軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝冠の威光

とりあえずとっ散らかった思考では浮かぶ案も浮かばなくなるので、景気付けに一発死んできた。

「とりあえずあの蠍め……3WAYはダメだろ3WAYは……」

しかも乱反射して全く軌道が読めない上に尻尾でインターセプトして直で狙ってきやがる……いや、だが……うーん?

「うわ、でてきた」

「言い方な? 」

虫嫌いな人が蝉の羽化を見かけたみたいな顔しやがって……

「疑問:自身の特性を把握しているとはいえ、死が確定した状況に自ら向かった理由」

「あん? いや……ほらアレだよ、アレ」

「 眼球の不自然(目を見) な挙動を確認(て話せ) 」

くっ……この野郎、左腕以外ほぼないくせにやたら元気だぞ。だが俺とて無策で突っ込んだわけではない……ほら、あれだ。うん、よし思いついた。

「この場所の仕組みについてちっとばかし疑問が湧いてな」

「ここの?」

「 否定(ノンノン) 、ここはシグモニア 前線渓谷(フロントライン) です」

シグモニア……つーか地名あるのか。

「このエリア、真ん中だけ残してその周りをくり抜いたみたいな形状してるだろ? んで宝石地帯の周囲であの百足と蜘蛛が戦ってるわけだ」

「フォルトレス・ガルガンチュラとトレイノル・センチピード・グスタフです」

「長い、状況説明だけなら蜘蛛と百足でいいだろ」

妙な話だ。あの大怪獣決戦……互いに互いの排除に夢中だからと言えばそれまでだが、あの外円だけで完結してるってのはちと妙だ。

互いに飛び道具持ち、いくら蠍が対空に自信アリだとしてもノーダメでエリアを守りきれるのか?

何故か攻撃されない水晶冠エリアもそうだが、あの蜘蛛や百足がシグモニア前線渓谷の外に出ないのも妙だ。となれば何か理由があるのではないか……と今考えた。

「俺とお前、あとそこのポンコツだけならともかくサミーちゃんも離脱するにはどうにかして蜘蛛と百足を攻略しないとならねぇ」

「インテリジェンスとハイテクノロジーの塊たる 当機(ワタシ) の魅力を理解できないとは……次世代原始人類め」

「グーしか出せない左手何とかしてから言えよ、インテリジェンス皆無の思考停止パーで勝てるわ」

聞けばなにやらドラゴンから逃走した過程でこうなった、との事だがそれにしたって墜落場所くらい選べっての。

「く……然るべき修理さえ受ければ次世代原始人類を 知性(インテリジェンス) で圧倒できるはずなのに、ぎぎぎ」

やーいポンコツやーい。

話を戻そう。というわけで今しがたこの地下空間にテントを設置し、回数制限付きのリスポンポイントとして水晶冠に乗り込んでみた。

3WAYビーム・インターセプト・スマッシュでハートを物理的にぶち抜かれてしまったが、本命はそちらではない。

・ツァーベリル帝宝晶

シグモニア前線渓谷、輝ける冠塔丘の最上層でのみ採掘可能な栄冠の水晶体。

ラピステリア星晶体の変種とされるこの水晶は日光と月光のそれぞれを浴びる事で内部に蓄積した魔力の性質を全く別のものに変える特性を持ち、極めて濃密な蓄積魔力は性質変貌の際、周囲の魔力濃度を爆発的に高める。

宝石の皇帝、その双つ輝きは 名君(暴君) の如く下々を照らす。

「フレーバーテキストも中々どうして侮れない……」

ツァーベリル帝宝晶。水晶の冠を構成する水晶の名前であり、恐らくあの蠍を構築する体組織の大部分がこれだ。

そして重要なテキストは「色変えの際周囲に魔力をばら撒く」というところだ。多分これが蜘蛛と百足の攻略法に繋がる鍵だ。

「あの巨体だ、エネルギー消費はご飯特盛程度じゃ賄えねぇ」

相手を倒してそれを食えば腹は満たされるかもしれないが……生態として維持するのは無理だ。となれば別口のエネルギー補給手段があるはず。

無駄に設定ばかり凝ったゲームだ、フレーバーテキストがフレーバーだけで済むなら神ゲーなんて呼ばれてない。

最近じゃアンチも「人間じゃ理解できないくらい無駄に設定だけ凝ってる」という意味で神ゲーと呼んでるとか。まぁゲームとしてどうなんだ、とはちょくちょく思うが……回転寿司にキャビア軍艦巻きがひとつだけ流れてるようなものだ、どれだけ異質でも飛び抜けた上質は文句を黙らせるだけの力を持つ。

話が逸れてしまった。恐らく百足も蜘蛛も奴らは 霞(魔力) を食って生きていけるとかそんなところだろう。水晶冠を狙わないのもあれが奴らの生命線だから、殺し合いをするほど険悪なのに同居してるのもここ以外じゃリソースが足りないからだ。

