軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

340 防衛態勢 1

「護衛を用意しようかと思う」

「まだ、これ以上?」

私の提案に、レイコが呆れたような顔をしている。

「私の防御魔法と攻撃魔法、カオルの爆発ポーションと治癒ポーション、恭子から貰った 超小型ビーム武器(ぶきにみえないやつ) 、そして身体強化魔法なしでも超人的な反射神経で矢だろうが投槍だろうが叩き落とし、物陰からの奇襲にも対応できそうなファルセットがいるというのに?

そして時間に余裕があれば、空から宇宙戦闘機、搭載艇、そして母艦が……」

……まぁ、レイコが言う通り、確かに過剰戦力だとは思うよ。

でも、奇襲に対してコンマ数秒で反射的に対応できるのが近接戦闘特化のファルセットだけというのは、ちょっと 心許(こころもと) ないんだよねぇ。

だから……。

「攻撃力や防御力じゃなくて、警戒探知と 咄嗟(とっさ) の初撃対処能力を増強する!」

「ああ……」

うん、レイコにも分かったみたいだ。

「「犬と鳥!!」」

そう。

マリアルの配下ではなく、私達が自由に使えるもの。

もふもふでふわふわ。

私達直属の、犬と鳥を用意するのだだだ!

マリアル配下の犬や鳥達に知られれば、猛烈に反対されそうだな。

ここは、連中には秘密裏に進めなきゃならないだろう。

……どうせ、すぐにバレるだろうけど……。

まぁ、準備段階で邪魔が入らなければ良しとしよう。

余所の戦力を当てにしたり、ずっと借りっぱなしとかいうわけにはいかないからね。

「普段は今まで通り自由に行動してもらい、シフト勤務での当番の日は、私達から少し距離を取って、不審人物の警戒に当たってもらう。あと、追跡して相手の 住処(すみか) や仲間達との接触場所を見つけてもらったり……。

普段たむろするのは、……借りてる、あの家を使おうか。町外れだし、庭も結構広いし……。

マリアルのところみたいに、何十頭もの犬が常駐するってわけじゃないんだ。十数頭が交替制で、同時にいるのは数頭ずつなら、問題ないよね」

あの、クルト商会の件で急いで借りて、結局その時には使わなかった借家だ。

私とレイコ、そしてファルセットの3人で住む……、いや、 使う(・・) なら、宿屋ではなくあそこに移った方がいいだろう。

宿屋だと深夜の出入りに不便だし、しょっちゅう王都を不在にするから宿で部屋を借りっぱなしというのもアレだし、満室で宿屋難民になるのも嫌だ。

それに、私とレイコが同室でファルセットだけ別の部屋、というのも、可哀想だし。

あ、『住む』ではなく『使う』という表現に拘ったのは、私達が住んでいるのはあくまでも『リトルシルバー』であり王都は一時的な滞在場所に過ぎない、ってスタンスだからだ。

子供達が住む、私達の本拠地は、あそこ。

決して、権謀術数の渦巻く王都なんかじゃない。

もし本拠地を移すことになったとしても、それは王都ではなく、どこかの田舎か無人島あたりだ。

……できれば、海に面したところ。

勿論、この国以外も候補になる……というか、リトルシルバーを引き払って移住しなきゃならないという時点で、この国から出なきゃならない状況だろう。

場合によっては、無人島か他の大陸へ、という選択肢もある。

恭ちゃん、私達と合流する前、他の大陸を渡り歩いていたらしい……、って、それは私とレイコを捜し回ってくれていたんだった。

セレスの奴、何も別の大陸に降ろすことないじゃん! あのヤロウ……。

「よし、恭ちゃんも早く呼んで、4人態勢にしよう!

