軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

338 鳥と犬 4

いやいや、まだ マリアル達(この連中) にも、他の勢力にも、『リトルシルバー』のことはバレていないはずだ。

そして、レイコと恭ちゃんのことも……。

恭ちゃんは存在すら知られていないし、レイコは私にタメ口で喋っているけれど、私が身近な者に敬語で話されるのはあまり好きじゃないということは多分昔の記録に残されているだろうから、私の仲良しだとは思っても、まさか同格の女神様だとは思うまい。

バレているのは、野良巫女エディスとしての私の行動と、そのエディスが私、カオルだということだけだ。

そして連中が本気で、全力で護ろうとしているのは、私だけ。

そりゃ、私の周りにいる者も、護ろうとはしてくれるだろう。

……私の不興を買わないように。

でも、掠り傷を負いそうな私と重傷を負いそうなファルセットがいた場合、コイツらは私の方を護ろうとするだろう。

なので、『リトルシルバー』に何かあった場合のための盾として使えるかというと……。

いや、私がそう求めれば、引き受けてくれるとは思うよ、『リトルシルバー』の警備役。

……でも、孤児達の護衛を命じていても、私が危険だとかトラブルに巻き込まれたとかいう情報を得た途端、孤児達を放置して私のところへ向かいかねない。

敬虔な信徒であり狂信者である連中が、女神からの命令を無視するのかって?

いや、狂信者というのは、『女神様をお護りするためならば、その命令に 背(そむ) き、地獄に落ちることになっても後悔しない。それこそ、 本望(ほんもう) である!』っていうような連中なんだよ。

……『狂信者』っていうのは、そういうものなんだよ! 普通の信者とは違うんだよ!

伊達に『狂』の字がついているわけじゃないのだ……。

それに、私は本人達の自発的行為ではなく私の命令でそういうことをやらせるのは、好きじゃない。

自分が命を懸けてやり遂げる仕事は、他者からの命令ではなく、自分で選ぶべきだ。

私を女神様と崇めて狂信者のような行動をされるのも嫌だというのに、女神としての立場でそんな命令を出すのは、絶対に嫌だ……。

ま、とりあえず……。

「鳥と犬達には、会います。指示の通訳もしてあげます。

……但し、どうしても必要な時以外、人間は私に接触せず、連絡要員の犬か鳥に、伝えたい指示を書いた紙を持たせなさい。もし他者の手に渡っても問題ないように、文面に充分気を付けるか、暗号を用いるとかして……」

暗号であっても、私には普通に読めるから問題ない。

あらゆる言語の(・・・・・・・) 読み書き(・・・・) が可能なのだから……。

「分かりました。本当はお側でお仕えしたいのですが、それをお望みではないことは承知しております。

……但し、もし助力が必要な時は、どうか御遠慮なく私共をお使いくださいますように……。

そして、私共が『必要である』と判断しました場合には、遠慮なく介入させていただきます」

え?

「いや、そんな必要は……」

「介、入、させていただきます!」

「……あ、うん……」

駄目だ、こりゃ。

いくら言っても無駄だ。エミール達も、こんな眼をしている時には、何を言っても無駄だったよ。

私にできることは、ただひとつ。

コイツらに、介入が必要だと思わせるような事態にならないようにすることだけだ。

……面倒くさいなぁ……。

* *

会談は、無事終了した。

マリアルの配下は、話が分かる連中で、助かった……。

エミールの配下の者達も、多分大丈夫だろう。

エミールと『女神の眼』のみんなは、レイコと恭ちゃんを除けば、この世界で私のことを一番よく理解してくれている連中だからね。

伊達に何年も一緒に暮らしていたわけじゃない。

だから、まだ大半が生き残っている『女神の眼』のみんなが教育しているであろう配下の者達が、私の意に染まぬこと、私が嫌がることをするはずがない。

「問題は、アリゴ帝国の連中か……」

そう。 悪気(わるぎ) は全くない……というか、好意マシマシなのだろうけど、連中は私との距離感が少しおかしいらしいのだ、 第一シーズン(アイテムボックス前) の時のこととか、バルモア王国王都の図書館で調べた資料とか、さっきマリアルの配下の者達から聞いた話とかから考えると……。

昔の、侵略戦争直後には、色々とあった。

侵略軍との戦いでは、大勢のアリゴ帝国兵士が死に、多くの未亡人や孤児が発生した。

いくらその原因がアリゴ帝国の侵略行為だとはいえ、それが頓挫しアリゴ帝国側に多くの犠牲者が出た主因は、私の存在、私の行為だ。

……そりゃ、遺族には恨まれ、憎まれるだろう。

そして身内に死傷者が出なかった者や、アリゴ帝国が財政的に行き詰まっておりどうしようもない状態であったことを理解していた者達は、講和会議における温情と西方にある大きな島の情報提供、そして新型の外洋帆船の建造支援等で、私のことを御使い様と、そして後には女神様だと信じ、感謝し崇拝するようになったんだよねぇ。

つまり、アリゴ帝国の臣民は、『カオル』という人物に対して強烈な敵意を持つ者達と、強烈な好意を持つ者達とに、大きく2分されていたんだ……。

でも、あれから70年以上経った今、身内を殺された当事者達の殆どは鬼籍に入り、今生きているのは、アリゴ帝国奇跡の大躍進時代に生まれ育った連中だ。

講和会議における慈悲、ナガセ型外洋帆船の建造支援、その他諸々の、『アリゴ帝国の復興は、全て女神カオル様のおかげである』という教育を受けて育った……。

この世界では、女神は信仰上の架空の存在ではなく、たまに顕現して大規模災害を予告してくれたり、悪党を国ごと滅ぼしたりする、ありがたくもあり恐ろしくもある、実在するものなのだ。

そして『女神カオル』は、セレスに較べるとかなり温厚であり、周囲の無関係の者に対する被害が少ない。

……そりゃ、熱心な信者が減らないわな……。

「カオル!」

『カオルちゃん!』

「あ、ごめん。ちょっと回想に入ってた……」

いかんいかん、今は3人で会議(恭ちゃんはリモート参加)……というか、今日のマリアルの配下との接触について恭ちゃんに報告しているんだった。

さすがに、こんな重要なことをみんなで情報共有しないわけにはいかない。

特に、恭ちゃんが情報不足のまま暴走した場合、……せかいがはめつする……。

なので、恭ちゃんにもしっかりと状況を伝え、『何かあった時には、ひとりで勝手に動かずに、まずみんなに相談する』ということをきちんと刷り込んでおかなきゃならないんだ。

……世界の平和のために……。