軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

392 反 撃 6

新入りの2頭(どちらも牝馬)に、私達のことを簡単に説明した。

『えええええええ〜〜っっ!!

そ、そのような名門の血筋の王子様達ですの! そして、女神様の御乗馬である、神馬様!!』

『素敵ですわ、素敵ですわ!!』

あ~、確かに、ハングもバッドも女神に仕えし神馬エドの直系の子孫で、それぞれの一族で最も真祖の血を色濃く受け継いだ名馬だそうだからなぁ。馬の中では、名門の血筋だとか王族だとか言われる立場になるのか?

今は 私達(女神) の乗馬だから、真祖である神馬エドと同じ立場になってるしなぁ……。

人間から見れば『白馬に乗った王子様』の 絵面(えづら) が、『人間を乗せた王子様』になるワケね、牝馬から見れば……。

そしてこの2頭、盗賊の馬にしてはお上品だと思ったら、元は貴族の乗用馬だったらしい。

……まあ、盗賊が馬を入手するのに、ちゃんとお金を払って買ったりはしないか。

なので、劣悪な環境から救い出してもらったと、私達にすごく感謝してくれた。

それと、この2頭、盗賊の馬だからシルバー種じゃないと思っていたら、奪われた貴族家の馬だったため、シルバー種なんだってさ。

それも、代々シルバー種同士を親として血統を保った、純血種。

ハングとバッドは、一目で分かったそうだけど……。

人間に、見ただけで分かるか、そんなモン!!

『そういうわけだから、ハングとバッドが今回のお役目を終えて戻ってくるまで、2頭の代わりにここの子供達の乗馬の練習とかの相手をして、……そして敵から護ってやってほしいんだけど……』

『御神命、慎んで承りました。人間の子供達の守護……』

『そして、王子様方の留守を守り、その代役を務めるという大任……』

『『この命に代えましても!!』』

『お願いね。

じゃあ行くよ、ハング、バッド!』

『『はは〜〜っ!』』

よし、出発!

……いや、輸送艇で一旦王都のお店に戻るんだけどね。

出発は、王都から。ハングとバッドが牽く二頭立ての馬車で出発する。

馬車は、どれを使おうかな……。

* *

王都のお店に戻り、みんなで最後の打ち合わせを行った後、馬車……『パンツァー』……にファルセットと共に乗り込んで、出発。

荷物や食料はアイテムボックスの中なので、車内は広々としている。

牽くのは、勿論、ハングとバッドの二頭立て。

今回、馬車に『パンツァー』を選んだ理由は、アレだ。

ゴツくて、軍用の装甲馬車みたいに見えるから、1台だけの単独行動であっても、盗賊とかに襲われにくいから。

外には護衛の姿がなくても、中に、完全装備の兵士が乗ってるかもしれないからね。

勿論、御者台には兵士っぽい恰好をさせたダミー人形を座らせておく。

『メルカバ』は普通の馬車に見えるし、『ペネロープ号』……車輪は、6輪ではなく4輪……は、華奢でお洒落な感じの、見るからに金持ちのお嬢様が乗っているような感じの馬車なので、論外だ。

盗賊ホイホイにも、程がある。

ファルセットは、私の帰りを待っている間に、馬屋が経営している郊外の牧場へ行って、愛馬との時間を過ごしていたらしい。

ファルセットは馬の言葉が喋れないから、愛馬を置いてけぼりにするということが馬に伝わったわけではないけれど、ファルセットが 抱(いだ) いている罪悪感が何となく伝わったのか、馬の態度が少しおかしかったとか……。

馬は、繊細な動物だからねぇ。

でも、ファルセットの愛馬って、軍用の乗用馬だよね?

馬車を牽くというのは、屈辱だと思うんじゃないかなぁ……。

エドも、最初は怒り狂ってたよなぁ。

最初から嬉々として引き受けた、ハングとバッドが少しおかしいんじゃないかと思う。

……あ、伝説の神馬、真祖エドが 女神(わたし) の馬車を牽いていたという言い伝えがあるからか!

