軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

253 懇親会 2

「……と、まあ、こういう品を売っていきたいと考えているわけです。

現在は、そちらの3つの商店に卸して、この街でのみ小売りしていただいておりますが、今後は他の街にも、と考えておりまして……」

勿論、『他の街』の中には、王都や他国の街……この国の王都へ行くより近い、隣接国の国境に近いところだけ……も含まれている。

3つの中規模商店の商店主さん達は、勿論今提供している料理に使われている香辛料については以前から知っている。でも、今回新しく追加したものがあるし、キノコとかの新食材も出している。

そして大店の支店長さんは、3店の香辛料の仕入れ先が『 リトルシルバー(うち) 』だということを知らなかったらしく、目を剥いている。

ちょっとそれは、商人としては『アンテナが低い』と言わざるを得ないよねぇ。いち早くこの情報を掴んで、うちに色々とちょっかいを出してきたところもあったというのに……。

支店とはいえ大店だということで、少し 傲(おご) っていたのかな。

「そして更に、こういう品も……」

続けて、香辛料や食材以外の展開予定商品の紹介。

アクセサリーとかね。

但し、アクセサリーはデザイン重視。高価な宝石とかは付けていない。

使っていても、ほんの小さなものだけだ。

大きな宝石とかをバンバン出せば、どうなるかは分かってるからね。いくら領主様がバックに付いてくれても、上位貴族とか大手の犯罪組織とかに目を付けられちゃ、堪らない。

食事中は食材、香辛料、調味料関係の説明をしていたけれど、試食が概ね終わりお酒の試飲とお摘まみ程度になってからは、他の商品の説明をしている。

全て、 嵩張(かさば) らず大量輸送の場面を見せなくてもそう怪しまれないものばかり。

高額商品だから盗賊避けにこっそり運んでる、って説明すれば済むように。

そして、みんなの食い付きは上々だ。

「うちは人手不足だし、街からは少し離れているし、販売の 伝手(つて) もノウハウもないから、今と同じく卸し専門で行きたいんです。それと、あまり金目のものを売るとおかしなのに目を付けられるかもしれないし。特に、王都に商品が廻ったりすると……。

うちは女性と子供しかいないですからね」

私の説明に、皆、納得したように頷いた。

この世界では、弱者は食い物。法律や規則なんか、暴力と権力で簡単に踏みにじられる。

ここにいる8人には、それがよく分かっていた。

「……それで私達に、販売の代行……というか、後ろ盾というか、『前面の盾』になってくれ、というわけか?」

「はい」

領主様の確認に、頷いて肯定した。

私達は、やることが注目を集めやすい。

お金になることをやるから、権力者や商人、犯罪者達が寄って来やすい。

……そして、見た目が弱そう。

そんな私達が身を守るには、権力者にはもっと上の権力者、商人にはもっと上の商人を防御壁にすればいい。

犯罪者?

それは、『もっと上の犯罪者』を用意するわけにはいかないから、『もっと上の暴力』を使うしかない。

そしてそれは、自前で用意できる。

……というか、既にあるから問題ない。

ただ、権力者や商人とは違って、『事前に見せることによる抑止効果』は期待できないけどね。

でもまあ、何度かやれば、皆、学習するだろう。

他者の失敗から学ぶことのできない犯罪者は、長生きできないからね、うん。

「……分かった。ここを私財で買い取り孤児達の世話をしていること、危険を冒して売られた子供達を取り戻したこと、そして数々の画期的な商品を作りだしていることから、お前達には私が信用し便宜を図るだけの価値があると判断する。それに、こちらにも利があるからな。

その話、乗ってやろう」

計画通り……。

そして……。

「私も、乗らせていただきます!」

「私もです!」

「私も、是非協力を!」

「勿論、私も!」

商人さん達も、全員が乗り気。

……というか、領主様が全面協力を表明しているというのに、ここで下りる商人がいるはずない。

しかも、扱う商品は、売れることがほぼ確実。

中規模商家にとっては、王都に進出し大店にのし上がるチャンス。

そして大店にとっては、他の大店に差を付けて一歩リードするチャンス。そのチャンスをもたらした支店長が、出世できないはずがない。 末(すえ) は大番頭か、 暖簾(のれん) 分けか……。

よし、計画通り……。

* *

「では、王都での販売は、支店長さんのところで。この街を始め、領内での販売と周辺他領及び隣接国のここからごく近い街での販売は、3店の皆さんで。

そんなに大量には入荷しないから、遠くの他領や遠国への販売はしない、という方針に決定しますが、何か御意見はありますか?

