軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

254 懇親会 3

「「計画通り……」」

お客さん達が帰った後の食堂で、にやりと笑う私とレイコ。

懇親会の間、レイコは料理の説明以外は殆ど発言せずに聞き役に徹していたけれど、それは仕方ない。ふたりで話すと話の進みが遅くなるし、齟齬が生じる確率が高くなるからね。

そういうわけで主に私が話したけれど、勿論その内容は事前にふたりでみっちりと打ち合わせたものである。

「これで、裏の稼業も一段落かな……」

そう、私達は、別にどんどん事業を拡大して陰の経済大国を築いたり、世界を支配したりする気はない。ただ、ある程度自由にお金を使っても怪しまれないだけの稼ぎがあるように見せることと、小バエが 集(たか) ってきた時に追い払えるだけの後ろ盾が欲しかっただけだ。

そしてそれは、ここの領主様と4人の商人、 新人ハンター(キャン) と 新人商人(サラエット) と 新人聖女(エディス) がいれば、用が足りる。

私達がこの領地だけで珍しい物、高価な物を売り捌いていれば、必ず他領や王都の者達にその噂が届くだろう。

そして、そんな商品があるのになぜ王都に進出しないのかと疑問に思われ、商品の出所に興味を持たれ、……金儲けを企んで、色々と調査したり接触に来たりするに違いない。

かといって、下手に直接王都との取引なんかすれば、王族、貴族、神殿、その他諸々に目を付けられるだろうから、販売元が子供(に見える者)達だけの小さな元孤児院、なんてバレたら、どうなるかはだいたい察することができる。

うん、領主様と商人さん達は、恰好の防波堤、というわけだ。

「じゃあ、ボチボチ始める?」

「うん、ボチボチ始めようか……」

そう、次の段階に移行するのである。

* *

「一瞬、ヒヤッとしたが、概ね良い方向で纏まったか……」

「そうでございますね。……しかしあのカオルという少女、見掛け通り、剛胆で厳しい……」

領主邸に戻り、家令と先程の懇親会でのことについて話し合う領主。

「見掛け通り? いや、まだ幼い少女だぞ? どこが『見た目通り』なのだ?」

「いえ、少女の身でありながらの、あの眼力と、何人か殺しているのではないかと思われる、あの威圧感。そして護衛の兵士や大人達に囲まれ、領主様を前にしての普段のままの振る舞い。

いやいや、大した胆力でございましたよ」

「ふむ、そういうものか……」

そのあたりは経験豊富な家令には敵わないため、素直に頷く領主。

「……しかし、あれだけ調べたというのに、大した情報はないか……」

そう、領主は勿論、突然自領に現れた身元不明の怪しい連中を放置したりはしていなかった。

いくらそれがまだ幼い少女達であろうが、かなり裕福そうであろうが、そして数人の孤児のために他国へ喧嘩を売りに行くという、正義感旺盛な いい人(バカ) であろうが……。

もし、上位貴族の娘であったなら。

もし、他国の貴族の娘であったなら。

もし、他領や他国からの間者であったなら。

「……いや、あんなに目立つ間者がいるものか……。それに、間者が孤児のために体を張ってどうする……」

「そうでございますよねえ……」

口に出たのは思考の後半部分だけであるが、家令はちゃんと主人の思考の流れを察していたらしく、相づちを打った。

……というか、おそらく、自分も同じようなことを考えていたのであろう。

「知識と行動力と財力から、普通の平民ということはあり得ん。手も傷ひとつなく細くてすべすべ……に見える。別に触って確かめたわけではないが……。

とにかく、あんな平民はいない。もしいたとしても、国で1~2の大店の娘くらいだ。

そしてそんな大店の娘は、あのような自由行動も危険な行為もカネの無駄遣いも許されるわけがない。大店の娘とは、そういうものだ。

……そして勿論、貴族や王族の娘もそうだ。

当然、あの娘達が何者であるか、どこから来たのかを調べさせた。

そして、この街に来るまでに通過した街をいくつか確認できたが、結局、どこから来たのかも、何者であるかも不明。

つまり……」

「正体不明、でございますね?」

「うむ……」

「では、どうなさいますか?」

「……どうもせん。いや、保護してやり、儲けさせてもらい、出来れば恩を売って、機を見て実家の者達と接触し、直接取引がしたい。

子供の社会勉強のためのお遊びにこれだけの商品を融通する親だぞ? そこと本気の取引が出来れば……」

だが、まだ早い。

信頼関係を結ぶ前に余計なことをすれば、金の小鳥は逃げ去ってしまうだろう。

急(せ) いては事をし損じる。

そう考え、ゆっくりと事を進めようと考える領主。

ゆっくりと、ゆっくりと……。

但し、少女達の安全面には万全の態勢を敷いて……。

* *

あれから3カ月後。

「順調だね、表も裏も……」

「順調ね」

「うん、順調だね!」

今日は、恭ちゃんも揃っての、3人全員の集合。

子供達は、みんなもう寝てる。久し振りに恭ちゃんを含めてのフルメンバーが揃ったから、夕食はご馳走にしたからね。満腹になった上、みんなはしゃいでいたから電池切れだ。

そして私達は、地下司令部で秘密会議。

「支店長が香辛料やお酒、高級食材やアクセサリーを本店に送ってくれているから、王都では順調に売り上げが伸びてる。周辺の領地では、それに加えて工業製品も順調。もうこの領内では、かなりのお金を使っても資金源を怪しまれる心配はないよ」

私の報告に、こくこくと頷くレイコと恭ちゃん。

王都に工業製品を送っていないのは、重くて嵩張るから輸送にお金がかかるのもあるけれど、一番の理由は『技術力の違い』だ。

いや、わざと下手に作ることはできるけれど、鉱山もなく鍛冶で有名でもない地方都市から出来のいい金属製品がたくさん出現するというのは不自然だし、純度の高い金属や合金とかを出すわけにもいかない。あまりいい鉄とかだと溶かして武器に、とかいう話になっちゃうかもしれないし……。

とにかく、危険物は王都には送らない。

周辺の領地は、まあ、ちょっとくらいはいいかと。

鎌(かま) や 鋤(すき) 、 鍬(くわ) とかくらいなら……。

剣とかならばともかく、農具に使われている鉄の純度とかを気にする者はいないだろう。

わざわざ『様々な商品が、私達の出身地から送られてくる』ということにして商売をしなくても、『出身地から 金貨(おかね) が送られてくる』ということにした方が簡単なんじゃないか、という意見は、却下。

私が『 第一シーズン(アイテムボックス前) 』に稼いだお金も、ひとりで 慎(つつ) ましい生活をするならば結構な金額だけど、大勢で割と贅沢したり事業を始めたりするなら、たいした額じゃない。

それに、この国の貨幣じゃないし。

私がアイテムボックスの中に持っている金貨の大半は、両替していない『古銭』だ。

……つまり、怪しまれずに使える現金は少ない、ってことだ。

ポーション容器として、この国の金貨を造る?

いや、それは駄目だ。

貨幣を造るのは、香辛料やアクセサリーを作るのとは違う。

貨幣は『ただの物質』としてではなく、『国の信用度』として使われるものであり、それを造るのは『偽造』だ。香辛料とかは、作っても別に偽造というわけじゃない。ただ、通常とは異なる方法で作ったというだけのことだ。

なので、贋金造りには手を出すつもりはない。

これについては、3人で相談済みだ。

「じゃあ、計画の順調な進行と、10日振りの全員集合を祝して……」

「「「かんぱ~い!!」」」

うん、私達は知らなかったんだ。

……まさか、思わぬところから敵が現れるなどということを……。