軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

246 再出撃 1

恭ちゃんの方も、順調らしい。

恭ちゃんの行動については、私とレイコが売り物の種類、価格、店員の雇用、店の選定、その他諸々を細部まで事前に検討したから、その枠から大幅にはみ出してさえいなければ、大きな問題はないだろう。

……恭ちゃんに自由にさせたらどうなるかは、私もレイコもたっぷりと思い知らされているから、そのあたりのことは抜かりなし!

恭ちゃんが、『どうして私のことだけそんなに細かく事前検討するのよ!』って 喚(わめ) いていたけれど、もしかしてコイツ、自覚がなかったのか?

いや。いやいやいやいや。

そんな馬鹿な……。

まあいいか。

そして最後は、私の番だ。

「じゃあ、最後は私ね。

怪我人を抱えたハンターパーティふたつ、孤児院みっつ、スラムふたつで予定の行動を実施。

多分、それぞれの業界でそれなりの噂にはなってると思う。まだそれぞれの町レベルであって、町や村を跨いだ噂にはなっていないと思うけどね。

次は、周辺の小さな村を廻ってみようと思う。今までのは信用を作るための下地作りであって、これからが本番だね」

そう、聖女の誕生は、小さな村々の間から話が広まっていくのが相場だ。いきなり大都市から始まるものじゃない。

まあ、大都市だとすぐに貴族や有力者に目を付けられて、初期の段階で潰されるか取り込まれるかのどちらかになるだろうからね。

私の場合は多分どちらも排除できるだろうけど、献身的な行いではなく『悪を潰す』という方面で目立つと、『聖女』ではなく、別の呼び名が付きそうな気がするからねえ……。

とにかく、 実戦証明(コンバット・プルーフ) 済みの 古くからある(安心できる) やり方を選ぶのが妥当だろう。

そしてその後、改めて詳細を報告し合い、今後のことを相談し、……そしてそのまま 女子会(のみかい) に。

出張中に、女の子がひとりで酒場で酔い潰れるわけにはいかないから、地球のお酒……に似せたポーション……や、恭ちゃんが母艦から持ってきたお酒、そしてレイコが熟成魔法で試作したお酒を飲んで、みんな潰れた。

主に、レイコが造ったお酒に悪酔いして気持ち悪くなった、という方向で……。

* *

「じゃ、行ってくるよ」

「「いてら~!」」

5日後、子供達が寝てから、レイコが出張に出発。森を経由して、獲物の仕入れをしてから街へ行くらしい。

レイコは、『狩りや採取で、森の中で夜営していた』とか、『遠くへ行っていた』とか言えば済むので、町にはあまり滞在しなくても構わない。

私も、『遠くの町村を廻っていた』、『山に籠もって修業していた』とか言えば済む。

でも、恭ちゃんは『仕入れのため遠征していた』くらいしか理由がなく、そしてそれは経営者が数日置きにやるようなことじゃない。なので恭ちゃんは、開店しちゃうとここへ戻れる回数が私達よりずっと少なくなるんだよねえ……。申し訳ない。

だから、今回はしばらくここにいて、レイコが戻ってからの出撃になる。

ま、今回戻ったのも一番最後だったし。

というわけで、明後日には、私が出撃。

その数日後には、レイコが戻り、恭ちゃんが出撃。

……慌ただしいなあ……。

ま、地歩固めが終われば、町にはたまに顔を出す程度にすればいいか。

あくまでも、あっちは『仮の顔』であって、本業はここ、『リトルシルバー』なんだからね。

万一の時に、その業界で影響力がある有名人、としての発言力が振るえればいいだけなんだから。

* *

かららん

((((((来たああああぁ!!))))))

