作品タイトル不明
386 あれ? 5
おそらく、レイコも恭ちゃんを止めないだろう。
見せしめ。教育的指導。
こういう連中には、そういうものが必要だ。
こんなに王都の近くで襲われた。
荷を受け取った翌日に。
ひとりだけ縛られることなく、盗賊の側にいる御者。
なぜか降伏したのに痛めつけられている商隊の 指揮官(リーダー) 。
うん、分かりやすいよね。
……とおぉぉぉっても、分かりやすいよねええぇぇ……。
でも、今回は私の出番じゃない。
親友である 私(カオル) を助けてくれた、お人好しの商人。
自分の店の、取引相手。
自分達の計画の、協力者。
そして商売談義とかで話が合うのか、恭ちゃんとかなり仲良くなったダルセンさん。
年齢にそぐわないキラキラした眼で、恭ちゃんに自分の夢を語っていた、ダルセンさん。
多分恭ちゃんが『護るべき、身内』と判定しているであろう、ダルセンさん。
……そのダルセンさんに、危害を加えた。
どうせ拉致するつもりなのであれば、こんなところで商隊の 指揮官(リーダー) を痛めつける必要などあるはずがないのに。
それは、全くの、不必要な行為だ。
……そう、ハーグ陸戦条約で言うところの、『不必要な苦痛を与える』ってやつだ。
恭ちゃんは、多分、怒っていた。
すごく、怒っていたはずだ。
だけど、今は無表情。
ということは……。
……せかいがはめつする……。
そして、艇体に装備された拡声器から、恭ちゃんの声が流れた。
『……オロカモノメ!』
* *
「な、何だ、あれは!」
突如、上空に現れた謎の物体。
それが自分達の頭上近くに接近してきたかと思えば、大きな声が響いた。
『オロカモノメ!』
「「「「「「うわああぁ、喋ったああァ!!」」」」」」
空を飛ぶ魔物は、色々といる。
飛竜(ワイバーン) 、ハルピュイア、マンティコア、グリフォン、その他諸々……。
中には、伝承に出てくるだけで、実際の目撃証言のないものもあるが……。
しかし、それらの中には、人間の言葉を喋るものなどいない。
もしいるとすれば、それは伝説の中にだけ存在するという超越種、無敵の存在である、古竜くらいである。
だが、今、空を飛び人語を操るものが現れた。
外見もサイズも、明らかに古竜とは思えないものが……。
そしてそれが、自分達に対して叱責の言葉を放った。
犯罪行為を行っている、自分達に対して。
……ということは。
まさか。
まさか、そんなことが……。
ずび!
「……え?」
空に浮かんだものから、一条の光が放たれ、……仲間のひとりの、両足が消えた。
斬り落とされたとか、潰されたとかではない。
じゅっ、と……。
ただ、 消えた(・・・) ……。
どさり……
両足を失った仲間の身体が、地面に倒れた。
まだ、自分の身に何が起きたのかが分からず。
そして一瞬のうちに消えた両足の痛みをまだ感じていないのか。
自分がなぜ倒れたのか分からず、何度も立ち上がろうとして、なぜ立てないのかが分からず。
……そして遂に、自分が立ち上がれない理由を悟り、ようやく身体が痛みを認識し……。
「ぎゃああああああぁ〜〜!!」
言葉が通じるはずなのに。
意思の疎通ができるはずなのに。
何の交渉もなく。
何の説明もなく。
何の警告もなく。
……ただ、一方的に攻撃されただけ。
仲間達の多くは、まだ自分達が攻撃されたことに気付いていない。
その攻撃が、あまりにも静かで、あまりにも予想外のことであったため……。
そして、本来はその攻撃は目には見えないものであるが、 分かりやすいように(・・・・・・・・・) と、わざわざ目視できるように可視化されたものであることなど、知る由もなかった。
ずび!
どさり……
そしてまた仲間のひとりが両足を失って倒れ、ワンテンポ遅れて絶叫が上がる。
「あ……、あ……、や、やめ……」
ずび!
「やめ……、て……」
ずび!
「くっ、悔い改めます! 今までの罪を償って……」
ずび!
「おっ、お願いします! きっ、聞いてください!!」
ずび!
「返します! 馬車も、積荷も、全て返します!!」
ずび!
「お願い、き、聞いて……」
ずび!
「あああああああああ〜〜!!」