軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

274 トレーダー商店 3

「……せかいがはめつする……」

「止めに行かなくちゃ……、と言っても、今はローディリッヒの件で警備隊に呼び出されるかもしれないから、ここを空けられないし……」

そう、それがあるんだよねぇ……。

「私かカオルの、どちらか片方が行く?」

「いや、ふたりで行かないと、ひとりじゃ恭ちゃんを止められないよ……。

よし、証人は他の人に任せよう! うちでのことは 護衛の人(・・・・) が証言できるし、あばら屋でのことは踏み込んだ警備隊の人達が証言できる! レイアにも、証言内容の打合せをしておけば大丈夫!

今更、どうあがこうがローディリッヒには逆転の目はないだろうし……」

「よし、後のことは 護衛の人(・・・・) に任せましょ! とりあえず、通信機で恭子に『私達も行くから、ちょっと待て!』って連絡しましょう」

「「よし、作戦開始!」」

レイアと 護衛の人(・・・・) には、私が説明しないと駄目だ。

私は『セレスのお気に入り』だから、レイアからも 下等生物としては(・・・・・・・・) 比較的いい扱い……ほぼ対等に会話……をしてくれるから。

セレスによって転生させてもらったという点ではレイコも恭ちゃんも同じだけど、地球の神様モドキのミスで死んだお詫びと補填、という私と違い、あのふたりは天寿を全うしていて、自分から賠償請求したクチだからねぇ。

だから、人……神?……の好い地球の神様モドキが転生させてくれたものの、それは私に対するようなお詫びの気持ちからじゃないから、そんなに気に掛けているわけじゃないだろう。

……というか、あのふたりの転生って、レイコと恭ちゃんに対する補填じゃなくて、『人生において、ふたりの親友との楽しい触れ合いを奪われた私への補填』なんじゃなかろうか……。

いくら私……レイコと恭ちゃんにとっての友人……が死んだからといって、それだけでチート特典付きの転生をさせてもらえるほど、世の中甘くはないよねぇ……。

だから、私とつるんでいた頃の昔の記憶は鮮明になってて、その後の記憶は薄れていてあまり表に出て来ないとか、精神が肉体に引きずられて若い頃の感性に戻っているとか、色々と私にとって都合のいいように……、って、それは考えるまい。

レイコはレイコで、恭ちゃんは恭ちゃんだ。私の親友の……。

……まあ、そんなことはどうでもいい。

とにかく、それが伝わっているのか、セレスもレイアも私に対する態度に較べて、レイコと恭ちゃんに対してはちょっと対応がしょっぱいんだよね。

レイアなんか、レイコや恭ちゃんよりも子供達……特にミーネとかの方を重要視している気配があるくらいだ。

なので、レイアと重要な話をするのは、私の担当だ。

護衛の人(・・・・) の方も、依頼をしたのは私だし、色々な調整を行ったのも私だから、当然のことながらこのお願いをするのもレイコより私の方が適役だ。

レイコには、恭ちゃんへの連絡と、子供達への説明を担当してもらおう。

* *

「……じゃあ、後のことは頼んだよ。予約の品の配達についてはミーネが管制、みんなの食事やおやつについてはイリーが管理してね。ミーネ達を襲った連中は捕まったから問題ないとは思うけど、街へ出る時は必ずふたり以上で、防犯装備を忘れないこと!」

「「「「「はいっ!」」」」」

* *

「行かれましたね……」

「行っちゃったね……」

「「「「「…………」」」」」

カオルとレイコが恭子の店がある街へと向かい、子供達だけとなったリトルシルバー。

早速、カオル達の留守を任されたミーネが張り切って指揮を 執(と) り始めた。

「カオル様から指示されたのは、定期的に商品をお届けしているところへの配達と、そのための商品を作ることだけ。後は、私達に必要な食べ物や消耗品の購入と、食事を作ったり勉強したりすること……。

お客さんの新規開拓や、在庫を増やすための増産はしなくていい。たまにはのんびり、自由に好きなことをしていなさい、って言われたけど……」

「うん、『しなくていい』ということは、別に『してはいけない』ということじゃない!」

「そして、私達が自由に、好きなことである『カオル様達のために働き、奉仕する』ということについても、御指示通りだから全く問題ない……」

「「「「うん!」」」」

「いつも、お三方の誰かがここに残ってるし、 朝2の鐘(午前9時) から 夜1の鐘(午後6時) まで以外は仕事をさせてもらえないし、その他にも昼食と食休み、 昼2の鐘(午後3時) のおやつ休憩、1時間ごとの休憩とかで仕事が 細切(こまぎ) れにされて、思い切り働けない……」

「おまけに、週に2日も 働けない日(・・・・・) があるし……」

「「「「「拷問かっ!!」」」」」

子供達は、孤児院のためにいかに役に立つか、どれだけ自分が貢献できるかということに全てを懸ける生活をしていたため、『働けない』、『役に立てない』、『貢献できない』ということに強いストレスを感じるのであった。

……しかし、カオル達に10歳以下の子供達を過度に働かせることなどできようはずもない。

元々、10歳以下というのは遊びと勉強だけに日々を費やすべき年齢である。

それを、この世界での常識と子供達の将来のことを考えて、妥協に妥協を重ね、やむなく働いてもらっているのである。なので、これ以上子供達の労働時間を増やすことなど、あり得なかった。

今でさえ、『研修』とか『現場確認』とかの理由を付けて、何とか平日にあちこちへ 勉強(あそび) に連れ回す回数を増やそうと努力しているくらいである。

本人(こども) 達の意志に反して……。

「とにかく、お三方がいないこの 機会(チャンス) に思い切り働いて、『休養日』などという不要で無意味で害悪な行事は撤廃するよう、再考を 促(うなが) すのよ!」

「「「「おおっ!!」」」」

「じゃあ、まずは畑の拡張と、地下室の大掃除ね。

あ、掃除するのは地下1階だけよ。

…… なぜか私達がその存在(・・・・・・・・・・) を知らないということ(・・・・・・・・・・) になっているらしい(・・・・・・・・・) 、それより下の階には、入っちゃ駄目よ!」

「「「「おおっ!!」」」」

あれだけしょっちゅう、出掛けた形跡もないのに3人が姿を消すのである。地下1階も含めて。

そして、3人それぞれの個室から地下室への隠し階段があることは、皆に公表されている。

それらから考えて、地下1階から更に下へと続く隠し階段がある。

もしくは、地下1階を経由せず、そのまま更に下の階へと続く別の直通階段がある。

子供達はそう推測していたし、女神様が子供達に簡単に隠し事を見破られるような失敗をするはずがない。

なのでこれは、『信頼しているお前達には知らせておくが、表向きは知らないということにしておくように』という、何らかの深いお考えの基に行われていることであろうと考え、敢えてそのことに触れることはなかったのである。

おそらく下層には不測の事態に備えたものが用意されており、子供達が本当に女神様方に認められた時、それが自分達にも開放されるのであろう、との期待を抱いて……。

とにかく、子供達はカオル達3人を女神様だと信じ込み、その使徒となれた幸せを噛みしめながら、懸命に働くのであった。

……カオル達の考えなど、知ることなく……。