……それと、新居の地下にも秘密基地を作ろう! ここから引っ越す時には埋め戻せばOK!」

うん、アイテムボックスで地下を空洞にする時、収納した土塊をそのまま保存しておけば、埋め戻す時にそれをそっくりそのままスッポリと嵌め込めばいいから、楽ちんだ。

* *

『ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、話を聞いてくれない?』

『……?』

私が話し掛けると、頭を上げてキョロキョロと周りを見回し、はてな、というふうに首を傾げた、一匹の野良犬。

『私だよ、私!』

『うわあああ! 喋ったアアアアァ!!』

……いや、まぁ、そっちから見ればそうかもしれないけどさぁ……。

とにかく、河原にいた野良犬……放し飼いの飼い犬である可能性もあるが……に話し掛けたのだ。

勿論、犬の言葉で。

『私、この世界の女神の友達なんだ。このあたりを仕切っているボスに繋ぎを取ってくれない?』

『へへぇ、御案内いたしやす!』

まあ、犬の世界にはアポを取るとかいう習慣はないか……。

* *

『……で、 人間の神様(・・・・・) が俺達に、どういう御用件でございやしょうか?』

このあたりの犬のボスに会ったところ、不信感バリバリで、そう尋ねられた。

あ〜、そりゃ、警戒するか……。

魔物の神様を自称する、見た目が普通の魔物と変わらない怪しい奴が人間のところに突然やってきて、話がある、とか言われたら……。

まず、その神が守護している生物にとって都合が良い話、つまり自分達にとっては不利な話を神の名の許にゴリ押ししてくる、と思われるよねぇ……。

犬にとっての 良い話(・・・) を持ってきてくれるのは、犬の神様だろう、そりゃ。

『いや、神に決まった姿はないよ。そして、種族ごとに担当が決まっていたりもしないよ。

人間を相手にする時は人間の姿、犬を相手にする時は犬の姿をとるだけで……。

今は、人間の間で行動しているからこの姿を取っているだけだよ。

そして今回持ってきた話は、みんなにとっての 良い話(・・・) だよ』

『……詳しく!!』

* *

案内してくれた犬は野良だったけれど、このあたりのボスは、飼い犬だった。

飼い犬とは言っても、別に一日中鎖に繋がれているわけではなく、自由に動き回っている……、いわゆる 放し飼い(・・・・) というやつだ。

日本では、昔はともかく、私が死んだ頃にはとっくに犬の放し飼いは条例で禁止されていたけれど、ここじゃ放し飼いは普通のことだ。

……勿論、人に噛み付いたりすれば飼い主が罰せられるし、犬が襲われた人に反撃されて殺されても、文句は言えない。

そしてなぜ飼い犬がボスをやっているかというと、充分な餌と番犬や猟犬としての訓練のため、体格が良くて強いかららしい。

強くなくては、縄張りや手下達を護れない。

更に、親を失った仔犬や、怪我や病気の犬に自分の餌を分け与えるとかの、人格……『犬格者』らしいのだ。

そういうのは、余裕のある者にしかできない。

だから、日々の食べ物に苦労し、痩せ細った野良にはボスの役目を果たすことは難しいのだろう。

とにかく、このボスは縄張り内に住む犬達に対して面倒見が良いらしく、人望……、『犬望』があり、慕われているらしいのだ。

そのボスにとって、私が示した条件は到底看過することができなかったようだ。

……そりゃ、まぁね。

野良に対する、充分な食べ物の支給。

怪我や病気の治療。

出産や子育ての支援。

居場所を失った者の保護。

どうしても飼い主に伝えたいことがあれば、その伝達。

そう。昔、マリアルの件で募集した時の条件に、更にサービスを追加したのだ。

その結果……。

『是非とも、雇用契約を!!』

うん、そうなるわなぁ……。

『じゃあ、私達の直衛に数頭、家の警備……普段はただ庭で寝ているだけ……を数頭、ローテーションで回して。

あ、飼われている者は、御主人様の家の警備や 主(あるじ) 一家の護衛、その他そっちのお役目を優先すること! 私達はずっとこの街にいるわけじゃないし、御恩のある主一家を裏切れないでしょう?』

『へ、へい、その通りで……』

『それに、たくさんの飼い犬が急にしょっちゅう姿を消すようになったり、その姿がうちの周辺で目撃され続けたりするのはちょっとマズいからね。

だから、飼い犬はローテーションから外したり、うまく計らってね。

あ、揉め事を起こしそうな者には声を掛けないでね。

食事は朝と昼、1日に2回。水は綺麗なのがいつでも飲めるようにしとく。

とりあえず、怪我と病気の者をうちに寄越して。弱ってる仔犬も。

治療に関しては、遠慮は無用。食事については、ある程度の要望は聞く。肉は脂身が欲しいとか、赤身の方がいいとか……。

但し、オーク肉は嫌だ、牛肉が食べたい、などという贅沢は駄目!』

……まあ、たとえ貴族のペットであっても、そんな贅沢を抜かすような犬はいないか。

『へへぇ〜っ!!』

よし、信頼の置ける護衛、ゲットだぜ!

遠くから匂いや音で接近を先制探知。

素早い反応速度。

敵は犬の言葉が喋れないから、人質を取っても無意味。

剣を持った熟練兵士とかであればともかく、ナイフを持ったチンピラ程度であれば襲い掛かる成犬には 敵(かな) うはずもない。

……そして、買収されることも、裏切られることも絶対にない。

犬の言葉が分かるのは、私達だけだから。

よし、次、行こう!