作品タイトル不明
第百十三話
あれから炎玉大猪を十体ほど倒した後、二人との連携(主にヴァル)の精度を上げたうえで帰還した。
(いつもより少し疲れたな)
今日はいつもよりも疲労が色濃く出ている。
それはモンスターと対峙したことから来るものではなく、魔力を普段よりも多く消費したことから来るものであった。
戦い方をこだわらなかった分、いつもよりも魔力を多く消費してしまっており、その分の疲労感が普段の疲れにプラスされている感じである。
(だが、効率よく戦えば、この手の疲労はだいぶ抑えられるな)
初見は面倒であるが、何度も戦うことで戦い方は概ね洗練される。
魔術のグレードを上げた以上、Cランクモンスター相手に苦戦を強いられることは無くなっていくことは間違いない。
「やっと休めるな」
ダンジョンを出ると、既に夕日が沈んでおり、ダンジョン周辺にある食事処や飲み屋に人が集まっている。
(今すぐ食事を取りたい気分だが……)
「一度ホテルに戻って、シャワーを浴びてから食事にしたいんだが、どうだ?」
「賛成ですね」
東雲の言葉に頷くヴァル。
このメンバーで探索後にそのまま食事に行くことはできない。
軽く露店に売っているものを買うぐらいであれば問題ないだろうが、食事はしっかりと取りたい気分であった。
露店の匂いに後ろ髪を引かれながらも、ホテルに戻った後、東雲、ヴァル、俺の順番でシャワーを浴びていく。
「伊藤さん、ヴァルさんの着替えが終わりましたよ」
俺がテレビから目を離すと、薄着のヴァルがこちらへと歩いてきていた。
(最近は服を着てくれるから助かるな)
メリハリのあるボディが浮き彫りになっているが、元々は衣服に無頓着であったためか、碌に身に着けずにリビングを歩き回ったりもしていた。
最近は羞恥心が芽生えたのか、はたまた単純に文化について学習したためか、風呂上がりには目の毒にならない程度には服を身に着けている。
「じゃあ、浴びてくるわ」
俺は早足で浴室に入ると、シャワーを浴び、汚れを落としていく。
何時間もダンジョンに籠っていると、汗をかいてしまうし、土などの汚れが付着してしまう。
(魔術をふんだんに使えば、そこまで制約はないな)
魔術師の対モンスターの戦い方は速攻で仕留めるのがセオリーであるが、色々比重を変えながら戦ってみた結果、意外にどれも問題なく行えた。
(ただ、剣の技量がな)
そこばかりはセンスの問題なので、どうしようもない。
(それを何とかするための仲間もいるしな)
一人で戦うならまだしも、仲間がしっかりと存在している中で戦うのだ。
ヴァルの白兵戦での強さはかなりのものだし、東雲もあまり手伝わないようにしているが、要所要所でアドバイスを送ってくれている。
今日は特に慣れない戦い方もしたので、アドバイスがためになった。
粗方汗を流して、身なりを整えた後、客室に戻る。
「食事に行くか」
俺の言葉と同時にヴァルのお腹辺りから、可愛らしい音が響いた。