それなら、光栄なことだと思うか……。

今回の旅から戻ったら、ファルセットの馬にも話し掛けて、仲間に入れてやらなきゃなんないかなぁ。馬に乗る人って、馬のことを家族みたいに思う人がいるそうだからなぁ……。

それと、ポーションによる恩恵も、与えてやらなくちゃ。

エドもそうだったけど、ポーションを何度も与えていると、身体能力が向上するみたいなんだよね。

まあ、身体の隅々まで治癒されて、細胞レベルで不具合箇所がなくなれば、そうなるか。

それに、ハングとバッドには、延命のポーションを飲ませたしなぁ。

……あ。あの2頭の牝馬。ハングとバッドの彼女になるなら、アイツらにもポーション飲ませてやらなきゃ駄目か?

あまり無制限に、普通の治癒の範囲を超えたポーションを与えるわけにもいかないよねぇ。

ある程度で、線引きしなきゃなぁ……。

まあ、とにかくそういうわけで、出発!

* *

……間もなく、隣国の王都に到着する。

いや、道中、何事もなかったよ。

ま、こんなゴツくてヤバそうな馬車に手出ししようとする者はいないか。

ファルセットが物足りなそうな顔をしていたけれど、ファルセットを満足させてやるがために、わざわざ『ペネロープ号』に乗り換えて盗賊を 誘(おび) き寄せたりはしないよ!

敵が誰かということは、分かってる。

そもそも、空を飛んだり、消し飛ばされてなくなった足を生やすことができたりする者が、女神や御使い様ではないと思う者なんか、この世界にはいやしない。

だから、盗賊達が嘘を吐いている可能性は、まずない。

……まあ、それでも念の為に、こっそりと自白剤を創造したのだけどね、何人かの胃袋の中に。

だから、無実の者を誤爆する可能性は低い。

勿論、盗賊達が、名前を偽った依頼者に騙されているという可能性はあったけれど、襲撃を見届けるため潜入御者役として現場に立ち会った、依頼者である大店の手代の存在があるからね。

それに、何もいきなり、問答無用で物理的に潰すわけじゃない。

それじゃあ、後悔したり反省したり、……そして絶望に沈むための時間がないからね。

今後、同じようなことを考える者が出ないよう、見せしめとなって警告の役目を果たしてもらわなきゃなんないし。

「……って、ファルセット、そんなに嬉しそうな顔をしない! 不審に思われるでしょうが!」

「あ、ハイ……」

ホントに、コイツは……。

「いきなり戦闘に突入したりはしないよ! まずは情報を集めて、敵の範囲を確認して、向こうが最もダメージを受けるような攻め方をするんだからね。力攻めだけじゃなくて……。

エインヘリヤルは、女神の守護騎士なんだからね、しゅ、ご、き、し!

一番先頭に立って敵に突撃する、 尖兵(せんぺい) とかじゃないんだからね!」

「…………」

……って、何だよ、その不服そうな顔は……。

あの狂犬フランセットでさえ、そのあたりはちゃんと 弁(わきま) えていたぞ。

「とにかく、王都に入って、とりあえず宿を取ろう。ここでの拠点だよ」

「はい!」

あ、王都に入る前に、馬車を交換しなくちゃね。

王都内なら、チンピラに絡まれることはあっても、盗賊に襲われることはないだろう。

そして、『パンツァー』だとゴツくてデカいから、王都内で乗り回すには不便だ。

ここは、小さくて取り回しが楽ちんな、『ペネロープ号』一択だ。

私達は、お金持ちのお嬢様とその護衛である女性騎士、と思わせた方が色々と捗るだろうし。

ハングとバッドのハーネスを外して、と……。

『パンツァー』送還、『ペネロープ号』召喚!

「よし、王都へ殴り込みだ!」

「いえ、最初は情報収集、という話だったのでは……」

い~んだよ、細けぇこたー!!