軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百十四話

さっぱりした俺たち三人は、ホテルの近くにある焼き鳥屋さんに足を運んでいた。

店に入ると、肉の焼ける音とタレの甘い匂いが五感を刺激する。

席に着いた俺たちは軽く四十本ほど注文し、適当に会話をしながら待つこと十分、最初に二十本ほどのモモとねぎまが届いた。

美味しそうな匂いを漂わせた焼き鳥を前に、ヴァルは目を輝かせる。

「ヴァル、食べていいぞ」

俺が言葉をかけている最中であったが、ヴァルは既に口の中に焼き鳥を咥えこんでおり、一口で刺さっていた肉を全て食べていた。

その豪快な食べっぷりに、自然と笑みがこぼれる。

「これは先に確保しておいた方がいいな」

俺と東雲はそそくさと自分の分を取り皿にのせる。

その間に、ヴァルは焼き鳥を三本も食べ終えていた。

「相変わらず凄い食べるな」

ヴァルがかなりの量を食べることを念頭に置いていたので、四十本近く注文していたのだが、これでは足りるかどうか。

(まあ、足りなければ、追加すればいいしな)

Cランク相当のモンスターばかり狩っているので、幸い懐は暖かい。

これからは更に強く、金を稼げるモンスターを相手取るので、これからも食費で困ることはないだろう。

ただ、装備の出費は格段に増えるので、支出にはそれなりに気を付ける必要がある。

(そんなことより…)

俺は目の前に座る、東雲へと視線を向ける。

既に一緒にいるのが日常となったが、俺にとってはある心配があった。

「どうしましたか?」

「いや、ちょっと聞きたいんだが、東雲的にはこの生活はどうなんだ?」

「生活、ですか?」

東雲がやや困惑したトーンで聞き返す。

「いや、う~ん、この生活というか、俺たちと活動するのはどうなのかな?と……」

仕事とはいえ、こんなおっさんとチームを組んで、ダンジョンに潜る生活なんて、普通に考えれば楽しいものではない筈だ。

(正直、ないとは思うんだけどな)

俺としては、東雲が現状に強い不満を抱いていることはないと思っている。

もしも何かしらの不満があれば、口か態度に出ていると思うし、彼女は明らかに特異な存在で、経験が常人とは遥かに違う。

それでも、万が一はある。

そもそも俺自身、人間関係の構築に関しては決して上手い方とは言えず、人として何か秀でたものを持っていなかった身であることもあってか、この不安を上手に解消することはできない。

なので、今更感はあるが、東雲の口からあらためて聞いてみたかった。

「楽しいですよ。私、友達もほとんどいませんでしたし、周りは敵ばかりで、ただ強くなることだけが全てでしたから」

東雲が取り皿にある、ねぎまを手に取り、パクリと口に入れる。

半年もない程度の期間の付き合いしかないが、俺から見て、彼女の声色と態度に嘘はなさそうであった。

「それなら、いいんだが」

俺も焼き鳥を口元まで持っていくと、モモを三切ほどまとめて食べる。

モモ肉なこともあり柔らかく、甘いタレの味が、緊張と疲れを癒した。

「……ん、ヴァルさんもいますし、ソフィもいますから」

東雲が不自然に俺から視線をそらしながら言う。

その動きに、追求したい欲が生まれるが、なんとなくそれを実行する気持ちにはならなかった。

「そうか」

俺はソフィと出会った時のことを思い出す。

ソフィはワイバーンとの戦いの際に手に入れた卵から孵ったドラゴンで、当時は妙に敵対心をむき出しにされたのを覚えている。

(滅茶苦茶デカくなってるんだよな)

あれからそこまで時間は経っていない筈であるが、大きさは既に一メートルほどになっているらしく、場合によってはダンジョンを一緒に潜ることもあるかもしれないと、東雲が言っていた。

「ソフィは知り合いに預けているんだったか」

「はい、世話に関しての諸々はしっかり伝えましたし、彼女からも定期的な連絡は受けていますから」

ドラゴンの成長が早いのか、それともソフィが特別なのか?

疑問は尽きないが、ダンジョンから出てきた生物なのだ。

多少の異常性は持っていても不思議ではない。

「私は幸せですよ。伊藤さん」

俺が考え込むようなそぶりをしていると、そう言ってニッコリと笑顔を浮かべる東雲。

「そうか、それは良かった」

俺も続いて、笑みを返す。

見慣れた笑顔の筈であるが、今までで一番女の子らしい笑みに見えた。