作品タイトル不明
第百六話
あれから二匹の氷雪大鼬を討伐し、チェックポイントを見つけてから、ダンジョンを後にした。
(今日はいい探索だった)
ダンジョンを出た後はお楽しみの換金タイムである。
今日の探索で得た素材を売ったところ、売却額は300万円を超えており、一人当たり100万超えの収入となった。
(そろそろ、装備のグレードを上げることも考えないといけないな)
より高難易度の階層を攻略する場合、モンスターの素材の売却額が高額になる為、報酬はかなり良くなるが、出費も大きく増える。
装備のグレードが低い場合は傷めば早く変えなければならないし、高価な装備の場合でも、いつまでも使い続けられるわけではない。
その上、モンスターの強さが怪我をした際の治療費も高額になるからだ。
(何にせよ、それは帰ってからの話だが)
長野にいつまでも居続けるつもりもないし、装備のグレードを上げるのは、もう少し探索をして金を貯めてからになるだろう。
(一応、現状の装備でも問題はないからな)
初心者用の装備は意外に丈夫にできており、それこそDランクの中堅ぐらいまでは問題なく使い続けられる装備である。
自分の場合は魔術があるので、基本的にモンスターによってまともにダメージを与えられることはない。
そのため、装備は痛むことはあまりなかったが、流石にBランクになってから戦うモンスター相手では通用しないだろう。
(ワイバーンなんてヤバかったからな)
あのワイバーンですら強さは、Bランクの中でも突出しているわけではないらしく、今の装備が特殊な素材でできているとはいえ、あんなモンスター相手に連戦して防具として役目を全うできるかと言われれば、疑問符がつく。
しかも、ワイバーンは割とシンプルな方向性の強さだが、能力が悪質なモンスターもいるため、生半可な装備でBランク探索者向けの階層に挑戦すれば、俺でも相当痛い目を見ることになる。
(そして、Bランクからは装備の値段も跳ね上がる)
Bランク探索者になれば収入は桁違いになるが、支出も桁違いになる。
装備は勿論、さらに強くなるためにスキルオーブを購入しなくてはならない。
自分への投資が命に直結するため、装備の新調は必須となる。
(さっさと二百レベルに上げて、Bランクにならないとな)
このままモンスターを狩り続けていけば、レベルは上がるし、勝手にレベル200になっているだろう。
そうすれば、より高価で強力な装備を身に纏うことができる。
(そのためにも、今日はしっかりと休息しないとな)
東雲とヴァルの二人は現在、温泉を楽しんでおり、俺はさっさと汗を流して、一足先にホテルの部屋へと戻っていた。
コンビニで買った缶ビールを添え付けの冷蔵庫から取り出し、空けると喉に流し込む。
「ふぅ」
この時間がたまらなく最高であった。
ひりついた緊張感のある世界から、一気に日常に回帰するこの瞬間は、心が最も安らぐ時間である。
俺はゴクゴクと残ったビールを飲み干すと、戦う際中とは異なる、心地よい高揚感を感じながら、頬を緩めるのであった。