作品タイトル不明
387 反 撃 1
「商隊は、無事、出発したね」
「うん。足りなくなった御者の分は、護衛のひとりが御者の経験があるとのことで、任せられたから、問題ないよ。特別料金を貰えるとかで、大喜びしてたよ。
やっぱり、資格や経験は、身を助けるよねぇ……。
さて、あとは、コイツらをどうするか、だけど……」
恭ちゃんは、テロリストとは、交渉どころか、会話すらしない。
言葉は通じても、意志の疎通は不可能だから。
人質を取っておいて、その解放を条件にして交渉するとか、意味が分からない、って言ってた。
そんなの、殺されたくなければ金を出せ、というのと同じで、ただの犯罪行為であって、交渉でも何でもない、って……。
まぁ、確かにそうだよね。
だから恭ちゃんは、そういう場合には、相手が言うことは一切聞かず、話をしないのだ。
相手が要求を言う前に攻撃すれば、人質の意味がない。
まだ何も条件を言っていないなら、人質に危害を加えても何の意味もない。ただ相手を怒らせて攻撃が激化するだけだ。
向こうは、何とか話を聞いてもらって交渉をしようとするだろうけど、相手の都合に合わせてやる必要はない、ってことらしいよ。
だから今回も、恭ちゃんはダルセンさんや御者、護衛の人達が人質にされて、盗賊達が交渉しようとする前に、何も聞かずに一方的に攻撃して、相手の戦闘力を完全に奪った。
まあ、両手は健在だけど、両足がないのでは剣をまともに振ることも、投げることもできないだろう。
もし投げられても、私達を負傷させることはできないし……。
ま、そういうわけで、今、私達の前には盗賊達が転がっているわけだ。
一応、出血多量で死なないように、ポーションで止血はしてある。
小型艇とビーム兵器を見られたのだから、今更、それくらいは関係ない。
コイツらの足を消し飛ばして戦闘能力を奪った後、小型艇を着陸させて、変装した私達が降りて、『女神の御使い様』としての 役割演技(ロールプレイング) を行ったのだ。
まあ、今、自分達の目で見て、両足で体験したことから考えて、疑う者はいないよね。
何か、ダルセンさんには私達だと分かっているみたいな気がしたけれど、多分、気のせいだな。
何しろ、完璧な変装だものね、私達の、今の姿……。
そして、御者と護衛達……勿論、ダルセンさんも……のロープを切って解放し、再度馬車を反転させて、王都へと向かわせたというわけだ。
ちゃんと、ダルセンさんと、少し怪我をしていた護衛の人達にはポーションを飲ませて回復させておいた。
破れた衣服は直してあげられなかったけどね。
後のことは気にするな、と言って、そのまま出発させて、……ここに残ったのは、私達3人と、小型艇と、襲撃者達が乗ってきた馬と、……両足がない、26人の盗賊と、ひとりの御者。
「ここじゃ、ちょっとマズいよね」
ここは、大きな街道のど真ん中だ。既に暗くなっているとはいえ、いつ、誰が通り掛かるか、分からない。
なので、場所を移した方がいい。
私のその提案に、レイコと恭ちゃんが頷いてくれたので……。
「1号、送還! ……そして、2号、召喚!!」
私の呪文と共に、小型艇が消え、やや大きめの輸送艇が現れた。
……収納した小型艇は恭ちゃんのやつだから、後で忘れずに返さなきゃね。
そして、輸送艇から出てきた作業用の自動機械が、涙と 涎(よだれ) と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で泣き叫び、懺悔と謝罪の言葉を喚き散らしている連中を、さっさと、……文字通り、 機械的に(・・・・) 、貨物室へと運んでいった。
……勿論、馬も一緒に。
こんなところに放置していたら、獣や魔物に襲われちゃうからね。
それに、馬も結構高いんだ。
売るにしても、飼うにしても、どちらでもいいし。
……あ、牝馬がいれば、ハングとバッドのお嫁さん候補という手もあるか……。
「どこへ連れて行こうかなぁ。
リトルシルバーとかは、論外だし……」
あんなところへ連れて行って尋問なんかすれば、子供達の情操教育上、非常によろしくない。
そう思って、いい尋問場所を考えていると……。
「あの、候補から外した無人島はどう?」
「あ、なる程!」
レイコが提案してくれたのは、バカンス用の無人島を探していた時に候補のひとつになっていたけれど、最終選考で落選した小島だ。
絶対に邪魔が入らず、逃げることもできず、そこで何が行われたのかを知る者は、誰もいない。
「よし、決定! 輸送艇に、搭乗!」
あ、ファルセットは、店に置いてきている。
店をカラにすると、賊が侵入するかもしれない、と言って。
いや、勿論ファルセットは猛反対で抵抗、『絶対ついて行く!』と言い張ったけれど、私達が3人揃って、無敵の『天の浮舟』に乗って行くのだから大丈夫、それよりここが襲われることの方が心配だ、ダルセンさん襲撃はここを手薄にさせるための陽動かもしれない、と言いくるめて、何とか無理矢理納得させたのだ。
……いや、納得してはいなかったな、アレは……。
とにかく、時間がない、と言って、放置同然で置いてきたのだ。
これでお店への襲撃がなければ、ファルセットの機嫌がかなり悪くなるのは間違いない。
これは、何か宥めるための方法を考えとかなきゃマズいかな……。
本当は、ちょっとファルセットには見せられないことが起こるかもしれない、と思ったから連れてこなかったのだけどね。
さすがに、いくらファルセットが私達のことをある程度知っているとはいえ、小型艇の火力は見せられないよ。
「……よし、発進!」
* *
「……というわけで、無人島に来たわけだけど……」
この島はそこそこの大きさで、水もあるし、木の実や食べられる野草……薬草や山菜とか……もある。
また、食用になる動物とかもいて、自給自足で生活できなくもない。
なので、私達やリトルシルバーの子供達の保養地候補だったのだけど、安全に遊べる砂浜や岩場とかの状況で、他の候補地に敗北を喫し落選、ボツになったのだ。
ここなら邪魔は入らないし、いくら泣き叫ばれても誰にも迷惑が掛からないし、檻に閉じ込めたり縛り付けたりしなくても、逃げられる心配はない。
……まぁ、足がないしね。
あ、いや、逃げること自体は可能か。
天国とか、地獄とか、そちらの方面へ、ということなら……。
そっち方面なら、もう人に迷惑を掛けることはなくなるだろうから、止めはしないよ。
「……で、とりあえず、私に任せてくれるんだよね?」
にっこりと微笑んで、そんなことを 宣(のたま) う、恭ちゃん。
草むらに転がっている27人は、何だか少し、ほっとしたような様子だ。
そりゃあまあ、いくら変装しているとはいえ、元々のイメージが完全になくなっているわけじゃないからね。性格的なものが、何となく 滲(にじ) み出ているだろう。
少し冷徹な印象がある、レイコ。
言うまでもない、魔眼というか凶眼というか、……まぁ、アレな眼の持ち主である、私。
そして、邪気のない、純真……そうに 見える(・・・) 、恭ちゃん。
誰に尋問して欲しいかと言われれば、誰もが恭ちゃんを指名するだろう。
勿論、その気持ちは分かる。よおぉ~く、分かる。
……でも、純真な子供って、昆虫の羽根や脚をむしって遊ぶよねぇ。
にこにこと、満面の笑みを浮かべて……。
下手をすると、邪心がある者より怖い場合があるんだよ、『純真』っていうのはさ……。
よし、恭ちゃん対盗賊達27人、無制限1本勝負。
……レディ、ファイッ!