作品タイトル不明
第百十七話
(結構きついか?)
先程の攻撃で、頭蓋骨以外にも何か所かの骨を砕いていた。
再生力が高いのは承知の上で、かなりのダメージが入ったと思っていたのだが、ものの数秒ほどで砕いたはずの骨の大部分は再生しており、時期に攻撃を仕掛けてくると思われる。
(少し、見通しが甘かったか)
これまでのモンスターであれば、確実に倒すことができるほどの攻撃であったが、Bランク相当のモンスター相手ではだいぶ火力不足らしい。
同じような攻撃を続ければ、割と早い段階で倒せるかと思っていたが、再生力が想像以上なので、最悪の場合、魔力切れで倒せない可能性がある。
(まあいい、作戦を変えよう)
攻めまくるという方針は変えずに、作戦を変えることにした。
ただ攻めまくるのではなく、しっかりと削っていくことに重点を置く。
「ヴァル、守りは頼んだ」
俺が遠距離から一方的に攻撃するには、タンク役は必須だ。
ヴァルがゆっくりと頷いたのを見届けると、俺は一メートル超えの氷塊を五つ生成する。
(もう一発、喰らっとけ)
そのうちの一つを、再生をまだ終えていない頭蓋骨目掛けて放った。
一瞬のうちに頭蓋骨が砕けたものの、すぐさま再生が始まる。
「それじゃあ、もう一回」
さらに攻撃を続け、再生を始めた頭蓋骨と首のあたりを粉砕する。
また再生が始まったが、同様に氷塊をぶつけ、完全に治りきる前に骨を砕いた。
確実に削れるよう、当てるタイミングを再生の開始と合わせながら、ハイ・ライカン・スケルトンの骨を砕いていく。
五つとも撃ち終わった頃には、上半身を破壊することに成功した。
(ここまで破壊しても、まだ再生するか)
下半身だけになっても、ハイ・ライカン・スケルトンの再生力は衰えていない。
俺は経験したことのないモンスターの理不尽さに慄きながら、さらに氷塊を増やして、応戦する。
(魔力が尽きるまで、やってやるよ)
戦うと決めた以上は、倒すまで攻撃を止めるつもりはない。
相手が正真正銘の怪物であってもだ。
「【アイス・カタパルト】」
俺は巨大な氷の塊を生成し、撃ち続ける。
周囲の温度が急激に下がり、寒さで俺の体が震え始めた頃には、ハイ・ライカン・スケルトンの足先の骨までも、完璧に砕き切ることに成功した。
(これでどうだ?)
合計で二十発以上は撃ち込んでいる。
【身体強化】などの自信の身を守る魔術は既に切ってあり、【アイス・カタパルト】をぶつけることのみに集中していた。
俺は一切傷つけることが叶わなかった魔核に照準を合わせ、次の弾を作っていたが、再生する兆しはない。
(もしかして、終わったのか?)
結局、再生することなく、ハイ・ライカン・スケルトンの魔核が地面へと落ちる。
「あれ?思ったよりもあっさり終わったな。そんなに強くなかったのか?」
かなり魔力を消費したが、ヴァルの手をほとんど借りることもなく、戦いが終わってしまった。
「それは違いますよ。伊藤さん」
東雲がこちらに近づいてくる。
戦闘時に感じた圧は全くなく、普通の少女にしか見えない。
「単純に伊藤さんが強いだけですね。ヴァルさんがいたからこそ、ここまで攻撃に集中することができたのもあるのでしょうが」
「そうか…そんなにも、俺は強くなっているのか」
実感が湧きにくいが、Bランク相当のモンスターを相手にしても負けないくらい、強くはなっていたようだ。
「はい。普通はあれほど威力の高い魔法を連射できませんし、その戦術を選び取ることは至難です。Bランク探索者の中でも、ごく少数に限られるかと」
「そうだよな」
というか、【魔術】スキルのおかげで思ったよりも、魔力を消費していない。
確かに、あの再生力は脅威だったが、もし、もう一度戦えと言われてもガス欠になることはないだろう。
「今回の相手はユニークモンスター、Bランクが相手にする中でも 中(・) 位(・) 程度の強さでした。Bランクになりたての探索者が多少集まっても、倒すことは不可能に近いです」
(ユニークだったのか。というか…)
「あれで中位なのか、てっきり上位クラスかと思ったんだが」
問題なく倒すことはできたものの、それでも強敵であったことに変わりはない。
あれほどの再生力を持ったモンスターを越える強さ、正直イメージが湧かなかった。
「あれで中位です。中位の中でも強い方だと思いますが、上位となれば、能力はより理不尽になりますし、体長10メートル超えのモンスターが当たり前にいますよ」
(もはや、怪獣の間違いだろ)
そんな存在と戦っていくことを考えるだけで、げんなりとする。
俺が肩を落としていると、東雲が咳ばらいをし、口を開いた。
「とりあえず、お疲れさまでした……その、かっこよかったと思いますよ。はい」
「ん?」
(今、さらりと凄いことを言わなかったか?)
「それで魔核をどうするかですが、ヴァル…?」
東雲の視線の先、魔核のあった方に、俺も目を向ける。
そこでは、ヴァルが拾った魔核をジーっと見つめる姿が映っていた。