軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

319 王都進出 2

「……というわけで、私とレイコもリトルシルバーを留守にしていたわけだけど……」

「リトルシルバーは、一週間くらいは私達が留守にしても大丈夫だからね。

でも、それ以上子供達だけにすると……」

「また、見捨てられたと思ってパニックに陥る……」

そうなのだ。

普段は異常なまでにしっかりしているのに、なぜか私達大人勢が全員いなくなると、精神的な脆弱性が出るんだよねぇ……。

ムーノさんのところの従業員に泊まり込んでもらったりもしたのだけど、私達3人の誰かが残っていないと駄目みたいだ。

これじゃあ、いつまで経っても自立させられないよ。

依存させすぎたかなぁ。

困った……。

「とにかく、王都では、前回確保した貸し家を拠点にするよ。落ち合ったり寝泊まりしたりするのは、あそこを使う。

……でも、都合によっては、宿屋に泊まったりもするけどね」

あそこは、王都の中心街からやや離れた、閑静な住宅街だ。

隣家からは少し離れており、深夜にステルス・無音モードで重力制御によりゆっくり降下する小型連絡艇なら、見つかることなく乗降できる……と思う。

どうしても必要な時以外は、やらないけどね。

普段は、少し離れたところにある森の中で乗り降りするつもりだ。適当な空き地を見つけて。

手頃な場所がなければ、作ればいいしね。……空き地。

広い森の中に、ちょっとした木々の切れ目があっても、そう不思議じゃないだろう。

「お店は?」

「まだ、時期尚早。本気でチート商品を並べれば一気に名が売れるし、一気に羽虫が 集(たか) ってくるから、それはある程度の自衛……他の有力者をバリアとして使うのを『自衛』と言っていいのかどうか分かんないけど、まぁ、そういうのを排除できるようになってからね」

