作品タイトル不明
第百三十六話
東雲の見立て通り、実力差が明確だったこともあり、俺たちは以降の階層も次々と攻略していき、無事、転移ポータルのある第二十五階層へと到達した。
第二十五階層は【レッドウルフ】の七~十匹程度の群体が、通常徘徊している。
レッドウルフは名の通り、体長は三メートルほどの赤い毛並みをした狼がほとんどであるが、青い毛並みをした、統率個体がいる。統率個体は、身体能力の水準は通常個体より僅かに高い程度であるが、高い指揮能力および魔法能力を持っているため、非常に厄介な要素であった。
ただ、通常個体であっても、第二十五階層を徘徊するだけあって、身体能力は非常に高く、数十メートル距離が離れていても、一瞬で距離を詰めてくるため、油断はできない。
戦闘時には、複数いる通常個体に気をつけながら、統率個体からの魔法攻撃を警戒しなければならなかった。
(数の利が通じないのは痛いよな)
複数人で1体のモンスターを倒すことに馴れている場合には、対応に苦慮し、かなり不利な状況になるため、敬遠する探索者も多いとは東雲談である。
転移ポータルのある階層だからか、Bランク下位相当、これまでのC~Bという中途半端な強さではなく、明確にBランク以上の探索者チームが相手にすべきモンスターだ。
せめてもの救いとして、通常個体を半分程度倒せば、逃げても追ってこないため、そういう意味では多少は安心できる。
(その分、旨味は多い)
レッドウルフの魔核は、二十階層で戦ったゾンビの魔核と同じの価格帯だ。その上、統率個体の魔核はおよそ倍程度の金額になり、毛皮も対魔法用の防具に加工できることもあって、非常に高く売れる。
一群全てを倒せば、少なく見積もっても、80万くらいは稼げる見込みであった。
「東雲、頼んだぞ」
今回は東雲に、探知を任せている。
目視した段階で距離を一瞬で詰められてしまうため、事前察知する手段がないと厳しい戦いを強いられることも、敬遠される理由であった。
「百メートル先にある右角から来ます」
東雲の言葉に、俺は【アイス・カタパルト】を発動し、五つの氷塊を生成する。
一気に五つの氷塊を生み出したことで発生した冷気に、俺は一度身震いする。
(やるか)
今回は相手が物量が強みであることから、早い段階で数を減らす予定である。
最初の攻撃が肝心であり、ここから集中を切らすことはできない。
「準備してください。五、四、三、二、一」
東雲の宣告通り、レッドウルフの群体が現れる。
一匹がこちらを視認した瞬間、その個体を皮切りに、一気に数匹のレッドウルフが押し寄せてきた。
(だからどうした)
俺は1メートル強の氷塊を全て、迫りくるレッドウルフたちに叩き込む。
容赦ない破壊と数の暴力は、レッドウルフの半数を、子犬のように吹き飛ばした。
(来るな)
俺は目を細めながら、残ったレッドウルフたちを見据える。
赤い毛並みの狼が四匹と青い毛並みの狼が一匹が生存しており、全ての個体の視線が俺に注がれていた。