軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ビッグ・バーニング・ビルド

「ここいらで一攫千金を狙うぜェ!」などと実に強固なフラグを行った漁船長によってセレス・なんたら号が海へと出て行ったのを見送った俺は一旦ラビッツへと帰還、そしてエムルを引き連れ依頼主たる聖女ちゃんの滞在する屋敷を訪れていた。

「なんか人間と関わる時の女体化率が高い気がする」

だってジョゼットが「じゃあ女体化しようか」とごく自然な流れで言うもんだからそういうものなのかな、と……何やら私情が混じっているような気がしてならない。

「サンラ 子(コ) サンは若干頭が揺れるですわー」

「骨格の問題じゃねーかな……エムル、マフラーモード」

「はいなっ!」

さて、裏稼業的職業の仇討人に就職したわけだが、頭領からもらったこれは果たして身分証明書足り得るのやら。

「……えぇ、その 紋様(エンブレム) があれば搭乗は可能でしょう」

「やったぜ」

「開拓者よ、聖女さまの前である。口を慎みなさい」

「私は気にしていませんよジョゼット」

「はっ!」

相変わらず一切の妥協がないロールプレイだ、面会する前までのフランクな態度は欠片も感じられない。

まぁロールプレイガチ勢故のきつい態度と分かっていれば別にどうとも思いはしない。聖女ちゃんに諌められて口の端が若干吊り上っているジョゼットから視線を外しつつ、俺は頭領から渡された身分証明アイテム「 凝視鳥の紋様証(シュービル・エンブレム) 」を見つめる。

「俺の印象は鳥で固定されてんのか……」

いやまぁ、大体の時間は凝視の鳥面を装備して過ごしているし、人里で立ち回った時は大抵鳥頭だったから仕方ないといえば仕方ないんだが……うーん納得いかない。

「あまり表向きに認めるわけにはいかないのですが、仇討人の存在は王国から黙認されていますから」

「必要悪ってやつですかね?」

「えぇ」

ロールプレイを続行しながらも「詳細希望!」と言いたげなジョゼットの視線を受けつつ、俺は改めて聖女ちゃんに問う。

「此度のクエスト、国王陛下の保護及び護衛……段取りに変更は?」

「陛下を我々の庇護下まで護衛する流れは変わりありませんが……少々予定に変更があります」

「と、言うと?」

「此度の王族による査察に……第一王女が同伴する、という情報が入ってきました。第一王子と第一王女は……えぇ、その……非常に仲が悪く、恐らくは」

まとめて始末するつもりってか、ここに来ての面倒事追加は勘弁して欲しいぜ……

「こちらからも追加で人を動かしますが、有事の際は国王陛下に加え第一王女殿下の護衛もお願いできますでしょうか?」

「……心得ましたとも、時に聖女様一つお願いしたき事が」

ぴくり、とジョゼットの眉が動く。女騎士ロールプレイを出すべきかどうかで迷ったな? 悪いがグダるので見逃して欲しい。

「聞きましょう」

「単刀直入に言いますが…… かの国(・・・) よりの友人を同行させることを認めていただきたいのです」

実際この確認が必要なのかどうか、で言えば重要度はそこまで高くはない。ジョゼット達はプレイヤーなのでエムルを見ても即退治、とは動かないであろうし。

重要なのはラビッツ関連の話題を振って向こうがどういう反応をするか、だ。

「……成る程、とはいえ既に お連れ(・・・) のようですが、元より拒むつもりもありません。ジョゼット、船内の者達に「ヴォーパルバニーを見かけても攻撃しない」ようにと通達を」

「畏まりました。 龍×4(テチ) 、頼めるか?」

「了解しました!」

ジョゼットのロールプレイに従って、部下として付き従うクラン「聖女ちゃん親衛隊」のメンバーが部屋を出て行く。すれ違う直前、ウィンクされたのでこちらも後ろに回した手を振っておく。

「それでは参りましょう、我々三神教の者はズィーズィー号に搭乗する事になっています」

というわけで俺は今ラビッツにいます。新大陸調査船? 乗ったよ、個室のベッドがセーブポイントになってたから一回セーブしてからエムルワープ。いや本当便利なウサギだよ君ってやつは。

「第一陣は陸に乗り上げた船をそのままセーブポイントにしてるって話だからもしやとは思ったけど、【 座標転移門(テレポートゲート) 】万々歳だな」

「うー……もうちょっとお船の旅を満喫したかったですわー」

安心しろエムル、数日間は船旅らしいからそのうち飽きるほど船に揺られることになる。まぁエムルがいる限り……というかヴァッシュチルドレンが付いているプレイヤーは好きなタイミングでファストトラベル出来るんだがね。