恭ちゃんの質問に、レイコが眼鏡を直しながら、そう答えた。

「分かった!」

恭ちゃんも、別に急いで王都でお店を開きたいというわけじゃないのだろう。

あの町で開いている、自分が初めて持ったお店に執着があるだろうし、雇った従業員に対しての責任もある。

……いや、この国じゃあ、被雇用者の権利なんか殆ど認められていないから、その日に解雇を言い渡しても構わないし、退職金なんかも必要ないらしい。

まぁ、大店とかだと、慰労金だとか一時金だとかもあるらしいけれど、そんなのはごく一部だとか……。

少なくとも、零細商店にはそんなの関係ないらしい。

でも、恭ちゃんに、一度拾い上げた孤児達を突き放すような真似ができるはずないよねぇ。

恭ちゃんがあの店を手放す時は、多分経営権を孤児院に譲渡するだろう。

……恭ちゃんってのは、そういうヤツだ。

「それで、とりあえずの活動方針は?」

うん、恭ちゃんが聞いてきた、ソレが問題だ。

「お店は、良さそうな物件があるか確認するだけで、まだ何もしない。もし目を付けてた物件が売れても、気にしない。どの程度の物件が出回っているか、相場を把握するだけ。

王都にうちの商品を流すのは、しばらくの間はホークス商会本店を介して実施。

それによって、他の商会に手出しされないようにしつつ、商品の出元としてトレーダー商店の名前を売る。

ターヴォラス商会は、私達の本拠地であるリトルシルバーの所在地がバレないよう、この件には関わらせない。

あ、クルト商会……商会主が改心したところ……にも、少し商品を回してあげようか。

大店2店にあからさまに敵対しようとするところは、あまりないだろうからね。

ムーノさん達の雇い主だったレリナス商会は、スルー。ムーノさん達も、あの次男以外には別に怨みはないそうだし、次男は既に報いを受けているからね。

トレーダー商店は、あの町での小売りに関しては雇われ店長に采配を任せて、現状維持。

トレーダー商店がある町は王都から遠いし、あそこは町ぐるみで守ってくれるようなので、あまり心配なさそうだからね。

まぁ、あの店自体は、いくら調べられても何の情報も得られないから、従業員の身の安全さえ確保できればいいよ。商品くらい、盗まれたってどうってことないから。

恭ちゃんは、 特別(母艦製) 商品と 普通(この世界) の商品の仕入れと、王都の2店に卸すことを担当してね。あ、勿論、トレーダー商店の分もね。

レイコは、今、形だけの拠点にしている街のギルドやハンター達に挨拶して、『王都に拠点を移す』と宣伝してから、所属を王都支部に移す予定だよ。

レイコの特異性は、あの町のギルド支部やハンター達を通じて既に王都のハンターやギルド支部にも伝わっているとのことだから、そのまま評判を引き継いで、Bランク昇格を目指してもらう。

……勿論、 珍しいもの(・・・・・) の納入や、高ランクの魔物の売却とかで、急速に名を上げつつ……。

レイコは、王都に顔を出す時は借りてる家を使ってもらおうかな。

そして私は……」

レイコと恭ちゃんが、私の言葉を待つ。

うん、実はこれが一番難しいのだ。

ショボすぎれば、相手にされないか、キワモノ扱い。

そして一定のラインを越えちゃうと、大聖女か、下手をすると御使い様扱いで 第一シーズン(アイテムボックス前) の二の舞か、囲い込まれて軟禁同然に。

さては軟禁、玉すだれ! ……って、うるさいわっ!

とにかく、それを回避するためには……。

「女神の加護を、バージョンアップする!」

「「えええええ!」」

ふたりが驚くのも、無理はない。

当初の予定から大きく外れるからねぇ、それって……。

「いや、ちょっと無理があったんだよ、『ほんのちょっぴりの、女神の加護』っていう設定に……。

たとえほんのちょっぴりでも、女神……、セレスの加護があるとなると、それだけでもう『ちょっぴり』じゃなくなっちゃうみたいなんだよねぇ……。

神殿側にとっちゃあ、大聖女に祭り上げて、という恰好の神輿だし、貴族にとっても、女神の御寵愛を賜りし娘、ってことで、起こせる 奇跡(こと) は医師や薬師以下でショボくても、宣伝効果は抜群だから……。

もし何かあっても、セレスが私を護るついでに側にいる者達も護ってくれるかも、とかいう期待もあるかもしれないし……」

そう。あの町の領主様やその他の人達の不自然な行動は、そう考えたからに違いない。

それがこの世界の 地元の人々(じもピー) の標準的な考え方だとすると、現在の設定である『女神からほんのちょっぴりの加護を賜った少女』というのは、私が思っていたのとは違い、かなりのインパクトがある存在だというわけだ。

……そんなの、王都に入った途端、真っ直ぐに王宮か神殿に連れて行かれるじゃん……。

「いや、だって、3人のうちでこの世界のことに一番詳しいカオルが考えた設定だったよね?

何年もこの世界で暮らしていたのだから、そのあたりの読みは大丈夫、って言ってたよね?」

恭ちゃんがそんなことを言ってきたけれど……。

「ふっ、認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを……」

「「じゃかましいわっ!!」」

……怒られた……。

「……でも、加護が大きくなったら、ますますそれが酷くなるんじゃないの?」

恭ちゃんがそんなことを聞いてきたけれど……。

「いや、対外的な『ショボい加護しかない』っていう設定は、そのまま。

バージョンアップのお知らせは、ごく一部の人達にしか明かさないよ。

一般の人達にとっては、あくまでも私は『残念巫女』か『残念聖女』。

そして一部の権力者にとってのみ、『触るな危険』ということに……。

そうすれば、必要な時には『バージョンアップ版』の私のことを知っている上の方の人達が、私にちょっかいを出そうとした連中を牽制したり、阻止したりして、色々と手助けしてくれるはずだよ。

いよいよとなれば、悲しそうな顔をして、『またひとつ、大陸が海に沈む……』とか呟いてあげれば……」

「鬼かッ!」

「『ここもじき 深い海(ふかい) に沈む』みたいに言うなっ!!」