軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

353 伯爵家 2

「陛下、大変でございます!」

「何じゃ、そんなに慌てて……、ま、まさか!」

「はい、みつ……自由巫女様の件でございます!」

国王の執務室に、ノックもせずに飛び込んできた財務大臣に、最初は怪訝そうな顔をしていた国王が血相を変えた。

そして財務大臣は、国王が予想した最悪の事態を知らせる言葉を口にした。

「自由巫女様が、先代の御使い様と同じく、多くの宗教書に書かれております通りに病や怪我に苦しむ市井の者達に『女神の涙』を与えての救済活動を行われており、それが平民達の間で噂に……」

「……何じゃ、脅かしおって……。

いや、それだと平民達の間に新たな御使い様が生まれたことが広まり、そのうち貴族や有力商家の連中にも知られることになるであろう。

確かに、 早急(さっきゅう) に手を打たねば大変なことになるやもしれぬな。よくぞ早期に情報を掴んだ!」

国王がそう言って財務大臣を 労(ねぎら) ったが、財務大臣はそれを無視して、報告を続けた。

「そして、自由巫女様から『女神の涙』を騙し取ろうとした者達が病人に関する虚偽の情報を流し、自由巫女様と接触しました」

「ぎ……」

「そして自由巫女様から『女神の涙』を騙し取った後、巫女様の正体と住居を掴むべく尾行。

その後、護衛の方達と交戦……」

「ぎゃあああああああ〜〜!!」

「当然のことながら、一瞬のうちに壊滅して、ひとり残らず警備隊本部に投げ込まれました……」

「ぎ……、それで、みつ……自由巫女様は!」

「指一本触れられることなく、御無事です」

「なっ、ならば……」

「はい。『女神の愛し子』は、何らの危害を受けたわけでもなく、愚かな者共に制裁をお与えなされただけ。つまり……」

財務大臣の説明に、顔色が戻ってきた国王。

「自由巫女様は、お勤めを果たされただけであり、悪党共をバッタバッタと薙ぎ倒し、スカッとされて御機嫌なのでは……」

「はい、その確率が高いものと思われます。つまり、それは……」

「「女神様は御不快には思われない!!」」

ふたりの声が揃った。

「……助かった……。護衛に雇われたというふたりのハンターよ、感謝するぞ……。

護衛依頼を終えたら、褒賞と、望むなら騎士見習いに取り立ててやろう」

そんなことを言う国王であるが……。

「まぁ、おそらく騎士見習いの件は辞退するでしょうな。

何せ、腕の立つハンターというものは……」

「「夢と自由は手放さない!」」

「ふは……」

「ふはははははは!」

国王と財務大臣、結構仲良しそうであった。

「それで、その詐欺師共は……」

「巫女様のお楽しみの邪魔をしてはなりませぬ!」

「あ……、うむ。そうだな。うむ、その通りだ……」

そして、この件に関しては、一切手出しはしないと決めた、国王達であった。

* *

「『女神の涙』の納品依頼を出した貴族について、大まかな事情が分かりました」

今の『女神の眼』で諜報部門の第一線で働いている連中……、つまり、今、 王都(この街) に前進活動拠点を作っているチーム……のリーダーがやって来た。

「……聞こう」

いや、こういう、偉そうな感じで言ってやると喜ぶんだよ、コイツら……。

普通なら、『どんな感じ?』とか言うトコなんだけど、私達のために無償で働いてくれているのだから、少しでも期待に応えてやりたいと思うんだよ。

サービス、ってやつだ。

勿論、言葉だけではなく、いい働きをしてくれた時には『女神の涙』ほどじゃないけどかなり効くポーションとか、お守り……いざという時に口に含んで噛み砕けば、中からモノホンの『女神の涙』が流れ出るヤツ……とかをあげている。

お金なんかは絶対に受け取らないけど、そういった品物の下賜は、大喜びで受け取ってくれるのだ。

……でも、連中、『勿体なくて、使うなんてとんでもない! 家宝として、死ぬまで大事に……』とか言いやがるんだよなぁ……。

使えよ! 使わずに死んだら、意味ないじゃん!

