作品タイトル不明
第百三話
確認を終えた後、オーガの亡骸から魔核を取り出し、汚れを拭く。
(やっぱり、モンスターなんだな)
手にした魔核を微かな木漏れ日にかざすと、爛々と光っていた。
佐々木ダンジョンに潜り始めた頃、モンスターを倒して手に入れていた魔核とはサイズが随分、大きくなっている。
俺は魅惑的な輝きのある魔核を、手のひらの上で転がした。
(人型でも躊躇はないな)
これまでも人型のモンスターを相手にしてきたが、意外に躊躇なく戦えている。
それが良いことなのか悪いことなのかは分からないが、少なくとも探索者を続けていきやすいことは確かだ。
「伊藤さん、オーガがまたいました」
既に一体見つけたからか、次の個体を見つけるまでが短い。
俺は魔核を袋に入れ、東雲の指さした方に探知系の魔術を放つ。
「【アイス・ランス】」
魔力を消費するが、複数本の氷の槍を生成し、オーガ目掛けて射出する。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるの原則で、素早い動作で回避行動を取っていたオーガであったが、足に一本だけ命中した。
「前に出てみたいんだが、いいか?」
魔術で仕留めるのがセオリー通りだが、近接戦闘も多少は挟んでおきたい。
そんな思いを込めて、東雲に聞いてみる。
「ヴァルが一緒なら」
東雲の言葉に盾で地面を叩き、了承するヴァル。
「じゃあ、いくか」
ヴァルがやや俺よりも前に出る形で、オーガに近づいていく。
既に手負いのオーガは瞳を闘志で滾らせながら、こちらを睨みつけていた。
(そんなの関係ないな)
モンスターは等しく敵であり、探索者にとっては飯の種である。
睨みつけられる程度で怯んでいては、飯が食えない。
「いくぞ」
俺は刀を抜いて、構えを取る。
基本的には俺が戦闘をこなし、ヴァルはいざという時に入ってこれるようにするという形だ。
(既に格下だからな)
Cランク相当のモンスターは現在の俺にとって、格下だ。
レベルが向上し、戦闘の経験が蓄積されつつある上、スキルの使い方が良くなってきている。
(流石に東雲ほどではないが)
底が見えていないので、何とも言えないが、流石に経験値が足りなすぎる。
若くして十年以上ダンジョンに潜っている探索者に、半年すら経過していない新人の探索者が経験で勝ることができる筈もない。
(それでも、このモンスターを相手どるには十分だ)
俺は足を庇いながらもナイフを構えるオーガ目掛けて、刀を振るった。
身体能力は強化しつつ、半透明の結界による守りもしてある。
木々にぶつからないように配慮されつつも、人間離れした速さで放たれた突きは、硬い筋肉を突き破りながら、やや強引にオーガの首を貫いた。
「グベッ!?」
首を貫かれたオーガが出血しながらも、暴れようとする。
刀が折られては堪らないので、俺は直ぐに刀を引き、間合いを取った。
(流石に無理だな)
オーガはこちらに詰め寄ろうとしたが、首への致命傷と足へのダメージで、体をまともに動かすことができない。
俺はとどめの魔術を放ち、オーガを倒した。
(魔核がデカいな)
先程と同様に大きなサイズの魔核を取り出し、布で汚れを拭くと、そのまま袋に詰めていく。
袋の中では魔核同士がぶつかり、ビー玉がぶつかるような音を鳴らしていた。