……異議がないようでしたら、それで決定ということで……」

うむ、異議はないようだ。ま、今までそれについて話し合ってきたのだから、当たり前か。

3店が力を付けて王都進出を考え始めたら、またその時に相談すればいい。今は、そんな先のことを考える必要はないだろう。

「では、うちの商品は、形式上は全て領主様がお買い上げになり、各店には、領主様が販売されるということに。

これによって、防御力が低い リトルシルバー(うち) が領内外や王都の商人、貴族達から狙われることを防ぎ、領主様に利益が入り、そして商品がこの領地の特産物であるということを強調することができます」

うちは税金免除だけど、他の店からは税金が取れる。

それに加えて、少しは領主様にいい目を見させてあげなきゃならないし、うちの安全のためにも、これが一番いい方法だろうと思ったんだよね。

万一、うちの税金免除を取り消されたら大変だしね……。

領主様と商人さん達も、お金のことはともかく、子供ばかりだと思われている私達の安全面から考えて、これが一番いい方法だと思ってくれたらしい。

この街の飲み屋や飯屋に直接売る干物やジャーキー、手工芸品とかの『表の商品』以外のヤツは、全部領主様に納める。

……うん、他者が割り込む隙はないし、商品の出所がうちだということもバレにくくなる。

そして、私達が楽になる。

Win-Winの関係だ。

「で、このメンバー以外の商人達にはどう配慮するのだ? どのあたりで噛ませる?」

「……え? そんなの考えていませんけど?

私は、真っ当な商売をしていて、契約は絶対守り、不法行為は行わず、誠意のあるお店を選んだのですよ。どうして私が選ばなかった店のことを考慮する必要が?」

「え……」

ぽかんとした顔の領主様と、何だか照れ臭そうな、しかし誇らしそうな顔の商人さん達。

領主様としては、一部の商人だけを特別扱いして優遇するのは立場上マズいと考え、他の商人達にも利益を分配しようとしたのかもしれないけれど、そんなの、私達には関係ない。

信用できない者を仲間にすることほど危険で面倒なことはないからね。

一番恐ろしいのは、優秀な敵ではなく、愚かな味方だ。

ましてやそれが、お金のためなら平気で裏切るような奴だった日には……。

なので……。

「私達は、愚かな者や、信用できない者……裏切ったり情報を漏らしたりする可能性がある者は仲間にしませんし、取引もしません。

もしそういう連中を仲間に、と言われるのであれば、裏の商売は他の領地で行います。どこか近傍の領地で小さな倉庫付きの事務所でも借りて……。

そしてここでは、干物やジャーキー、民芸品等の、表の商売だけにしますが……」

私の言葉を聞いて、顔色を変えた商人さん達。

まあ、当たり前か。そんなことになれば、目の前にぶら下がっていた金儲けと栄達への道がぶっ潰れるのだから。

「あ、いや、そういうわけではない! ただ、聞いてみただけだ、何か考えているのかと気になったので……。特に考えていないのであれば、それで良い。うむ!」

領主様は、あっさりと 退(ひ) いてくれた。

ま、そんなに大した問題ではなかったのだろう。

買い上げたものをどうしようが領主様の自由だ、とか言い出されたら少し困っていたところだ。

……主に、今から他領で物件を探して引っ越さなきゃならなくなって少し面倒かな、という方向で。

ま、アイテムボックスがあるから、引っ越し作業そのものは大したことがないけれど。

その場合は、勿論、子供達も連れて行く。

でも、その必要はないようなので、安心だ。

「では、概ね、そんなところで。

詳細は、また後日……」

こうして、『リトルシルバー』は、事業を拡大した。

主に、自身を守る剣と盾を手に入れるために……。