軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

320 王都進出 3

そういうわけで、路線変更!

野良巫女から聖女、そして大聖女になる予定だった私が、普段はぽんこつ野良巫女、そしてある時は女神の御寵愛を受けし聖女として、王都での……、いや、この国での影響力を保持するのだ。

「せっかく築き上げた野良巫女エディスの名声を無駄にするのは勿体ないからね。平民の間でのそのイメージは継続しよう。

そして、エディス、キャン、サラエットの3人は、互いに見知らぬ者同士。

元々、王都でも私達は互いに交流はないという設定で動き、そのうち何かのイベントで知り合い、交流が、っていう設定にする予定だったし……」

……そう、私達は元々の仲間同士ではなく、『最近ここで知り合っただけ』という体裁をとるのである。

最初から3人が仲間だったら、あからさまに怪しいもんねぇ……。

同年代で、特異な能力や珍しい商品を持つ少女達が、同時期に同じ国に現れる。

これで関係を疑わなきゃ、馬鹿だよねぇ……。

なので、3人の出会いのエピソードを作るわけだ。

そうすれば、以後、3人一緒に行動していてもおかしくないからね。

でないと、王都では一切接触できないままになっちゃうもんね。

「……まぁ、他にいい案もないし、カオルの好きにやってよ。

最悪の場合、他国や他の大陸に行ってやり直してもいいんだからね。

子供達も、恭子が小型のクルーザーでも出して『新型の帆なし船』だってことにすれば、疑問を抱かれることもなく運べるし……」

え?

レイコ、何言ってるんだ?

「あの〜、レイコ、子供達はみんな、恭ちゃんの搭載艇のこと、知ってるよね?

恭ちゃんと再会した後、みんなで乗って帰ったよね、リトルシルバーまで……」

「あ……」

私達3人のうちで一番頭のいいレイコでも、失敗することはある。

でも、3人で知恵と力と勇気を合わせれば、どんなことでも、何とかなるなる!

* *

……王都である。

正確には、その外側。

街全体が大きな壁に囲まれた、 城郭(じょうかく) 都市である王都に入るために、街門に並んでいる人々の列の中にいるわけだ。

別に全ての王都民の出入門記録が取られているわけじゃなし、レイコの魔法や恭ちゃんの連絡艇で夜中にこっそり、ということでも別に構わないけれど、その程度のことでふたりの手を煩わせるのも悪いし、万一の場合に備えて、ここはちゃんと街門を通過したという事実を作っておいた方がいいからね。

あれからみんなでリトルシルバーに戻り、爆発寸前の子供達を構いまくって、何とか沈静化。

こまめに相手しないと、爆弾マークが段々大きくなって……、って、昔の恋愛シミュレーションゲームかいっ!

みんなの目が、たまに真剣になって……。

『ときどき目がリアル』

……って、うるさいわっ!

とにかく、その後一週間くらい構い倒して充分満足させてやってから、レイコを残して私ひとりで王都に来たわけだ。

恭ちゃんは、 トレーダー商店(おみせ) へと戻っていった。

さすがに、まだ必要もないのに長期間お店を不在にするのは心配らしい。

早く、雇われ店長と店員達の3人で安定して回せるようにしてね。

さて、王都に来て、私がまず最初にやることは……。

よし、とりあえず孤児院に 入(はい) れていない孤児達の溜まり場へ行こう!

