軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

333 奴らが来る 5

受付嬢に個室へと案内され、席に着いた4人。

「では、これよりコンペを開催します」

「「「……コンペ?」」」

「おふたりの優劣を 競(きそ) い、どちらが私からの依頼を受注するのにふさわしい人かを決める、ということです」

カオルの説明に、納得の表情を浮かべる3人。

レイコ……キャンはコンペくらい知っているであろうが、怪しまれないよう、他のふたりに合わせて知らない振りをしたらしい。

レイコは、そのあたりは 如才(じょさい) ない。

……いや、もしかすると、『急に何言い出してんだ、コイツ?』と、素の反応をしただけかもしれないが……。

そしてカオルは、戦闘力勝負だと万一のことがあるかもしれないため、面接というか口頭試問というか、とにかく口先勝負の審査に持ち込むつもりのようであった。

これならば、 試験官(カオル) の 贔屓(ひいき) が結果に直接反映されるし、カオルのことを知り尽くしているレイコが見ず知らずの少女などに 後(おく) れを取ることなど、まずあり得ない。

「では、まず、最初の質問です。

おひとりでオーガ4頭を倒せますか?」

「倒せる」

「倒せます」

ふたりの返事が揃った。

しかし、カオルは当然その返答は予想していた。

まずは、軽いジャブを繰り出しただけである。

「貴族の領軍一個分隊……、9名の兵士に襲われたら?」

「倒せる」

「倒せます」

これでは、優劣が付けられない。

さすがに、一個小隊40人を倒せるか、と聞くのは、あまりにも常識外れである。

それでも、キャンと少女だけであればそう聞くのもアリかもしれないが、ここにはギルドの受付嬢がいる。

なので、カオルは質問の傾向を変えた。

「私達の馬車と、あとに続く商人の荷馬車がオーガの群れに襲われました。どちらを助けますか?」

「両方」

「オーガの群れを殲滅するので、関係ない」

「…………」

「私と見知らぬ幼女、両方が同時に襲われたら、どちらを優先して助けますか?」

「「幼女!!」」

キャンと少女の声が揃った。

(くそ、そんなことだろうと思ったよっ!

……まぁ、いくら自分が雇った護衛だとはいえ、巫女が幼女より自分を優先して助けろ、なんて言うはずがないか……。

フランやエミール達と旅をしていた時にも、何度も言い聞かせていたからなぁ。私はポーションがあるしこの身体は仮のものだから、私よりレイエットちゃんとベルを護れ、って……)

そして、ファルセットは考えていた。

(カオル様からの出題は、聖典『カオル様語録』に記されているものばかり。

……やはり、私を採用できるよう、御配慮いただいているのだ……。

なのに、この女、しつこく食らい付いてくる……。

これでは、カオル様が私達のどちらがエインヘリヤルであるか判別に困られるであろう。

これ以上、カオル様のお手を煩わせるわけにはいかぬ。仕方ない、カオル様にだけ分かるように、私の正体を明かすか……)

「エディス殿、私の高祖母が、よろしく、とのことでございます」

今までの、騎士が平民に対して喋る時のような話し方ではなく、丁寧な言葉遣いに変えてそう切り出したファルセット。

現在、自分の年齢くらいの 玄孫(やしゃご) がいる年齢で生きている者など、殆どいない。

……女神の守護騎士、絶対英雄、鬼神フランを除いて……。

なので、こう言えば、自分が真祖様の血を引く者であることをお分かりいただけるはず。

そう考えての言葉であったのだが……。

「……え? ……あ、ああ、うん……」

カオルには、全く通じていなかった。

カオルは、フランセットがそんなに増殖していようとは思ってもいなかったし、そもそも、『高祖母』という言葉の意味を知らなかった。

……無理もない。現代日本を含めて、普通の者は祖父母、もしくは曾祖父母くらいまでが精一杯であり、『高祖父母』などという言葉を使う機会など滅多にないであろうから……。

日本ではこの世界より寿命が長いが、この世界に較べて結婚、出産の年齢が高いため、やはりファルセットくらいの玄孫を持つ老人は少ない。

(……コウソボ? 何か、私のことを知っている連中の手の者?)

カオルの警戒心が跳ね上がった。

そして、自分の言葉がカオルに対し思ったような効果を上げず、それどころか 却(かえ) って警戒させてしまったかの様子に、 戸惑(とまど) うファルセット。

(そう言えば、出発前の『対カオル様用の対処教育』で真祖様が言われていたっけ……。『カオル様は、変に頭が回る時もあれば、抜けていたり、かなり鈍い時もある。おそらく、何でも見通していては楽しくないから、普段は御自分の能力を大幅に制限して、知能を下げておられるのであろう』と……。

ならば、もっと分かりやすく……)

「私は、 女神の守護騎士(エインヘリヤル) でございます」

「えっ!!」

これで、決まった!

そう思ったファルセットであるが……。

「その称号は、フランセットにのみ与えたもの! その称号を詐称するたぁ、いい度胸してるじゃねーか!」

「……え?」

「えええ?」

「「えええええええ?」」

カオルの突然の激昂に、ぽかんと口を 開(あ) け、目が点状態のファルセットと受付嬢であった……。

* *

「……え? それじゃあ、今は『 女神の守護騎士(エインヘリヤル) 』っていうのはフランのことではなく、その血を引く一族全体を指す言葉になっていて、それが300人以上いるってこと?」

「はい。うちの一族は、なかなか死なない家系ですので……」

「…………」

あの、フランの血を引いた者。

そしてどうやら、フランの能力の一部が遺伝しているらしい。

その中でも、特にその血を濃く受け継いだらしき、この少女……。

あの後、渋る受付嬢を無理矢理追い出して、3人だけで話をしたカオル達。

そしてこの少女、ファルセットの説明によりフランセットの手の者であると判明した時点で、キャンもまたカオルの身内であると教え、本音の話をしたわけである。

カオルが不用意に口にした言葉を聞いてしまった受付嬢には、『その称号は、(大聖女カオル様が)フランセット(様)にのみ与えたもの』と言おうとしたこと、そして自分の宗派では『 女神の守護騎士(エインヘリヤル) 』はあくまでもその称号を大聖女様から直接任命されたフランセット様だけのものであり、いくら子孫であろうが、他者がその称号を名乗ることは許されないのだ、と説明し、うまく誤魔化した。

「そういうわけで、一族の若手の中では真祖様の血が最も濃いと言われております、私、『脳筋ファルセット』がこの栄えある任務を……」

ぶふっ!

思わず吹きだしてしまった、カオルとレイコ。

「ど、どうしてそんな二つ名を、そんなに誇らしげに告げるのよ……」

「え?」

カオルが言っている意味が分からず、きょとんとしているファルセット。

「この二つ名は、『信じることができるのは、鍛え上げた 己(おのれ) の筋肉のみ!』というのが家訓である我が一族の中で、真祖様から『お前の頭脳は、筋肉並みに信頼できるな』とのお言葉をいただいたのが由来です。なので、心から誇らしく思っておりますが……」

「褒め言葉かいっ! そして、フランが原因かいっっ!!」