して装備欄を埋めていく。

「───機体名称「規格外特殊強化装甲【昇滝】」、システム掌握。一時的なエネルギーラインを 当機(ワタシ) のリアクターラインと接続… 完了(コンプリート) 、アイハブコントロール……!!」

お、そのセリフいいね。ロボ属性の補強しにかかってきたなこいつ。

俺が着ると三秒で爆散してしまう【昇滝】が虚空から現れ、サイナへと装備されていく。パーツの欠損をパワードスーツ側で補填できるのか、言い方は悪いが無様な四肢の75%欠損状態だったサイナが纏ったパワードスーツの手が力強く握りしめられる。

『武装を、 契約者(マスター) 』

「あいよっ!!」

規格外武装:鋼線型【キープアウト】。武器種的にはいつだったかオイカッツォが使っていた縄系統の武器だ。

ポンコツ少女から龍を象った機人へと換装したサイナの左腕になにやら円盤のようなものが装着され、緩やかな回転運動を始める。一応縄武器らしいんだけど……? おっと、マネキンに装備着せて見てるばかりじゃ勝てる戦いも勝てなくなる。

「名付けて、オペレーション・ヌーブプレイヤー……!!」

必要パーツは 冥王の鏡盾(ディス・パテル) 、あとは気合と 肺活量(スタミナ) !

「いくぞっ!」

伊達に二十回も死んでねー! 既にお前の攻撃は見切ったと、断言させてもらおう 帝晶双蠍(アレクサンド・スコーピオン) ……!!

奴の身体の色が変わったらビーム攻撃の予備動作だ。基本的に体外に出したビームの「芯」をキャッチするタイミングで次の攻撃が分かる。

短時間なら単発のレーザー、中時間なら3WAY、長時間なら極太レーザー砲。極太レーザー砲は近、中距離を維持すれば気にしなくていい。サイナにもそれを伝えてある。

問題は3WAYだ、単発レーザーはフィールドオブジェクト、つまりツァーベリル帝宝晶にぶつかると霧散するが、3WAYの方はビリヤードみたいに反射する。幸い速度自体はそこまで……それこそウェザエモンの断風みたいな理不尽速度ではない、だから避けること自体は余程油断していない限りはなんとかなるが軌道の予測ができない。

何せフィールドオブジェクトは未加工の原石だ、綺麗に入射角反射角が分かる形をしていない。だからいきなり自分の方に飛んでくることもある、大体五回反射すると消滅するようだが……言い換えれば五回反射していなければ避けたレーザーが跳ね返って戻ってくる可能性もある。というかそれで三回死んだ。

「っしゃ来たな3WAY……!!」

常に同じところに乗り込めば、迎え撃つのも同一個体。二十の挑戦によってその尻尾を断たれた 帝晶双蠍(アレクサンド・スコーピオン) はレールガンでもぶっ放しそうな(実際レーザーの砲塔として機能する)奇妙な形の鋏を尻尾、ひいては針の代用としてビーム反射を行う。

「サイナ!」

『了解:拘束します』

ひゅん、と何かが帝晶双蠍の横上方から飛来し、今まさにレーザーを放たんとする鋏へと巻きつく。遠心力の判定を多分に活かしたそれは本体から分離したのだろう「錘」と、実はネタ寄り武器だったのか名前通り「KEEP OUT!」と表示された黄色い非物質の 帯(縄) だ。

『拘束、牽引開始……エラー、膂力抵抗は困難と判断』

「妨害で十分!!」

放たれる3WAY、だが既に見たから知っている。それは鋏から1メートル以内までは一塊のレーザーだってことをな!!

「殺人ん……ライナァーッ!!」

冥王、帝晶双蠍と異なる原理ながら己が身一つでレーザーの発射を可能とする深海の帝王。その要たるレンズを組み込んだ新しき神代の円盾が光の塊に叩きつけられ、反射された光塊が帝晶双蠍の顔に激突する。

「すまんな、ベンチに行ってもいいぜ?」

何、代理がいない? しっかたねぇなぁ!! じゃあもう一度ピッチャーをやってもらおうかぁ!!

ビームの反射で警戒したのか、先端こそ切り離されたが質量兵器としては未だ機能する尻尾が唸りを上げて俺へと襲いかかる。タンクだったら受け止めたかもしれないが……悪いな、盾こそ持ってるが回避型なんだ。

「鉱石生命体なら……採掘してやるぜぇぇ!!」

剛掘の鶴嘴! 尻尾を狙うには少々粗雑なカテゴリだが、これまでのプレイ記録がこの 武器(・・) の特効性を証明している。

金属系……さらに言えば全身が鉱物でできたようなモンスターにはぁ……これがよぉぉーく効くってことをなぁ!!

ガギン! と快音が響く、地味に 傑剣への憧刃(デュクスラム) の前身、湖沼の短剣時代からの同期であるツルハシ君に傑剣への憧刃とほぼ同等量のレア鉱石を注ぎ込んだ剛掘の鶴嘴は水晶の皇帝にだって負けはしない。面の装甲に点の一撃がぶつかり、帝晶双蠍の外殻に決して軽傷では片付けられない亀裂が走る。

「ハッ!! 水晶エリアでの戦闘において、俺の右に出る奴が早々いるもんか!!」

もしそういう称号があったのなら、間違いなくスコーピオン・スレイヤーと言っても過言ではないくらい水晶巣崖には通い詰めたんだ。俺は全ての蠍と友達になる男……!!

いや、厳密には全ての蠍を 素材(トモダチ) にする男と言うべきか……

「サイナ! あのでかい水晶と、あれ! あとあの二つくっついた水晶の外には出んなよ! 地獄めいた乱戦になるからな……!!」

『了解』

帝晶双蠍のテリトリーを厳密に判断することは不可能だ。しかしながら、曖昧だがおおよその輪郭であればオブジェクトの配置から割り出せる。二十回中十二回の試行錯誤でお隣さんがキレる境界線は割り出しているのさ。

「ゲッ……サイナ! 外縁側に待避だ!!」

鋏を大きく広げて突撃、獲物が射程に入ったら抱きしめるように掴んで轢き殺す。 抱擁(ハグ) タックルだ。こいつら自分のテリトリーに入って来るやつには敏感な癖に自分が他のテリトリーに踏み込むことには鈍感なんだ、単純なダメージ以上に他蠍のテリトリーに突っ込む危険性の方が驚異的と言っていい。

「サイナ、ここからクライマックスまで詰めていくぞ!」

『刺激的な 終幕(フィナーレ) をお見せしましょう。良質な脚本は優れた 知性(インテリジェンス) によって生み出されるものです』

「そういうのって 知性(インテリジェンス) より 感性(センス) の問題じゃねーの?」

『一理ありますね、ですがその他九理は知性によるものです。つまり 当機(ワタシ) の 知性(インテリジェンス) は大多数の常識によって保しょぶべらっ』

「サ、サイナーっ!!」

フラグ回収までが早すぎるわ!!