そう、野良巫女といえば、孤児の救済! 定番だ。

……とか考えていたら……。

「名前と身分と目的は?」

私の番が来て、退屈して疲れたような顔の門番さんが、必要最低限の言葉でそう尋ねてきた。

いや、毎日何百回も何千回も同じことを聞き続けるんだ、そりゃ極限まで省力化に努めるよねぇ。

でないと、やってらんないだろう。

写真がないこの世界じゃあ、余程大きな特徴のある者でないと、指名手配犯かどうかなんて分かるわけがない。

他国の間諜とかも、別に暗号の換字表とか小型通信機とか万年筆型の超小型拳銃とかを隠し持っているわけじゃないんだ。調べても分かるわけがない。

パスポートや通行手形なんかないし、手書きの書類なんか門番に偽造かどうかなんて分かるわけがないよ。

だから、王都への出入りがフリーパス、ってわけにはいかないから門番がいるけれど、余程怪しい 風体(ふうてい) の者以外は、素通しなのだろう。

こんなに大勢の出入者を、いちいち時間をかけて調べられるわけがない。

門番さんが言った『身分』というのは、別に貴族とか王族とかいうヤツではなく、商人とかハンターとか農民とかの、そういった区分のことだろう。

当たり前か。貴族や王族は、平民用の列に並んだりはしないからね。

なので、素直に答えた。

「自由巫女、エディスです。布教と奉仕活動の旅の途中で、休養と資金調達に……」

王都内での 布教(カネあつめ) は神殿勢力が幅を利かせているため、自由巫女は王都内ではあまり大っぴらには活動しない。

しかし、情報収集や休養、 出資者(スポンサー) との顔繋ぎ等で王都に立ち寄るのは、ごく普通のことだ。

……ちなみに、『野良巫女』というのはあくまでも自嘲を込めての自称であり、他者がそう呼ぶのは、悪意があり馬鹿にした言い方をする時だけである。

正式には、神殿勢力とは関係のない流れの巫女は『自由巫女』と呼ばれる。

公式な場以外でそんな呼び方をする者は、殆どいないが。

「ああ、野良……自由巫女様か。御苦労様。王都でゆっくり休んで……、エディス?

あ、いや、自由巫女様と行商の者には、各地の様子を聞いて報告することになっているのでした!

すみませんが、詰所の方で少しお話を伺いたいのですが……」

ありゃ。

平民であっても巫女は尊敬される職業だから、元々ちゃんとした応対だったけど、途中で急に慌てたような様子になって、更に丁寧な扱いになったぞ……。

敬虔(けいけん) な信徒なのか、自分達の都合で時間を取らせることを申し訳なく思っているのか、それとも私が非協力的な態度を取ると面倒なことになると思って 下手(したて) に出ているだけなのか……。

まあ、言っていることは分かる。

行商人とか野良巫女……自由巫女は、村々を巡って地元の人達と交流する職業だ。兵士や役人が行って調査した時には口が堅い村人達も、色々と本音の話をしてくれる。

なので、施政者が地方の人々の本当の状況を知りたいならば、そういう方法を取るのは悪くないだろう。

下々(しもじも) のことなど全く気にしない貴族や王族が多い中、それは立派な方策だろう。

……あまりにも酷い施政で、一揆や謀叛を起こされないかと心配で、ということじゃなければ、だけどね……。

まぁ、今まで見た限りじゃ、そんな様子はなかったから、安心かな。

「おい、何をしている! 例の件、さっさと報告に行かないか!」

「……え? あ、は、はい、申し訳ありません! 直ちに!!」

ありゃ、指示されていた仕事を忘れていたらしい下っ端の人が、私を案内してくれている人に叱られて、慌てて飛び出して行ったよ。

どこの世界でも、下っ端は辛いねぇ……。

* *

あれから、門番チームの班長……ここの数人の門番の中で一番上位の、纏め役……の人に色々なことを聞かれた。

回ってきたルートだとか、様子のおかしい村、変わった事象、違和感を覚えたことはなかったか等の、当然聞かれるであろうこと。

……そして、私の個人情報も。

年齢、出身地、実家について、好きな食べ物、婚約者はいるのか、その他諸々。

お見合いかっ!

いや、それとも、私に気がある?

うむむむむ……。

しかし、長いよ!

自由巫女はともかく、行商人とかは結構大勢いるよね?

その全員に、こんなに時間をかけるの?

そして、中年のおっさんにも、好きな食べ物や婚約者の有無を聞くの?

おかしいだろうがっ!

とか考えていると、ドアが開き、数人の男達が詰所の中へ入ってきた。

「……お待たせいたしました」

何か、騎士っぽいの、キタ〜〜!!