軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百十五話

焼き鳥をたらふく食べた次の日、俺たちは長野第五ダンジョンを探索していた。

(胃もたれしても、魔術を使えば何とでもなるからな)

常人であれば、かなり胃に負担がかかっているはずだが、レベルが上がった恩恵と魔術のおかげで、今日も体調を崩すことなく、探索に向かうことができている。

「長野はいつ頃に出ようと思っているんだ?」

鬱蒼とした森の道なき道を進みながら、前を歩いている東雲に話しかけた。

一瞬、視線をこちらに向けた後、彼女は口を開く。

「伊藤さんのレベルが二百になったあたりでよいかと思いますよ」

「いいのか?」

「別にいいですよ。私もいいリフレッシュになっていますし」

東雲はダンジョン内の会話とは思えない、朗らかなトーンで言葉を返す。

毒気を抜かれそうになるほど、声に緊張や高揚が混じっていない。

(凄いな)

こうして日常の一コマのような雰囲気を出していても東雲は、戦いが始まれば、一瞬にして戦闘マシーンへと切り替わる。

いや、彼女の場合はどんな時であっても、変わらずモンスターを蹂躙するだろう。

甘さというものは彼女の中にはない。

(だが、俺には俺のスタイルを突き詰めればいい)

魔術を使った臨機応変な戦い方、世界で俺にしかできない戦い方だ。

「ありがとな」

俺は軽く肩甲骨を動かし、会話の方向性を変えるべく、東雲を見た。

「ここのモンスターはライカン・スケルトンでいいんだよな」

狼男を白骨化したような様相のモンスター、それが第十七階層を徘徊するモンスターだ。

「そうです。個々の強さは当然、 炎玉(えんぎょく) 大猪(おおいのしし) より幾分劣るでしょう」

含みを持たせた言葉に、俺は首肯する。

このモンスターの厄介な所は単純な強さではない。

「ですが、このモンスターは三匹が一組になって徘徊しています。しかも、連携もなかなかのものです」

(砂毒猿といい、このクラスのモンスターが連携を取ってくるのはしんどいな)

複数体いる場合は意識を分散させねばならず、一体を倒しても、警戒は怠れない。

臨機応変に戦うことができるのは強みだが、それでも厄介な敵が楽勝の相手になるわけではない。

もちろん、魔力量を考えなければ、三体程度倒すのは容易ではあるが、多少は節約することを考えると、戦いの技量といったものも今回の戦いには求められる。

「ヴァルさんが前衛、私が攪乱、伊藤さんは隙があれば魔法で仕留めてください」

東雲からの指示に、俺とヴァルは頷く。

警戒しつつ、森を歩いていくと、東雲が歩みを止めた。

「引っ掛かりました。あっちです」

東雲の雰囲気が剣呑なものへと変化する。

俺とヴァルの視線が、敵のいる方向へと向けられた。

その先には不気味な雰囲気を纏った、狼頭の人骨が前傾姿勢で徘徊している。

俺たちは戦闘態勢を取りながら、距離を縮めていき、彼我の距離が三十メートルを切った時、ライカン・スケルトンたちの空っぽの双眸がこちらに向けられた。

「来ます」

ライカン・スケルトンたちが猛スピードでこちらに駆けてくる。

速さと力も並みのモンスターを凌駕している。

毒などの面倒な要素はないが、それを補って余りあるスペックだ。

「【アイス・カタパルト】」

距離を詰められる前に、氷の巨塊をお見舞いする。

二体は避けるのに成功したが、一体は避けきれずに半身を砕かれた。

「【アイス・ランス】」

続けて、氷の槍を三本、放つ。

一体のライカン・スケルトンは俺の魔術に対応せねばならず、こちらに肉薄できていたのは一体になった。

「【雷撃】」

【雷撃】は威力こそ今一つだが、速さは【アイス・ランス】を優に上回る。

近接戦の間合いにまで詰めてきていたライカン・スケルトンであったが、近距離で一発をまともに喰らい、動きが止まった。

「・・・」

その瞬間をヴァルが見逃すはずもない。

彼女の剛腕により大盾が消える。

音すら置き去りにしそうな速さで振るわれた大盾による一撃で、ライカン・スケルトンの胴体部分の骨を粉砕した。

残すは足止めで完全に出遅れていた一体となる、はずであった。

「新手です」

「は?」

俺が視認していたのは点であった。

しかし、ソレは数秒もかからずにその巨体を露にする。

「Bランク相当ですね」

東雲が体高五メートルは優に超えるライカン・スケルトンの爪を刀で受け止める。

巨大なライカン・スケルトンは通常のモノとは格の違うスピードを見せつけていた。

「そうか、避けてくれ【アイス・カタパルト】」

だが、俺も放心しているわけではない。

瞬時に氷の塊を二つ生成し、牙がずらりと並んだ巨大な頭に放つ。

「ふっ」

東雲がつばぜり合いから力押しで、ライカン・スケルトンの状態を反らす。

巨大な氷塊は一メートル以上ありそうな頭部へと、見事に直撃した。

「は?」

完全に頭蓋骨を粉砕していた。

しかし、巨大なライカン・スケルトンの頭蓋骨は、ビデオを逆再生するかの如く、瞬く間に再生していき、元の形に戻る。

「これが正真正銘Bランク相当のモンスターです。気を引き締めていきますよ」

東雲の言葉に、俺がゴクリと生唾を飲み込んだ。