作品タイトル不明
第百三十七話
赤い毛並みをした巨狼たちが散開し、一気に距離を詰めてくる。
(ヴァルに一匹、東雲に一匹、俺に……)
三匹。
「ガウ゛ッ!」
レッドウルフの一匹が、俺の手前で静止する。
【アイス・カタパルト】の発動直後に、俺は【結界】を発動させていた。
必死に結界に噛みついてきており、一噛みで首を食い千切れそうな牙がずらりと並んでいるのが見える。
「ガル゛ル゛ルルルッ、ガウ゛ッ」
(無駄な努力だけどな)
初見ということもあり、少々魔力を多めに使用して、【結界】を発動している。
結界は魔力の消費量によって、その効力を引き上げることができる魔術であり、様々な応用が利く魔術であった。
今回の相手はレッドウルフ。精々が、Cランク最上位相当程度の実力しかない、モンスターの攻撃であれば、容易に防げれる見込みである。
(さて…)
観察もほどほどに、俺は【アイス・ランス】をレッドウルフの頭上に発動する。
一本の氷の槍が急降下し、レッド・ウルフの脳天に突き刺さった。
「ギャインッ」
視覚外からの強烈な一撃に、結界に噛みついていたレッドウルフはあっさりと絶命する。
(残りは…)
残りの二匹は俺の背後を取っており、目を向けると攻撃の構えを見せた。
「くっ」
俺が顔を後ろに向けた瞬間、結界の正面に炎の槍が突き刺さる。
統率個体の魔法攻撃であった。
(一枚貫通したか…)
三枚ある結界のうち、一枚が抜かれている。
だが、残りの二枚は堅牢な守りを維持していた。
(圧殺だな)
「キャインッ」
「【アイス・カタパルト】」
ヴァルが大盾で通常個体のレッドウルフを倒しているのを尻目に、俺は巨大な氷塊を複数形成する。
「キャインッ」
残っていた通常個体、二匹は逃げようとしていたが、四方八方から飛んでくる氷塊に押しつぶされて、骸となった。
(最後だな)
俺たちの意識は統率個体に向けられる。
「キャイ~ン」
最後の一匹になった統率個体は怯えた表情で、情けない鳴き声を上げながら、脱兎のごとく逃亡するのだった。