軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第12話・長期間成果が得られない場合は何かの改善が必要なようで

早速、午後の実験にアルフレッド兄が同行してくれる事になった。俺とアルフレッド兄、リーシャ、ミリアム、ドズゥの5人で現場へ向かう。

寒がりながら山を進むリーシャとアルフレッド兄。メルヘンラークも毎年雪が降るらしいが、向こうは風が無いとの事で、そうなると寒さの質が変わるという。そんな雑談を挟みつつ、今、俺が作っている物についても説明をした。

「また便利なものを……」アルフレッド兄は関心よりも呆れが先に立つような面持ちで言う。「それだけの物を作ろうとしているのだから、たんと苦労してくれ」

俺に対して、何か含む感情があるようだ。後ろめたい感情では無さそうなので嫌では無いが、少し気になる口調だった。とはいえ、今の話題とは関係無さそうなので、無視をする事に。

「えー、でも、苦労しないに越した事は無くないですか?」

口では言ってみるが、本心では無い。雑談だ。

アルフレッド兄は答えた。

「そうか? 苦労せず覚えた事はすぐに忘れてしまうから、大切な事は苦労をしたいと、俺は思うな」

おお、中々に俺好みの回答だ。

勿論、大切じゃないものは可能な限りラクに覚えたい。

「そういうものですか」

「ああ。あくまで俺は、という話だがな」

念を押され、少し関心する。自分の考えを押し付けないための予防線だろう。魔法を教える仕事をしているというと、思想を押し付けるように成長してしまいそうなものだが、アルフレッド兄はそうなっていない。

さて、そうこうしている間に現場に到着し、早速、アルフレッド兄に確認してもらう。

いくつかの動作テストもチェックしてもらうと、アルフレッド兄はしばらく考え、こう言った。

「魔法学の知識も必要だが、天文学の知識も必要になりそうだな」

「「「天文学?」」」

俺と一緒に驚いたのは、ドズゥとミリアムだ。

アルフレッド兄は説明を続ける。

「ああ。最近ちょっと違う説が浮上し始めているが、この世界では天動説が主流だ」

「違う説……てんどーせつ」

ミリアムが早速脱落していた。

構わず、アルフレッド兄は続ける。

「天動説においては、この世界は4つの元素で作られている。土、水、気、火だ。アルメル、これらの要素に覚えは無いか?」

「魔法ですね。土魔法が基礎で、水魔法、火魔法があり、木魔法が……あれ、少し違いましたね」

「いや、合っている。木魔法は草木を実験体にして研究開発されているから木魔法と呼ばれているが、実際に操作しているのは『気』だ。天文学としては空気の事だが、魔法学では解釈を広げて、人が持つ『気』等を操作している。身体能力を上げる補助魔法や、回復魔法なんかも木魔法だが、これらはつまり、気を操っているという事になるな」

「まったく理解出来んわい」

ここでドズゥ氏も脱落。正直俺も脱落間近だった。

天動説が主流、というのも初めて知った。

現代世界では、太陽は動かず、その周りを、地球を含む全ての星が回っているという『地動説』が知れ渡っているが、少なくともこの世界においては『天動説』すなわち、この大地は動いておらず、この大地の周りを星々が動いているという説が主流との事。

現代の世界から来た人間としては「間違ってますぜそれ!」と言いたいところではあるが、ここは魔法すらある異世界だ。元々の世界とは根本が違う可能性があるため、あまり出しゃばらないようにしようと思う。

「それで、その天動説が、今回の開発にどう関係するのですか?」

聞くと、アルフレッド兄は当然のように川の水は操り、いくつかの水の塊を宙に浮かせる。

「天動説において、物が落ちる理由は、重いからだ。土は最も重いため、最も低い所へ落ちる。次に水が重いため、土の上に落ちる。次に気が重くて、次に火が重いため、火は上へ上がろうとする。このルールに従い、物は下に落ちる。あくまで、天動説においては、な」

俺の知っている物理学と異なるが、専門でも無いし、世界も違う。この世界ではそうなのかもしれない、という体で話を聞く。アルフレッド兄も、度々「天動説においては」という前提を繰り返すあたり、他の説を唱えている学術派も居るのかもしれない。

「俺のこの給水配管は、その『物が落ちる』原理を利用したものですね」

「そうだな。だが」

アルフレッド兄が、大きさの異なる2つの水の塊を円柱型にして、地面に落とした。

地面に落ちた水は多少の土を弾き、水たまりと泥を作る。

「水の量が多いほうが、弾かれた土は多かっただろう? 水は土より軽いとはいえ、それなりの量でそれなりの高さから降ると、その瞬間だけ土を押しのけるほどの力を持つ。そしてこれは当然だが」

さきほどの2つよりさらに大きい塊を、同じ場所に落とす。当然、さきほどの2つよりも大きな力が地面に加わった事が解る。

「水は多ければ多いほど落ちようとする力は増す。配管を伸ばせば伸ばすほど、配管内の水の量は多くなり、落ちようとする力が増す」

「あ」

言われ、当然の事を失念していたと思い知った。

そうだ、言われてみればそれでしかない。途中まで良くても配管を伸ばしたら途中でダメになってしまうのは当たり前だ。

…………え、なんで気付かなかったんだ、俺。ちょっと、これに数か月かけてたの、恥ずかしくなってきた。

俺は言う。

「そうなると、途中で区切るのが無難ですね」

「というと?」

アルフレッド兄が確認をしてくれたので、俺は説明する。

「配管が保つ程度の長さで、木樽等に水を注ぎます。その木樽にある程度溜まった分が次へ進む、というような形にするんです。木樽に水を注ぐ給水口は木樽の水面より高い位置にすれば、水と水の繋がりはそこで途絶える。水の重さは加算されないし、曲がり角をこの作りにすれば、複雑な曲がり角作成も不要です」

その提案に、アルフレッド兄は苦笑する。

「よくそんなすぐに思いつくな。相変わらずどんな頭をしているんだ、お前は」

今の説明を口頭で聞いただけで理解しているアルフレッド兄も、どんな頭をしているんだ案件である。

しかし

「でも」アルフレッド兄は、先ほどの提案に興味を示しつつも、こう否定する「不格好じゃないか? 村中に張り巡らせる計画なんだろう?」

「うぐ……。べ、便利さの前に、格好良さなんて飾りですよ、飾り……」

古い廃工場の配管構成にロマンを感じる事があるので、そんな感じになったりしないかなと思っていたんですが、なりませんかね。

「悪くないアイデアだと思うんだが、そのアイデアより前にもうひとつ、試してみないか? きっと役立つ意見があるんだ」

「え!」

救済の言葉に思わず飛びつく。

そんな、そんな魔法のような解決策があるんですか!? あるんですよね、魔法がある世界だもの!

いやぁ、やはり持つべき物は優秀な労働力なわけ。いや、ミリアムもシンシアもサーシャも優秀よ? でも必要な知識が必要な場所に無いってのは世の常で、その点アルフレッド兄は今や研究者であり教師なので、頭の良さが違うというかなんというか。

さて、では聞かせてください! その全てをひっくり返す逆転のアイデアを!!

そして、満を持して、アルフレッド兄はこう告げる。

「アルメルの魔法力を強化するのさ」

期待を返せくそ兄。