作品タイトル不明
304 迎 撃 7
「……」
「…………」
「「………………」」
やらかした。
この後、まだ香辛料やナイフ、宝石の 裸石(ルース) ではなくちゃんと枠や台座に付けられた 宝飾品(ジュエリー) 、恭ちゃんの母艦製の簡単な工業製品とかも見せようかと思っていたけど……、そんなの、小さなポシェットに入るか、ボケェ!!
……はぁはぁはぁ……。
ダルセンさんは、『多分、聞いちゃダメなんだろうな……』と思っているのか、私のポシェットをガン見しながらも、何も聞いてこない。
うむむむむ……。
「み、みつかい……、いやいや、 みっつがいい(・・・・・・) 値で売れますように! この宝石達が……」
ありゃ? 売り値の心配? 大丈夫、小粒だけど、モノはいいからね、その宝石。
ちゃんと少量の内包物やキズ、僅かな色の偏りとかも仕込んであるけれど、あくまでも天然物としては高級品の 範疇(はんちゅう) だ。そして、カットと研磨の技術はピカイチだからね、心配ないよ。
じゃあ、あと、フォールディングナイフでも付けとくか。
ガーバー、ラブレス、バック、ランドール、Gサカイ、その他諸々のデザインを適当にパクッ……リスペクトしたヤツを。
* *
「「「「「…………」」」」」
ダルセンさんのお店を後にして、宿に向かっているんだけど……。
『灼熱の戦乙女』のみんなが、何も喋らない。
……居心地悪い……。
「あの……」
「ひゃ、ひゃい!」
しっかりしているはずの、リーダーのイシュリスさんも、何やら様子がおかしい。
あ、こりゃ、もしかすると……。
「見ィ~たァ~なアァ~……」
「「「「「ひいいいぃ!!」」」」」
……駄目だ、こりゃ……。
* *
食事は、宿で摂ることにした。
その方が護衛としては安心感が増すだろうし、移動中に襲われたり、おかしなのに絡まれる確率も大幅に低下する。
そして雇い主である私が許可すれば、あまり酔わない程度であれば飲酒も可能だ。
勿論、一度に呑むのは5人中2~3人だけで、全員というわけじゃないし、戦闘に大きな影響が出ない程度、という条件が付くが。
本命を除けば、宿の中で絡まれたり襲われたりする確率は、そう高くはないだろう。
あまり底辺層の者が泊まるような宿ではないし、外部の者にしても、わざわざ宿にいる時に襲ってくるとは思えない。
戦闘環境としても、目撃者や襲われた者に助太刀する者の存在にしても、他の場所で襲えばいいのにわざわざ宿にいる時に襲わねばならない理由がない。
そして 本命(・・) にしても、あの兵士4人組が雇い主のところへ戻って報告し、次の手立てを考えて、人員を用意して移動、ということを考えると、早くて4~5日、遅ければ7~8日は掛かるだろうから、まだ日数的に安全圏内だと思われるからだ。あと2~3日経てば、たとえ少量でも、飲酒なんかできなくなる。
まぁ、あの連中とは別件のトラブルが発生する可能性もゼロじゃないけれど、この規模の街で女性5人のパーティはかなり有名なはずだ。実力とは関係なく、その珍しさで。
ならば、そんなパーティが護衛に就いている者に手出しするようなチンピラや底辺ハンターはいないだろう。商業ギルドで私に目を付けたかもしれない悪徳商人も、また 然(しか) り。
そういうわけで、何やら様子がおかしい『灼熱の戦乙女』のみんなを、少しお酒が呑めるところで食事させて(代金は、雇い主持ち)、リラックスさせて話を聞こうと思ったわけなんだけど……。
「「「「「…………」」」」」
……これだ。
テーブルの上の料理にも、全く手を付けていない。
「あの、いったい、どうしたと……」
「「「「「御無礼つかまつりましたあぁ~!!」」」」」
あ~……。
小粒の宝石はともかく、 紅玉(カーバンクル) ダイヤと、『そんなに入るはずのないポシェット』はマズかったか……。
私のことを、人々の救済のために地上に降り立った、 現人神(あらひとがみ) とでも思っているのかな……。
このままだと、命を懸けて私を護ってくれそうだけど、それはちょっと居心地が悪い。
それに、変にピリピリして、私の後ろに立った人に殴り掛かったりと、過剰反応されても困る。
これは、誤解を解いておかないとマズいな……。
「あ、いや、この『不思議なポシェット』は、これを使って孤児達を救うようにと、女神様が……」
「「「「「やっぱりイイイイィ!!」」」」」
「あ……」
失敗し(シクっ) たあぁ~!
「いや、その、私はちょっとセレスにコネがあるだけの、ただの、普通の人間で……」
「「「「「女神様にコネがあって略称で呼び捨てにするヤツが、ただの普通の人間であるものかあああぁ~~!!」」」」」
イカン、どんどんドツボに嵌まってゆく……。
オマケに、他の客やウェイトレス達の視線ががが!!
* *
「そういうわけで、私はほんの少し祝福を賜っただけの、ただの野良巫女なのです……」
「「「「「…………」」」」」
何とか、カバーストーリーをでっち上げて、誤魔化した。
父親が裕福な商家の跡取りで、母親が貴族家の娘。
そして母親は巫女の血筋。
巫女と言っても、現代日本の『神職の補佐をする女性』のことではなく、昔の、シャーマンに近い役割の女性のことだ。
……卑弥呼タイプ、とでも言えば、分かりやすいか……。
「いくら下級貴族の傍系で平民とは言え、一応は貴族の血を引いていますからね。それで実家が金持ちで、僅かながらも女神の祝福を受けているとなると、まぁ、神官達が私を介して実家からお金を吸い上げようとしたり、家系に箔を付けたい下級貴族に狙われたりと、碌なことがありません。
なので私は、神殿に所属することなく、野良巫女として活動しているというわけです。
腐敗神官の豪遊に使われる寄進ではなく、自分の手で、必要としているところに直接お金が渡るようにと……。
そしてこれが、母の家に代々伝えられている、野良巫女活動をする時のためにと女神から賜ったという言い伝えの『 天(あま) のポシェット』です!」
そう言って、ポシェットを掲げてみせる。
「「「「「…………」」」」」
いや、そろそろ納得してよ……。