軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

391 反 撃 5

「今回、移動にはハングとバッドを使おうと思うんだ。

向こうでも、ちょこちょこ動くのに使えるし、少しは活躍させてあげないと……」

「「あ~……」」

ファルセットはよく分かっていないみたいだけど、レイコと恭ちゃんは一発で理解してくれた模様。

「神馬エドの子孫だよ、シルバー種の……。

あの子達にも、活躍の場を与えてあげないとね……、って、なんで恨めしそうな顔で私を見るんだよ、ファルセット……」

何か、ファルセットの様子がおかしい。

「カオル様! どうして馬に対してはそんなに心遣いをされるのに、私にはそういうのがないのですか!!」

あ……。

考えてみれば、ファルセットとハング&バッド、立場が殆ど同じだ……。

「あ、いや、だから今回はファルセットも連れていくじゃん!」

「……馬のついでに、ですか?」

「うっ……」

「そして、私の愛馬もシルバー種ですよ! あの子はハブられるのでしょうか?」

「ううっ……」

実は、ファルセットの愛馬には、一度も話し掛けていないのだ。

そんな機会もなかったし……。

ファルセットの愛馬は今、馬屋に預けて世話をしてもらっている。

ちゃんと郊外の牧場で運動とかもさせてくれているのだ。追加料金がかなり高いけど……。

だから、黙っていれば、本人…… 本馬(・・) には今回のことはバレないはずなんだけど……。

「こっ、今回は、私とファルセットのふたりだけだから……。

これで、ハングだけ連れて行ってバッドが留守番、というのは、マズいでしょ?」

「うっ、それは、確かに……」

うん、そんなの、バッドが耐えられないだろう。ハングも、居たたまれないだろうし……。

「今度、3人以上で出掛ける時には、ファルセットの愛馬も一緒だから!

まだ私達が話し掛けていないから、あの子は今は事情を知らないよね? だから今回は……」

「はァ、分かりました……」

うむ、納得してくれたか……。

確かに、同じシルバー種で、バルモア王国の王都にいて、フランセットの一族と共にたくさんのシルバー種と一緒に飼われていたのだから、当然、その子もシルバー種に伝わる馬の口伝を知っているだろう。

こりゃ、私達かハング達から事情を聞いたら、怒り狂いそうだよなぁ。どうして自分だけが今までハブられて 蚊帳(かや) の外だったのか、って……。

……あ。

恭ちゃんが、こっちを睨んでる。

マズい! 私とレイコが恭ちゃんに色々と隠し事をしていた時のことを思い出したな!

とんだ藪蛇というか、とばっちりというか……。

イカン、この話はさっさと終わらせよう!

* *

というわけで、ハングとバッドを回収するために、私ひとりで、2頭を乗せられる輸送艇で『リトルシルバー』に来たわけだけど……。

「ハングとバッドを連れていく……」

「私達を残して……」

「私達、ここに残されて、そのまま捨てられる……」

「「「「「あわわわわ……」」」」」

ああっ、マズい!

自分達が捨てられることはあっても、名馬2頭を置き去りにすることはあり得ない、という考えが、私達が3人共不在であってもこの子達がある程度心の平穏を保てる支えになっているのだった!

なのに、ハングとバッドを連れて、私達が3人共ここを離れたら……。

イカン、子供達の情緒不安定が、ぶり返す!!

どどど、どうすれば……、って、そうだ!!

「代わりにこの子達を置いていくから、世話をお願いね!」

そう言って、アイテムボックスから2頭の馬を出した。

「「「「「……え?」」」」」

そう。この馬は、盗賊達が連れていた馬達のうちの2頭だ。

あとで売り払おうと思って、アイテムボックスに入れていたのだ。

あそこに放置したら、誰かに盗まれるか魔物の餌になるか、だったからね。

連中、あのまま奪った馬車を護衛して隣国まで行くつもりだったからか、襲撃地点まで歩くのが嫌だったからか、数頭の馬を連れていたんだよね。

まあ、盗賊達の馬車が別の盗賊に襲われたら、笑えるよね。

勿論、馬に乗ってきたのは頭目や幹部クラスの連中だけだろうけど。

馬はデリケートな生き物だし、大量の水を必要とするし、維持するには色々と手間とお金がかかるのだ。盗賊が全員分の馬を持つのは、難しいよね。

全部で5頭いたけれど、そんなに出すと子供達が世話するのが大変だろうから、出したのは適当に選んだ2頭だけだ。子供達が乗馬の練習に使ってくれればいい。

あ、馬車も置いておけば、御者の練習もできるか。

乗馬と御者ができれば、将来食いっぱぐれることがないかも。

女性の御者は少ないから、大店のお嬢様の専用馬車とかで雇ってもらえたり……。

『じょっ、嬢ちゃん、こっ、こちらの御令嬢方は!』

『しょっ、紹介してください!!』

……え?

バッドとハング、何か、すごい入れ込み具合だぞ?

どうどうどう……。

『いや、ここで面倒を見てもらおうかと思って……。

シルバー種じゃないだろうけど、まぁ、私の持ち馬という意味では、ハングとバッドの後輩になるかな?』

『や……』

『や……』

『『やったああああぁ〜〜!!』』

え~……。

何、この喜びよう……、って、この2頭、どっちも牝馬なのか?

……そして、美人……、『美馬』なのか?

あ。そう言えば、コイツらをアイテムボックスに入れるとき、『牝馬がいれば、ハングとバッドのお嫁さん候補に』とか考えたよなぁ。

いや、あれは冗談半分で、馬屋に売ろうと考えていたんだけどね、本当は……。

あそこに放置して、通り掛かりの者に盗まれるならまだしも、魔物に襲われたり飢え死にしたりすると後味が悪いと思って。

そうか~、本当に気に入ったか、ハングとバッド……。

『『ギャアアア、シャベッタアアアアァ〜〜!!』』

そして新入りの2頭が、大きくいなないた。

……ま、人間が馬の言葉を喋っているんだ、驚きもするか……。