ギルド支部に、緊張が走った。

居合わせたハンター達の間に、……そしてギルド職員達の間に。

数日前に突如として現れた、謎の新人ハンター。

しかも、強くて美少女、おまけに容赦がない。

最下級のFランクでハンター登録し、常時依頼を確認してメモを取り、姿を消してから誰も見掛けなかったが、ようやくこの町での初仕事……おそらくは、常時依頼……を終えて戻ってきたのであろう。

皆がそう考えるのも当然である。

宿屋暮らしのハンター達が一度も姿を見掛けていないことから、この町から離れていたことは分かっている。そして『しばらくはこの町に滞在する』と言っていたこと、通常依頼は受注していないことから、他に考えようがない。

そして……。

「これ、お願い」

皆の予想通り、解体場が発行する 代用貨幣(トークン) を換金窓口へ提出する、新人ハンター、キャン。

血塗れの獲物をこんなところに持ってこられても困るため、そういうのは解体場へ直接持っていくことになっている。

そして、犯罪防止のために、そこでは現金ではなく査定額に応じた 代用貨幣(トークン) が渡され、ここでそれを換金するのである。

一見、面倒に思えるが、どうせ貢献度のポイント登録のためここへ来る必要があるし、解体場に多額の現金を置いておくのは色々と問題があるため、どこからも文句が出ることはない。

不審な点があれば、換金の前に解体場への確認が行われるため、不正や犯罪の防止に大きく役立っているのである。

「えっ? あ、あの、しばらくお待ちください!」

チリン……

このように……。

すすっ、と居合わせたハンター達が移動し、出入り口の前を塞ぐ。表側も、裏側も。

そして元ハンターであるギルド職員達が、ささっとカウンターからの出口に近寄る。

ギルドに対する不正行為を行った者は、決して逃がさない。

先程の鈴の音は、勿論そのための合図であった。

今頃は、裏口から飛び出した職員が解体場へと駆け込んでいる頃であろう。

解体場でトークンが盗まれていないか。

……そして、賊が仲間の換金作業が終わるまで解体場を制圧していないかどうか。

最悪の場合、 人(ひと) 死(じ) にが……。

ぷぺ~

そして、間の抜けた笛の音が聞こえ……。

「問題なし! 元の業務に復帰せよ!」

ギルド職員から指示が出され、ほっとした顔で元の場所に戻る他の職員とハンター達。

「……あの、今のはいったい……」

「あ、いえ、その、何でもありません! 何もありませんですよ、ハイ!」

あからさまに挙動不審な、受付嬢。

キャンがじっと眼を見詰めていると、受付嬢の顔に、たらりたらりと大粒の汗が……。

「すまん、儂が悪かった!!」

その時、裏口から大きな声が聞こえた。

「悪かった! あんまり驚いたもんで、 代用貨幣(トークン) 渡したあと、固まっとった。

嬢ちゃんがひとりであんな額の 代用貨幣(トークン) 持ってきたら疑われるのが当然なのに、すぐに知らせに走らんかった儂のせいじゃ、受付の嬢ちゃんには何の責任もない、勘弁してやってくれ!」

「あ~……」

ここでようやく、自分が犯罪者扱いされていたことに気付いた、キャン。

「新人がひとりでオークを持ってきたのって、やっぱ、ちょっと不自然だったか……。

一応、輸送には人を雇ったんだけどなあ……」

輸送に使ったリヤカーも雇った孤児達も、オークを運び込んだ後は解体場の外で待機している。

なので解体場の作業員達は輸送方法を知っているが、ここの者達はそれを知らない。

それならば、少女ひとりでオークを狩り、そしてそれを丸々町まで運ぶことなど絶対に不可能だと思われても仕方ない。キャンがソロであることも、この町ではまだ知り合いが殆どいないであろうことも知られているのだから。

それで、オーク討伐を表す色の 代用貨幣(トークン) と、丸々1頭分の肉に相当する 代用貨幣(トークン) を小娘がひとりで持ってきたとなれば、偽造か何かを疑われても仕方ない。

「……不可抗力であったことは、理解しました。受付嬢さんは、罪なし! 自分の職務を忠実に果たされただけであると納得しました」

キャンの宣言に、ほっとした顔の受付嬢と、解体場のオヤジであった……。