軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

密漁の旅立ち、だから気に入った(拉致)

新大陸調査船。中世文明に魔法と僅かな科学のエッセンスを混ぜて完成した実在する豪華客船とほぼ同等のサイズを誇る巨大木造船……その数三隻。

先だって海を越えた新大陸調査船トルヴァンテ・ディスカバリエ号に続いて、新たに建造された三隻の巨大船舶……「ベルヘモルス号」「リーバイオスヌ号」「ズィーズィー号」に選りすぐりの開拓者を乗せて新大陸へと旅立つ朝がやってきた。

「くぁぁぁ………っ」

昨日の夜は凄かった……何が凄いって最終的にラビッツコロシアムで秋津茜と斎賀さんもといレイ氏の連戦を観戦する流れになったのだが、レベルが新大陸前における最高ラインまで上り詰めた二人に最終戦で割り当てられた敵がこれまたヤバイ奴らだったわけで。

秋津茜の最終戦の相手は白亜の皮膚に業火を纏う巨軀の 亜竜(恐竜) ……ジュラ・ヴァルカンレクス。

ヴァッシュの説明曰くなんか別のモンスターの「古代種」とか心躍る設定のモンスターであるらしいが、単純にスペックモンスターである為に秋津茜は大苦戦を強いられることになった。

レイ氏の最終戦の相手は漆黒の鬣に蒼雷を纏う堂々たる獅子……レオ・ネメアレクス。

こっちはこっちで「リュカオーン相手でも一歩も引かぬ王威を持つ獣」とかご大層な設定を持つモンスターであり、このライオンが通った場所に時間差で「通電」する攻撃は同じ雷を扱うアトランティクス・レプノルカとはまた違う厄介さを見せつけていた。

というかあのライオン野郎、しょっちゅう俺の方をガン見して来たのはどういう事なんだか。レイ氏がデスポーンした時なんか一目散にこちらへ飛びかかって来たからな、レイ氏のユニークじゃなかったら俺が仕留めていた所だ……四回くらいは乙るかもしれないが。

二人とも何度も敗北するものだから最終的に片方が戦っている間もう片方は俺と作戦会議という、冷静に考えて俺がぶっ通しで働いてる疑惑が溢れる形で落ち着いた。

「おーう、見送りに来てやったぞ遭難予定者共」

「おっ、やぁやぁ遭難経験者さんお見送りかな?」

この日、海に飛び出す船は 四隻(・・) 存在する。その四隻目こそがクラン「旅狼」が主催し、クラン「ライブラリ」とクラン「黒狼」……もといクラン「黒剣」の合同攻略班によるユニークモンスター「深淵のクターニッド」攻略に向かう者たちを乗せる遠洋漁業船「セレス・テレシアル号」だ。

クターニッドのユニークシナリオEX「人よ 深淵(ソラ) を見仰げ、世界は 反転(マワ) る」をクリアしたことで判明した周回可能ユニークシナリオEXの存在。

真理書に書かれた情報をある程度開示したことでライブラリが発見した「深淵の使徒を穿て」とは別の前提シナリオ……それがユニークシナリオ「恐れ知らずの遠征漁業」だ。

要するに「今日は天候荒れそうだけど俺たちなら大丈夫! 漁に出るぞォ!」という死亡フラグ満載のユニークであり、実際予定通りなら幽霊船と遭遇する羽目になるので死亡フラグなシナリオと言える。

「七日間かぁ……実際どうだったの? 暇になったりした?」

「人数が人数だったし、昼も夜もモンスター大量発生するから言うほど暇ではないな」

彼等がアトランティクス・レプノルカ辺りに蹂躙されて地獄を見ることを願いつつ、俺はペンシルゴンからの質問を適当に流す。

「むぅ、攻略書持ってるくせに情報絞るのはどうなのサンラク君?」

「これがウェザエモンみたいな知ってても死ぬタイプなら良かったけど、生憎クターニッドはネタが割れると単なる作業になるからかなぁ……実際萎えるだろ?」

「実際それは否定しきれないなー、でも実際NPC込みの八人ちょいで倒せたんでしょ?」

「レイ氏のアルマゲドンクラスの火力三連発に戦術機獣まで持ち出したけどな」

「秋津茜ちゃんも大概ヤバイよねぇ……竜息吹ってもっとこう火炎放射とかそういう感じの技なのにあの子の奴、一直線に空を薙ぎ払うもん」

肺活量とMPに依存するとはいえ、全体攻撃可能な極太ビームだもんなぁ……しかも砲台は機動力に優れた軽戦士と来た。

「……で? そこの水揚げされた魚類は何死んだような目をしてるんだ?」

「なんか例の彼女に「七日間の長期クエストの為にフィフティシアに行かないといけない」ってのがバレて一晩中攻略してたらしいよ?」

「流石にぶっ通しは死ねるって……」

ちなみに例のあの人、自前回復で前線に立ち続けるイモータルグラップラーとして順調に強化されてるらしい……だからボスエネミーに回復技搭載するのはやめろって前世紀から言われてんだろ。