「つまり……どういうこと?」

「奴らはこの水晶を攻撃しない……多分」

行きはよいよい帰りは怖い、とは言うが……恐らくこのエリアに限れば逆なのだろう。地獄を抜け、その先の更にやばい地獄から生還した者は栄光を手に入れる。水晶の皇帝なんて仰々しい、しかし安全を確約する輝きを、だ。

「 結論(つまり) :シグモニア 前線渓谷(フロントライン) 中心部にて該当鉱石を採取せよ……と?」

「おうポンコツ、冴えてるな」

「むりむりむりむり! しぬから!!」

「ここで朽ちるよりも、一花咲かせようぜ?」

「ちっちゃうじゃないのぉー!!」

まぁ簡単なミッションではないな、少なくともサミーちゃん込みで逃げるなら相当量のツァーベリル帝宝晶が必要になる。一回ツルハシを叩きつけて 採掘できる(アイテム化する) 量が手のひらサイズだから……最低でも百回はカンカンしたいところだ。

だが俺には秘策がある、一歩間違えば地獄行きの特急切符だが。

「あの蠍だ、奴の種族は食った鉱石で自身の身体を構築する。つまり奴の身体そのものがこれと同質と言っていい」

蠍達は庭師であり料理人だ、だから蜘蛛や百足にも見逃されている。生産職の大切さが学べるね!

少なくとも水晶群蠍や金晶独蠍のドロップアイテムは最低レアであろう甲殻ですらそのまま盾として使えそうな大きさだ、奴らも同様のドロップをする可能性は高い。

「蠍狩りだ、その為には調査が必要だ……生態調査がな」

ふふふ、ライブラリの方針も案外悪くない。パズルを完成させる感覚というかなんというか…… 友達(ダチ) になろうぜ、新種君!!

二時間程経過。

「クソゲーッ!!!」

「ぴうっ!?」

使用限界を迎え、消えつつあるテントをフルパワーで蹴り飛ばしながら思わず叫んでしまう。ヘタレニーネが妙な鳴き声を出していたが気にしている余裕がない。

クソがっっ!! あんなのどう対処すりゃいいんだ!!

「疑問:どうしたんだい変態」

「支援砲撃はあかんでしょ……!!」

いや分かってるさ、もしかしてソロ討伐行けるんじゃね? と欲張ったのが敗因なのは。だが 境界線(・・・) を越えた瞬間、四方八方からビームを叩き込まれるとか分かっていても対処が難しすぎる。

「なんつークソモンス……いや、だが囲んで叩けばどうにかなりそうな辺りはかなり有情なのか……? いややっぱクソモンスだわ」

とりあえず二十回トライして分かったことは四つ。

まず一つ目にあの蠍の名前が「 帝晶双蠍(アレクサンド・スコーピオン) 」であるということ。今さっきのトライで尻尾を叩き斬って入手したことで分かった事だ、洒落た名前しやがって……

二つ目に奴らはやはりというかユニークモンスターだったりレアエネミーということはなく、恐ろしい話だがエリアのそこら中に帝晶双蠍がいるのを確認したこと。ただおしくらまんじゅうの文化はないらしい。

三つ目に帝晶双蠍は同胞のピンチにはほとんど無関心だということ。少なくとも 一線(・・) さえ越えなければ目と鼻の先でドンパチしていたとしても割とスルーする。

そして四つ目……奴らは恐らく明確な「テリトリー」を持っている。前述の特性からもそれを窺えるが……この境界線を一歩でも踏み越えるとすぐさまそこの主人が異物を排除しに向かってくる。それがたとえ同胞であったとしても、だ。

「境界線の見分け方……水晶の形か? それとも色……? ともかく距離を取るというアクション自体最悪手になりかねない……仮に境界線ギリギリを見極めたとしても蠍自体が踏み越えただけでアウト判定が出る……いや、逆か? いやしかしインベントリアはナーフされた……」

「───精査完了、これまでの対応から対象を 回収目標(ターゲット) 重要度(ランク) 「 交渉可級(ネゴシエイト) 」と認定。次世代原始人類サンラク、話があります」

ブツブツと思考を呟きとして漏らしながら攻略法を探していると、先程からリスポンする度に煽ってくるポンコツが神妙な顔で語りかけてきた。

エルマ=サイナ? なる半壊した青髪の人形は千切れた大腿で器用に立ち上がると、人の身では決して出来ないような 瞳孔(フォーカス) の動かし方をすると、こう告げた。

「提案: 当機(ワタシ) との契約を推奨します」

「……は?」

「 当機(ワタシ) であれば、その 腕輪(デバイス) が繋ぐ先にある武装の行使が可能です」

「………話は聞いてやるよ」

いつフラグを踏んだ? まぁいい、ここで「いいえ」を押すのはちとヘタレだよなぁ?