作品タイトル不明
388 反 撃 2
「つまんない……」
あまりにも簡単に全てを吐いた盗賊達に、御不満らしき恭ちゃん。
まぁ、完全に女神本人かその直属の眷属だと思われているんだ、仕方ないだろう。
何しろ、女神に目を付けられれば、今世だけでなく、来世でもどんな目に遭わされるか、分かったもんじゃないからねぇ。
……というか、来世どころか、永遠に地獄で責め苦を受け続けるという可能性の方が高いか……。
そりゃ、素直に吐くわなぁ……。
雇い主にいくら金を積まれようが、脅されようが、永遠の責め苦の前じゃあ、ティッシュペーパーほどの抑止力にもなんないよねぇ。
とにかく、恭ちゃんがアイテムボックスの中から取りだした、巨大なおろし金……大根おろしを作る時に使う、あのゴリゴリ削るやつの、超巨大版……を手にして、盗賊の足の切断面をじっと見詰めただけで、皆が我先にと雇い主やら何やらの情報を叫び始めたんだよね。
そして恭ちゃん、いつ、 超巨大おろし金(そんなもの) を用意してたんだよ!
そんなモノを使う機会なんか、……あったワケだけど……。
いや、本来の目的は、何だったんだよ!
何に使うために作ったんだよ、そんなモノ!!
まあ、そういうわけで、何とか世界が破滅することは回避された。
……今のところは、だけどね。
うん、勿論、全然終わっちゃいない。
まだ、実行犯、つまり使い捨ての下っ端や、現地で雇ったゴロツキ共が捕まっただけだ。
そして恭ちゃんのモットーは、『悪事と臭いにおいは、元から絶たなきゃダメ!』なんだよね。
……そう、今から始まるんだよねぇ……。
でも、その前に……。
「コイツら、どうする?」
「「殺そう!」」
「あ、やっぱり?」
レイコと恭ちゃんは、そう言うだろうと思ってたよ……。
「まあ、生かしておいたら、また悪事に手を染めて、大勢の清く正しい人達を殺したり怪我をさせたり、そして財産を奪ったりするだけだもんねぇ。
被害を事前に防ぐためにも、この世界のためにはそれが一番いいよね。
裁判にかけても、どうせ死刑か、終身犯罪奴隷として戦場か鉱山送りだろうし……。
それなら、ここでひと思いに死なせてあげた方が、本人達も嬉しいんじゃないかな」
「「「「「「生きていたいですううぅ〜〜!!」」」」」」
「……あ、そうなの?」
みんな必死で、こくこくと頷いてるなぁ。
いや、勿論、本当に殺そうとは思っていないよ。
…… 私とレイコは(・・・・・・) 。
私達の目の前で人を殺したわけじゃないし、 現地(ここ) の法によらない 私的制裁(リンチ) をやるつもりはない。ただ、ちょっと脅しただけだ。
…… 私とレイコは(・・・・・・) 。
「害虫を生かしておいたら、また被害者が出るよ?
それに、私達に復讐しようとするかもしれないし……」
恭ちゃんの言葉に、全力で首を横に振る盗賊達。
……まぁ、この連中は私達の事を女神か御使い様だと思っているだろうから、復讐のしようがないし、神や御使い様に逆らおうとする者はいないだろう。
「ま、とりあえず、事情聴取を始めようか」
止血したり腕を縛ったりしている時に、各々が必死に色々なことを叫んでいたけれど、27人が一度に叫びまくったのでは、ちゃんと聞き取れるわけがない。
そんなの、聖徳太子が、助走つけて殴りかかってくるレベルだ。
なので、改めてここで、ひとりずつ喋ってもらうわけだ。
そのために、邪魔が入らない場所に連れて来たんだから……。
* *
「さて、どうしようか……」
事情聴取の結果、大体の事情は分かった。
首謀者は、隣国の大店。
情報に聡い商人なのである。隣の国で、魅力的な商品……儲けもであるが、それよりも、上級貴族や王族との繋がりが得られるであろうメリットが大きい……が出回っていることなど、すぐに把握したらしい。
しかし、それらの商品を独占的に取り扱っているのは、この国の大店であるカルド商会である。
さすがに、直接喧嘩を売るには相手が悪い。
そこで、その前の段階、つまりカルド商会に納入される前の部分で、仕入れルートに割り込もうとしたのである。
そして簡単に判明した納入業者は、驚いたことに、何の後ろ盾もない、ただの、田舎町の中規模商店。
当初は、ルートに食い込んで商品の一部を確保できれば、というつもりだったらしい。
それでもカルド商会は激怒するであろうが、それくらいは商売上の戦いであり、別に非難される謂われはないとか……。
でも、納入業者であるダルセンさんの店は、小さかった。
予想していたのより、遥かに……。
なので、甘く見た。そして、欲が出たらしい。
仕入れルートを全て、完全に奪えるのではないか、と……。
別に、カルド商会の仕入れ先を奪うわけではない。
ダルセンさんのお店、オーリス商会の仕入れ先さえ分かれば、そこから直接買い付ければいい。
カルド商会の直接の取引相手を奪うわけではないので、文句を言われる筋合いではない、ということらしいのだ。
まあ、真正面から行っても、ダルセンさんが素直に仕入れ先を教えるわけがないよねえ。
……だから、手っ取り早い手段に出た、と……。
うん、馬鹿なのかな?
そういうわけで、この連中は、一部は隣国の裏稼業の連中で、大店から直接依頼を受けた者、つまり元請けの連中で、その他は下請け、この国で雇ったゴロツキ連中らしい。
……つまり、本職の盗賊じゃないってことだ。
そして御者のひとりは、依頼者である大店の手代とのこと。
依頼者からのお目付役兼、商隊の情報を流す間諜要員ってわけだ。
ただのチンピラやゴロツキはともかく、ちゃんとした裏稼業の連中は、犯罪行為は行っても、依頼者を裏切ることは滅多にないらしい。
もし一度でもそんなことをすると、その組織に仕事を依頼する者は誰もいなくなるし、報復措置を受ける可能性もあるから、とか……。
確かに、そんな組織に裏の仕事を依頼する者は、大半が金持ちか権力者だろうからなぁ……。
でも、まぁ、商品の一部を中抜きするくらいのことは、平気でやるそうだから、それを防止するために、お目付役が必要なのだろう。
ゴロツキ連中では、御者として潜入することはできないだろうし。
あ、正規の御者がひとり怪我をしたのは、勿論、この連中の仕業だとか……。
そうそう都合良く欠員が出たりしないよねぇ。
まあ、そういうわけで、この連中は、裏稼業やチンピラ、ゴロツキとかではあるけれど、本職の盗賊というわけじゃないらしい。
……でも、今回で立派な盗賊になったのだから、何の減刑理由にもならないけどね、そんなコト。