軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

339 鳥と犬 5

『……私が、女神カオルである!』

『おおおおお〜〜っっ!!』

ここは、マリアルの配下の者達が借りている、以前貴族の王都邸だった邸である。

……そこの、中庭。外部からは見えないし、多少の声は聞こえない。

多分、今の犬達の雄叫びは丸聞こえだっただろうけどね!

そう。

約束通り、犬や鳥達に現状説明のために来たわけだ。

マリアルのところから出発する時点で、それまでの経緯とそれからの予定はマリアルから説明されていたはず。

なので、今はそれ以後の状況と、これからどうするかを説明するのだ。マリアルの配下の者から頼まれた通りに、プラス私の都合が良いように……。

説明の内容は、こんな感じ。

私が、マリアルや先祖の犬、鳥達から伝えられているであろう伝説の女神、カオルである。

マリアルと同じく動物の言葉が分かるので……というか、マリアルにその能力を与えたのは私である。困った時には、相談に来てもいい。

マリアルは、みんなには配下の者達と協力して私を護ってもらいたいと思っているらしい。

でも、私は女神様だから、ひとりでも大丈夫。

みんなは、休暇だとでも思って、のんびりしていてね。

でも、たまに調査や威圧、威嚇とかのために仕事をお願いするかも。その時はよろしくね。

あと、遊びに来るのはいいけれど、一度に大勢で来て、他の人間に怪しまれるようなことは絶対にしないように。数匹の 人懐(ひとなつ) こい犬がじゃれている、という程度に抑え、他の人間にもじゃれて、私だけが特別に見えないようにすること。

……私が女神だということは、他の人間達には秘密だよ。

今、犬しかいないのは、鳥達には犬の言葉は分からないから。

犬が終われば、その次にほぼ同じ話を鳥達にも繰り返す。

……勿論、鳥の言葉で。

* *

犬と鳥達への説明を終えた。

私が色々な顔に変装することを伝えると、犬達は『匂いで分かるから問題ない』、鳥達は『オーラで分かるから問題ない』って言ってた。

犬達が言う、『匂いで分かる』は、まぁいい。

……でも、鳥達が言う『オーラ』って何だよ、『オーラ』って!!

人体から生体電流による電磁波か何かが出ていて、それがひとりひとり違うのか? 波形や周波数とかが……。

そして、それを感知できるのか、鳥!!

はぁはぁ……。

いや、確かに、伝書鳩は地磁気を感知して巣に戻る、という説があるけれど……。

まぁいいか、気にしないことにしよう……。

そして、私と会え、使命を賜ったことに感動しているらしき、犬と鳥達。

う〜ん、そんなに喜ばれてもなぁ……。

雇っているのは私じゃないから、そんなに用事を頼んだりはしないよ。緊急時だけだ。

……でも、犬や鳥を自由に使えたら、便利かも……。伝令や、調査とかに。

だけど、余所の配下である犬や鳥をしょっちゅう勝手に使うのは申し訳ないから、ここの地元の犬や鳥に声を掛けて、私が直接雇う形で手伝いを頼もうかな……。

ま、今日はこんなとこでいいか!

* *

「……あ、あの、カ……エディス様、実はお願いが……」

「ん、何?」

宿に戻ったら、何やら、ファルセットが緊張の面持ちで話し掛けてきた。

「わ、私めに、しっ、神剣を授与していただきたく……、あの、その……」

あ〜、フランセットの奴がエクスグラムを渡さなかった、って言ってたなぁ、確か……。

あの時にファルセットが愚痴っていた通り、そういう時には『我に代わって、この神剣エクスグラムで女神様をお護りするのだ!』とか言って渡すものだよなぁ……。

そりゃ、ファルセットが愚痴りもするわ……。

しかし、フランセットが神剣を貰ったのは、身を挺して王兄ロランドを護り、そして自分の剣が折れてしまったからだ。

なのに、まだ何の功績も挙げておらず、そして自分の剣が折れてもいないのに女神様に神剣を要求するというのは、さすがに図々しくて恥知らずな行為だと思い、恥ずかしくてまともに喋れなくなっているのだろう。

しかし、いくら恥ずかしくても、神剣は欲しい。

……うん、その気持ちは分かるよ……。

う~ん、どうしようかなぁ……。

いくら一部に過ぎないとはいえ、あのフランセットの力を濃く受け継いだのであれば、本気で全力を出せば普通の剣では耐えきれないかも……。

そして、いくら強くても、戦いの 最中(さなか) に剣が折れれば、あの時のフランセットのように、不覚を取るかも……。

まだ若いのに、私を護ろうとして死なれたのでは、寝覚めが悪い。

それも、まともな剣を持っていれば避けられたはずのこととなれば……。

う〜む……。

仕方ないか……。

「承認!」

「……え? えええ? えええええええ〜〜っっ!!」

何だ、本当に要求が通るとは思っていなかったのか?

まぁいいや……。

「 女神の守護騎士(エインヘリヤル) が持つにふさわしき剣を与える! 出(い) でよ、神剣、クラウ・ソラス!!」

そして、手の平を上にして前方に突き出した私の両手の上に現れる、一振りの剣。

「おおおおおおおおお〜〜っっ!!」

ファルセット、歓喜の絶叫!

いや、そりゃ嬉しいわなぁ……。

一族の始祖である、大陸の守護者、絶対英雄、勇者フランセットに次ぐ、一族でふたりめの神剣授与者になったわけだから……。

あ、エクスフロッティをあげた、あの4人の近衛兵は別にして、ね。

彼らはフランセットの一族、子孫ってわけじゃないから。

「それは、フランセットが持っているエクスグラムとは少し違うよ。

強度はアレと同じくらいだから、ファルセットが全力で振ったり、少々無茶な使い方をしても大丈夫。剣の腹で打つ平打ちとか、姿勢が崩れておかしな角度で敵の剣を受けたりしても、まぁ、折れることはないと思う。

血糊は 弾(はじ) くし、あまり手入れをしなくても切れ味は落ちない。

でも、超高速振動機能はないよ。

あれを付けると、相手の剣もスパスパと切っちゃうから、ファルセットの鍛錬にならないからね。

それに、私を護るには、それじゃマズいでしょ。

……なぜだか分かる?」

「カ……エディス様に向かって振り下ろされた剣を私が横から剣を振るって受け止めた時、敵の刀身が切断されると、切り落とされた先端部分はそのままエディス様に向かい、そして下の部分も敵の手に握られたまま、エディス様に振り下ろされる……」

「うん、良くできました!」

そうなんだよねぇ。ただ、敵の剣を切断すればいいってものじゃないのだ。

フランセットは熟練の剣士だったから、そういう特性をよく理解して、うまく使いこなしていたんだ。剣身の側面、腹の部分で受けたり、弾いたりしてね。

でも、実戦経験が少なそうで、超高速振動機能というものをよく理解していないファルセットだと……。

……あ!

もしかすると、フランセットがこの子にエクスグラムを渡さなかったのって……。

……いや。

フランセットが、そんなに頭がいいわけがない!

おそらく、自分が神剣を手放したくなかっただけだな、絶対!

「あの、『四壁』と呼ばれていた元近衛兵の4人が持っていた、神剣エクスフロッティ。あれとほぼ同じ、と考えてもらっていいと思う」

「おお! エクスフロッティなら、試技を見せていただいたことがあります! 『四壁』の皆様ではなく、神剣を受け継いだ子孫の方によるものでしたが……。

エクスフロッティでも、達人が使えば相手の剣身を切り落とすことが可能とか……。

わたくしもその域に到達できるよう、精進致します……」

うん、まぁ、頑張ってね。