さてはテメー、最後までエリクサーを使わずに取っておくタイプだな!!

そして、あまり大したことのない成果の時には、地球のお菓子やお酒とかをあげている。

ポーションとして出したり、恭ちゃんの母艦で作ったり、ここの食材で私が普通に作ったりしたやつだ。

前世(むかし) はレイコも恭ちゃんも料理は私より 下手(へた) だったくせに、今は私より 上手(うま) いのだ。主婦生活が長かったからだってさ! くそ……。

いやいや、今はそんなことより、報告を聞かなくちゃ……。

「依頼を出したのは、ヴォーレル伯爵です」

「……ん? ちょっと待って。何か聞き覚えがあるな、その名前……」

「ほら、 一角獣(ユニコーン) の角の依頼を出した貴族よ」

横から、レイコがそう教えてくれた。

「あ……」

確かに、どの高難度依頼を受けるかの検討会を開いた時に、依頼人は貴族だから踏み倒しはない、とかいう話になった時に、名前が出たんだっけ……。

「特に問題のない、普通の貴族だという話だったのに……。

でも、 一角獣(ユニコーン) の角、そして『女神の涙』と、連続して私達に関わってきたということは、やはり何らかの意図があって……」

「いえ、 一角獣(ユニコーン) の角の件は、出されていた依頼を私達が受けただけだから、向こうにはそんな意図はなかったんじゃないの?」

「あ……」

確かに、レイコが言う通りだ。

あの依頼を受けたのは、たまたまそれが在庫として私達の手元にあったからだ。

でないと、どこにいるかも分からない 一角獣(ユニコーン) を探すなんて依頼、私達が受けるはずがないよ。

あれは、以前私達KKRの3人で素材集めツアーで他の大陸に出掛けた時に手に入れたものだ。

勿論、移動は恭ちゃんの搭載艇で。

ちょっとした、親睦のための小旅行だったんだよね。

「……そして、ヴォーレル伯爵家の状況ですが……」

私とレイコの会話をスルーして、リーダーが報告を続けた。

おそらく、私の疑問への答えがその中に含まれているということなのだろう。

「娘が難病に 罹(かか) り、お金を惜しむことなく、 形(なり) 振り構わず医師や薬師、薬草や薬品を集めまくる。

長命丹を飲ませても回復の 兆(きざ) しなし。

大枚を 叩(はた) き、ようやく手に入れた 一角獣(ユニコーン) の角も効果なし。

最後の手段と、駄目元で『女神の涙』の入手に対し莫大な報奨金を……。

そして、奇跡的に手に入った『女神の涙』を病気の娘に飲ませたところ、下痢が止まらなくなり病状が急激に悪化。

偽の『女神の涙』を売りつけた者は捕らえられて邸の地下牢に。

もし娘が死ねば、……詐欺師共は簡単には死なせてもらえないであろうと思われます……」

「……ぎ」

「ぎ?」

「ぎゃあああああああ〜〜!!

レイコ、緊急出撃!! 恭ちゃんは留守番!

今すぐ、その伯爵家に案内して! 早く! さぁ、行くよっっ!!」

全てを完全に理解し、駆け出す『女神の眼』のリーダーと私の後に続く、レイコ。

アポなしで貴族家に押し掛けるには、私のポーション能力ではなく、レイコの魔法の力が必要だ。

「……へ? いや、何? どういうこと?」

恭ちゃんはよく分かっていないらしいけれど、とにかく自分は留守番をしていればいいらしいということだけは理解した様子だから、問題ない。

そして、何も指示されていないけれど、護衛として当然の如く私達についてくる、ファルセット。

まぁ、当たり前か……。

とにかく、私のせいで女の子が死にそうなんだ、一秒でも早く行かなくちゃ!

「レイコ、お願い!」

「分かった! 体力ブースト魔法!! 明日の筋肉痛は覚悟してよ!」

「……それくらいのこと……。

可愛い女の子のためならば、筋肉痛も生徒指導室も、怖くない!」

「「それが我ら、KKR!!」」