軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百二話

俺たち三人は喫茶店を出た後、一度ホテルに戻ってから準備と簡単な調整を済ませ、長野第五ダンジョンへと足を運んでいた。

既に第十二階層までは攻略を進めており、今日の目標は第十五階層に到達することである。

(ここが第十三階層か…)

第十二階層に転移した後、すんなりと第十三階層へと到達していた。

(最初の頃よりも、少し暗くなったか?)

ダンジョンの中はいつもと同じように見えるが、ほんの僅かではあるものの、森の深さが増している気がする。

(秘境というか、この場合は魔境って感じになってきたな)

「いきましょうか」

「了解」

先頭のヴァルについていくようにして、俺たちはダンジョンの奥へと進んでいく。

ほどよい緊張感を保ちながら、探索を開始してから数分後、東雲が後ろから問いかけてきた。

「オーガについて何か聞きたいことはありますか?」

オーガ、長野第五ダンジョン第十三階層を徘徊するモンスターである。

長野第五ダンジョンの第十三階層のオーガは、二メートル超の大柄な図体に似合わず、俊敏さと隠密行動に優れ、ナイフを用いた奇襲を得意とする。

(近い間合いで戦うには危険なモンスターだよな)

木々が密集している場合などは、周りの状況次第では長物が振るいにくい場合がある。

気配を消す能力や、地の利も利用してくるため、知性のあるモンスターとして、Cランク探索者が複数人で相手にするには適正だとされていた。

「特にないな。探知系のスキルは使ってるんだろ」

喫茶店での打ち合わせの段階で、既に情報共有は済ませている。

十五階層までに、各階層をどのように攻略していくのか、最悪撤退をどうするのかなど、ある程度の事柄は既に決めてあった。

基本的には、東雲がスキルを使ってオーガを探知し、俺が魔術を使って倒すという方針であり、いざという時にはヴァルがかき回して状況をリセットするというものだ。

(東雲は戦いには参加しないが、いざという時は…)

東雲の実力は俺はおろか、ヴァルですら遠く及ばない。

いずれその境地に立てればいいが、それはまだ先の話だろう。

警戒して進む中、ヴァルは万が一に備える形で盾を構えた状態で警戒態勢を維持している。

(万が一の奇襲もないだろうがな)

東雲の探知力はかなりのものであり、それは単にスキルによるものだけではない。

経験に裏打ちされた技能と呼べるものも、多分に含まれており、こればかりは真似ができない部分だった。

俺も魔術を使えば、スキルと同じような効果は発揮できるし、複数の魔術を組合わせれば可能かもしれないが、消費する魔力は格段に上がるだろう。

(そろそろ出そうなものだが)

探索を進めていく中、一向に姿を現すことがないオーガ。

元々気配を消す能力に長けているため、俺では補足できないのであるが、姿を一切見せないので、言いようのない気持ち悪さと不安感がある。

「止まってください」

僅かな足音が森に木霊す中、東雲は静かに歩みを止めた。

俺が後ろを振り向くと、彼女は口を開く。

「見つけました」

東雲がオーガの存在を察知していた。

彼女は指先を森の奥へと向け、目を細める。

「どこだ?」

俺は東雲が指を差した方を見ていた。

しかし、そこに目を凝らしても、辺りと何ら変わらない、草木が映るのみであった。

(魔術を使うか)

姿が確認できないので、仕方なしに探知系の魔術を使う。

魔力を放出し、東雲の指さす方角に意識を集中した。

(ホントにいるな)

すると、なぜか先程までは認識できなかった、オーガの姿が認識できていた。

俺は気持ちを切り替え、戦闘の準備を開始する。

「とりあえず、魔術で攻撃する。もしもこっちに来るようなら、ヴァル、頼んだ」

俺の言葉に、勢いよく頷くヴァル。

「【アイス・ランス】」

俺は指先をオーガに向けると、ヴァルが盾を構えたのを尻目に、氷の槍を発射する。

今回は【アイス・アロー】よりは大きいものの、一般的な短槍よりもさらに短く細いものにし、その分速さを意識して魔術を放った。

威力はやや劣るが、高速で射出された氷の槍であったが、オーガは事もなげに避けて、木の後ろに姿を隠した。

(Cランク相当ということか)

気配を消す能力だけでCランク探索者が複数人で当たる強さなわけがない。

俺は直ぐに次の攻撃に意識を切り替える。

焦ることなく、再び氷でできた槍を放つ準備を始めた。

「【アイス・ランス】」

今度は通常サイズであるが、数を三本に増やしている。

速さへの意識はあまりない分、威力は通常の魔法に近い。

「グルォッ!?」

オーガは木の後ろに隠れて安心していたのか、避ける動作が遅れていた。

そんな中、容赦なく三本もの氷の槍がオーガ目掛けて飛んでいく。

二本はオーガが隠れるのに使った木を貫通し、最後の一本は避けそこなったオーガの肩口を抉った。

「ッッ!?」

オーガが声にならない悲鳴を上げている。

隙を晒す中、俺は既に次の魔術の準備を終えていた。

(終わりだな)

「【アイス・ランス】」

最初に放ったものよりも僅かに小さな氷の槍が、幾本も射出された。

既に傷を負っていたオーガは反応が遅れてしまい、身を隠すことはおろか、碌に避けることもできないまま、攻撃をもろに食らっている。

(決まったな)

小さな氷の槍が複数本、オーガの体に突き刺さっていた。

血を流しながら、苦悶の表情のまま、後ろに倒れ込むオーガ。

「【アイス・アロー】」

俺は離れた距離から、倒れたオーガの頭にとどめの一撃を浴びせるのだった。