作品タイトル不明
第二百十二話 北海道第七ダンジョン攻略
金属板でできた、牛の頭をした巨人がのっそりとこちらに詰め寄ってくる。
モンスター名はミノタウロスだが、その風貌はとてもそぐうものではない。
俺たちの攻撃によって、その見た目は痛ましいものになっており、生身の肉体であれば、重症と言っていいダメージを負っているはずである。
それでも動きはそれを感じさせない。かなりのダメージを負っているはずであるが、通常の生物と違い、モンスターだからか、動きからはダメージがあるようには見えなかった。
「私が前に出る」
ヴァルが前に出て、ミノタウロスと対峙する。彼女の額には汗の一滴も垂れておらず、涼しい顔をしている。
互いに同じペースで距離を詰めていき、数歩で武器が届く距離になると、両者は武器を構えて、一気に距離を潰した。
「軽い」
ミノタウロスの斧による一撃を、ヴァルは楽々防ぐ。
モンスターの攻撃ということもあって、軽く風を起こすほどの一撃ではあるが、ヴァルにとってはその程度、大した圧にもならない。
斧を受け止めた大盾はびくともせず、その攻防でミノタウロスが弱っていることは完全に露呈した。
「では、トドメは私が刺します」
普段よりもテンションが抑えられた日向さんがぼそりと呟き、間合いを一気に詰める。
そして、薙刀を振ったと俺が認識した頃には、ミノタウロスの頭は宙に浮いていた。
♦♢♦
首を切断されたミノタウロスが復活することもなく、俺たちは素材を剥ぎ取り、北海道第7ダンジョンを後にした。
そして、探索者協会に素材の売却に向かう。
「伊藤さん、こんにちは」
素材の売却に行くと、ニコニコと笑顔を浮かべた淵田こずえさんが、探索者協会職員として立っていた。
「どうも」
元は東京にいた筈の彼女が、どうしてここにいるのか。
これに関しては自意識過剰でもなんでもなく、俺のせいである。
佐々木ダンジョンの一件で、東京に居づらくなった俺たちであるが、凄まじい速度でBランク探索者になった、俺や他のメンバーを探索者協会も潰したくはない。
それで大田支部長が気を利かせて、淵田さんを北海道に異動させたのである。
勿論、淵田さんもそのことは了承している。
というのも、元々淵田さんは北海道出身な上、実は明星の副クランマスターの妹なのである。必然的に明星とのつながりも深く、明星の東京支部のトップである山崎さんと面識があるのも当然のことであった。
「これからもよろしくお願いします」
変わらぬ笑顔に、俺は少し圧を感じながらも、東京にいた頃と同じようにモンスターの素材を売却するのであった。