「まぁなんだ、観光楽しんでこいよ」

「はっ……一発クリアしてあげるよ」

「 生意気(ナマ) 言うのはユニーク自発してからにしてもらえますぅー?」

「あーはいはい言われると思ったよ!」

未だ広く発表されていない内容故に、参加プレイヤー達はどこかコソコソと動いて準備を進めているが、その中でもやはり一際目を引くのはあの集団だろう。

「おや、確か君は新大陸調査船の方に乗るのではなかったのかね?」

「もう少し時間があるんで見送りに来た感じですよ」

きゃるんきゃるんな見た目に渋すぎる中身、「ライブラリ」のインテリジェンスネカマことキョージュにそう返しつつ、キョージュを肩に乗せる それ(・・) へと改めて視線を向ける。

「あら、貴方がサンラクさんなのね? サイガさん達や夫からお話は聞いておりますのよ? マッシブダイナマイト、と名乗っております……どうぞ良しなに」

「サンラクです……あー、よ、よろしくお願いします……」

筋肉、筋肉、筋肉。力こそが正義、その他の全ては不要と言わんばかりの……もうなんと言うか見た目からしてマッシブがダイナマイトしているかのような、あのレイ氏すらをも超える巨体にボディビルダーの如き筋肉を搭載した重戦士。

若干ウェーブかかった金髪に無精髭、彫刻のような彫りの深い顔から放たれる穏やかさと年を経たことで増した深みを内包する声は、ともすればエセ魔法少女を超えるちぐはぐさを撒き散らしている。

「あぁ、彼女は私の家内でね。「黒狼」……あぁいや、「黒剣」からの参加者としてメンバー入りしているのだよ」

「うふふ、 0(レイ) さんから聞いた話ではクターニッドは物凄いパワーの持ち主と聞いたら、好奇心を抑えきれなくて……」

なんだろう、キョージュの奥さんということで少なくとも五、六十歳という話だが秋津茜に通じる若さを感じる人だ。

とはいえ、俺程度なら真上からプレスできてしまいそうな馬鹿でかい大剣を背負った筋肉ダルマがあらあらうふふと笑う姿は結構なホラーだ。

「にしてもすごいドリームチームだ、「黒剣」からの参加組は一線級ばかりだって話ですけど」

「それはそうだとも、君からすれば何でもないかもしれないが、我々からすればユニークモンスター「深淵のクターニッド」との決戦は大きな意味を持つ」

いいかね、とキョージュは破落戸通りの奥にある港、そこから僅かに見える三隻の調査船に視線を向けつつ俺へとこう告げた。

「私の見立てでは天覇のジークヴルムとの決戦は相当先になると考えている」

「と、言うと?」

「良いかね? あのユニークシナリオEXのクリア条件は五体……いや、一体は既に死んでいるという話なので四体のドラゴンの撃破、もしくはジークヴルムの打倒となっている。だが黄金の龍は行方をくらまし、五体の竜は恐らく新大陸の全域に散在しているものと考えられる……分かるかね? 少なくとも片方のクリア条件は「新大陸全域の踏破」無しには成立し得ないのだよ」

そして現在プレイヤー側が接触したドラゴンは二体。一体はエルフ? だったかと同行するプレイヤーが遭遇した緑竜、そしてもう一体が新大陸の前線拠点を襲撃した黒竜。

「つまりはだサンラク君、恐らくウェザエモンやクターニッドと違いジークヴルムのユニークシナリオEXはワールドクエストとより直接的に連動している。ここから導き出される結論は……」

「他ユニークのようなサイドストーリーではなく、プレイヤー全員が関与し得る長編シナリオって事……ですかね?」

「───素晴らしい、花丸満点をあげよう」

笑みと共に俺を褒めるキョージュの顔は、少女のあどけなさを加味しても教え子を導く教師としての顔であった………ゴリゴリマッチョに肩車されてるけど。