「さーて、どうせ新大陸に着くまで暇なんだから色々やる事やっちゃいますか!」

レイ氏は滑り込みで搭乗権を得たらしいが、生憎乗り込む船がベルヘモルス号になってしまったらしく「無念……!」と心の底から悔しげであった。

意外だったのは秋津茜やルストモルドのコンビがしれっと新大陸行きの船に乗っていた事だな、あいつら地味に普段何してるのか不明なんだがどうも商人系NPCのクエストを受ける事で新大陸行きの調査船に乗れるらしい。

あとやはりと言うか密航プレイヤーも結構な数いる、というかいた。見つかった時点で船底の営倉にぶち込まれるらしいが新大陸に行けるなら多少のカルマ値は無視しても良いという考えなのだろう。

よくよく考えれば俺も聖女ちゃん経由で搭乗権を得たわけだから、正規の志願抽選以外にも抜け道が用意されているんだろうが……逆に言えばそれだけの抜け道があってなお密航が選択肢として存在する程、このゲームの人口が多いって事だ。

「というわけでとりあえず性別戻してくるわ」

「はいなはいな」

チーッス! 遊びに来たよー!!

あ、 金晶独蠍(ゴールディー・スコーピオン) 君! お邪魔してまー……ぐぼぁ。

「よし戻った、これお土産」

「わぁいラピステリア星晶体ですわー」

よし、ビィラックのところ行くか。

兎御殿には二つの工房がある。一つはヴァッシュの工房、そしてもう一つがビィラックの工房だ。

悪く言えば面白みのない、よく言えば質実剛健なヴァッシュの工房とは異なり、ビィラックの工房は主に俺のせいでどんどん魔改造が進んでいる。

「おー、来たけぇ。見りゃあ、これが完成した新型の炉じゃ」

「おぉー……あれ? まだ二週間経ってなくね?」

「ん」

指差した先には疲労困憊、と言った様子で倒れ臥すアラミースの姿が……あっ(察し)

「まぁあの阿呆に手伝わせたんもあるが……わちもワリャがバカスカ仕事を任せてくるけぇ、鉄の扱いに慣れてきたんじゃ」

「隠しステータスで生産とは別の成長値があるのか……? 炉の改装ならむしろ鍛冶じゃなくて建築系のジョブが領分っぽいが……」

まぁいいか、降ってきた幸運を疑い続けてもしかたがない。

基本的に時代設定が中世辺りであるため、鍛冶師が使う炉はピザ窯のような形をしている。

まぁビィラック工房の場合は隅の方に手術台みたいな近未来設備があるわけだがそれはこの際無視、注目すべきは改装された炉だ。見た目は何というか、補強されまくったドラム缶みたいな感じだが通常の炉と違う点は燃料を投げ込むスペースが無い、ということか。

「ワリャが持ち込んだ種火はぁ……まぁ端的に言えば「消えず、 殖(ふ) える火」なんじゃ」

要するに「放っておくと内側から炉が壊れかねないので超補強しました」という事らしい。俺は生産職にあまり興味がないので完全に他人事なのだが、馬鹿みたいにレア鉱石を使っただけあってアラドヴァルの強化に不足はないようだ。

「わちの全力見せちゃるけぇ!」

平均以上のサイズとは言え人間の 俺(サンラク) と比較しても大剣ほどのサイズを誇る朽ち灯りしアラドヴァルは、ビィラックが持つと最早建築資材を担いでいるようにしか見えない。

だが他者のアシストなど不要と言わんばかりの膂力をもって炉にアラドヴァルをぶち込んだビィラックが何やら紋様が浮かび上がる赤い宝石を握りしめて振りかぶる。

「おどりゃぶち燃えろやぁ!!」

「投げたですわ!」

「ナイスフォーム、メジャー狙えるぜ」

ビィラックが炉の中へ宝石を投げ込んだ瞬間、補強したはずの新型炉が凄まじい轟音と共に内側から閃光を撒き散らす。ついでに白熱を直視したエムルが悶絶した。

「ふびゃぁああああ! 目がぁぁぁぁですわぁぁぁぁ!!?」

「ちょっ、ビィラック大丈夫か!?」

「こん程度、ぬるいぬるい!」

「いやいやいや」

手を突っ込んだら一秒で 消し炭(ウェルダン) になりそうな光熱放ってるぞオイ。というか毛色的に熱集めまくるんじゃねーの? 黒だし。