軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

248 再出撃 3

一昨日レイコが出撃し、今日は私が再出撃する日だ。

そう、『第二次攻撃隊発進ノ要アリト認ム』ってやつだ。

いや、その後もずっと続くけどね。安定期に入るまで……。

それはいい。あと数回やれば、たまに日帰りで顔を出すだけでも済むようになるだろうし。

……お店を開く恭ちゃん以外は。

で、問題は、その恭ちゃんだ。

一回目は、レイコ、恭ちゃん、私の順で出撃した。そして私と入れ替わりにレイコが帰投し、次に私、そして恭ちゃんが最後。

……つまり、今まで恭ちゃんひとりで子供達と一緒に生活したことがなかったわけだ。私とレイコがほんの短時間の、買い出しとかハングとバッドの世話をしている時間とかを除いて……。

あ、今回の出張シリーズにおいて、『どうして俺達に乗って行かない!!』とかなりクレームを付けられたけれど、仕方ないよねぇ。ハングとバッドは駿馬で目立つから……。

そう言っても文句を言うから、『だって、身体強化ポーション飲んだ私より平均速度が遅いじゃん』って言ったら、盛大にヘコんでた。

……いや、ゴメン。

確かに瞬間的な最大速度ではハングとバッドに敵わないけれど、ずっと最大速度で走り続けられるわけじゃないからね。

『それなら、自分達にそのポーションを飲ませてくれたら!』と言い出さなかったのは、それに気が付いていなかったのか、私に神薬を要求するのは不敬だと思ったのか、それとも馬としての矜持のためなのか……。

とにかく、清貧な野良聖女が高価な駿馬に乗っている、というのはちょっとマズいからねぇ。

レイコの方も、駆け出しのソロハンターが馬を持っているのは不自然だし。

そもそも、森や山岳部に行くことが多いハンターが自前の馬や馬車を持っていては不経済だ。使える機会が少ないので。

馬は、かなり維持費がかかるんだよ……。

それはともかく、問題の恭ちゃんだ。

恭ちゃんは、私達の中では一番普通そうに見える。

……そう、『見える』のだ。

見た目がゆるふわで、目付きが悪いわけでもなく、眼鏡の奥に腹黒そうな眼があるわけでもなく、明るく元気な、天真爛漫な女の子。

……に見える。

いや、確かにいい子なんだ。正直で、善人で、自分の心に素直な子。

……『自分の心に素直』。

それがこんなに恐ろしい言葉だったとは、恭ちゃんと出会うまでは知らなかったよ……。

その恭ちゃんが、私とレイコ抜きで、子供達と一緒に暮らす。

あの、孤児院の初代院長先生からワケの分からない教育と 薫陶(くんとう) を受けた、あの子達と……。

『混ぜるな危険』

トイレ掃除の時に洗剤のラベルに書いてあるのを見た、この言葉。

なぜか、この言葉が脳裏を 過(よ) ぎる。

……しかし、今更どうしようもない。

恭子と子供達を信じるしかない。

……主に、子供達を。

じゃあ、そろそろ行くか。

身体強化ポーションを飲んで、夜の街にガオ~!。

さっさと寝ろと言ったのに、私を見送るために勢揃いしている子供達に軽く手を振って、恭ちゃんに『子供達を頼んだよ』という思いをアイコンタクトで伝えた。

長い付き合いなんだ、それくらいは伝わる。

恭ちゃんは、鈍い時は徹底的に鈍いけれど、普段はそう鈍いわけじゃない。察しが悪いのは、人を信じすぎている時だけだ。

なので、騙された、裏切られたと知った時には、反動が怖いんだよなぁ……。

せかいがはめつする。

ま、恭ちゃんの出張先の人達が誠実であることを祈ろう。

……その街の人達のために……。

「じゃ、行ってくる。また、チョチョイと人助けをしてくるね!」

うん、子供達には『他の街の孤児や困っている人を助けに行く』と説明してあるんだ。そう言えば、自分達も助けてもらった手前、反対できないだろうからね。引き留めたくても、我慢してくれるだろう。

では……。

「 発進(エンゲージ) !!」

* *

今回は、名目上の拠点とした街には向かわず、最初から周辺の小さな町村を巡る。

寄贈や炊き出し用のオークや他の食用の魔物、動物とかは、レイコからたくさん受け取ってアイテムボックスに入れてある。恭ちゃんも、販売用にと色々受け取っていた。

ハンターギルドや肉屋とかでも仕入れられるけれど、わざわざ無駄金を使う必要はないからね。

ただの物好きな篤志家の噂なんて、そうそう町や村を跨いで伝わるわけがない。

なので私は、どこの村や町でも同じことを繰り返すだけだ。毎回、初対面の相手に対して。

うん、簡単なお仕事だ。

施(ほどこ) しをした相手以外は私の顔を知らないから、お金を持っているらしいお人好しを狙って、という連中にも遭遇していない。 今は(・・) 、 まだ(・・) ……。

* *

「「「「「「おねーちゃん、ありがとー!!」」」」」」

子供達の感謝の声に送られて、またひとつの孤児院を後にする。

うん、光学的変装のためのアクセサリーのおかげで目元が優しくなった私は、子供達に怖がられることもなく……、って、うるさいわっ!!

とにかく、着々と『私財を投じて福祉活動を行う、篤志家』としての実績を重ねている私。

でも、篤志家はあくまでも篤志家であって、聖女じゃないんだよなぁ……。

『リトルシルバー』に何かあった場合に、大きな影響力を行使して悪党や権力者から守るためには、篤志家として充分な信用と名声、そして味方を得た後で、どこかで『聖女様』に 昇格(ジョブチェンジ) しなきゃならない。

それも、権力者や神殿に取り込まれたり潰されたりせず、しかも王族や貴族達に狙われ、奪い合いになったり囚われの身になったり繁殖用にされたりせずに済むように……。

ハードル、高~い……。

* *

「……というわけで、騙されたり強要されたりした約束は、守る必要はないよね?」

「「「「よね~!」」」」

「お友達を傷付ける人は、二度とそんなことができないようにしなきゃね。一度悪意ある嘘を吐いたり暴力を振るったりした人は、『他人を傷付けても構わない』って考える人だから、その場を逃れればまたやるに決まってるよね?」

「「「「よね~!」」」」

「よ、よね……」

遂に、アラルまで加わってしまった……。

見た目は可愛く、元気で明るく、タフでシビア。

仲間を大事にするけれど、敵には容赦ない。

あまりにも、共通点がありすぎた。

……ありすぎた……。