軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245 一時帰還

「「「「「お帰りなさい~!」」」」」

「お帰り~」

朝方、私が『リトルシルバー』に戻ると、子供達とレイコが迎えてくれた。

いや、別に玄関先で待ち構えてくれてたわけじゃなく、居間でごろごろと寝転んだまま、口だけで、だけど……。

そう、一部屋だけ、ごろごろできるようにと畳モドキ部屋にしたんだ。

……あくまでも『モドキ』であり、実際には『い 草(ぐさ) 』ではなく、似たものを使用しての特注品。

稼いだお金は使わないと、経済が回らないからね。貯めりゃいいってもんじゃない。

ポーション容器として本物を出すこともできたけれど、ここは地上部分なので、私達が決めたルールに従って『ここの技術、ここの素材で作られたモノ』に拘ったわけだ。高くついたけど。

やっぱ、居間は畳でないとね。

恭ちゃんは、まだ出張中。

うん、『中の人』をやってる時のことは、ここではそう表現することにしてる。

出張は、ずっと続けるんじゃなくて、適宜ここへ帰ってくるようにしてるんだ。

そして、ここ、『リトルシルバー』に大人勢がひとりもいない、という期間ができないように、スケジュールというかシフトというか、まあ、そういうものを組んでいるというわけだ。

なので、ここには常に私、レイコ、恭ちゃんのうち、誰かひとりは必ず残っている。

勿論、ふたりいる時もあれば、3人揃っていることもある。

……但し、大人組が誰もいない、ということはない。

ま、そういうことだ。

そして私が戻った今、いないのは恭ちゃんだけ。

私とレイコは拠点とする街にいない期間が長くても問題ないから、出張に出る日数は少なくてもいい。

でも恭ちゃんは、店を構えるからあまり拠点の街から離れられない。

そういう『業務形態的なこと』もあるけれど、出張における大きな問題は、移動方法だ。

レイコは、魔法で身体強化して、更に風魔法で身体を少し浮かせてぶっ飛んでいく。

そして恭ちゃんは、超小型の連絡艇を使う。

なので、事実上、恭ちゃんはここと『商人、サラエット』が拠点としている街を移動するのに、ごく僅かな時間しか必要としない。

……但し、それは人目につかない夜間に限られるけれど。

いくら連絡艇には不可視モードがあるとはいえ、商店主がそんなにしょっちゅう店を閉めて街の外へ行っていたら、そりゃ不自然で怪しまれるだろう。……それも、おそらくこれから目立ちまくるであろう商店の主が、となると……。

絶対、商品の受け取りだと思われて後をつけられるに決まってる。

だから、移動は簡単だけど、そうしょっちゅう帰ってくることはできない、ってことだ。

私達があまり会いに行くわけにも行かないしねえ。

同じく尾行がつく可能性があるし、顔を覚えられると、将来的に 私(エディス) 達が商人サラエットと『たまたま出会って、友人になる』というイベントに支障が出るかもしれないから。

そういうわけで、移動が一番楽ちんな恭ちゃんが、一番帰りづらいということに……。

私?

私は、魔法も使えなければ、超小型の連絡艇もない。

いや、恭ちゃんが『貸そうか? 連絡艇……』って言ってくれたけれど、操縦の仕方が分からんわっ!

恭ちゃんは 女神特典(チート) で操縦知識を自動的に取得しているけれど、それを普通に自動車教習所みたいに教わるのは、あまりにもヤバ過ぎる。最初の事故で、即死間違いなしだ。

いや、まあ、創れるとは思うよ、Aボタン、Bボタンと十字キーだけで操縦できる乗り物……のようなポーション容器とか。

でも、それが創れても、恭ちゃんとは違って、私に自動的に操縦技術が身に付くわけじゃない。

絶対に事故るね、賭けてもいい。

そして私には、セーブポイントも残機もない。

そういうわけで、仕方なく、身体強化ポーションを使ってる。

街道を、強化された身体で、ずびゅん、と。

……そりゃ、勿論、夜しか走れんわ……。

昼間でも、街道ではなく、人目のない森の中を走ればいい?

あんな速さで森の中を走れば、草木やら何やらで服も身体もズタズタになるし、その前に、下生えや木の根に足をとられて転びまくるわっ!

そんな速さで転んだら、まず間違いなく骨折するね。首とか、 脊椎(せきつい) とか……。

即死したらポーションを飲む暇もないし、たとえポーションで治るとしても、痛いのも服が駄目になるのも嫌だよ、そりゃ。

そういうわけで、私は多少時間は掛かっても、夜の街道を疾走するのである!

……そして朝方である今、帰り着いたというわけだ。

筋肉痛?

ポーションで治すよ、勿論。

まあ、そういうわけで、数日間は『リトルシルバー』の子供達の面倒を見ることに。

面倒を見るとは言っても、この子たちは炊事洗濯、掃除や 馬(ハング) 達の世話も自分でできる。干物や燻製作りも、もう私達の指導は必要ないし、お店への納品も自分達でできる。

……この子達は、私が育てた!!

うんうん……。

よし、今日の食事は奮発してやるか……。

* *

今日は三食全て豪華な……『 リトルシルバー(うち) 』としては……食事を摂り、あとは子供達との触れ合いタイム。

常に誰かひとりは大人……見た目は除く……が残っていたけれど、なぜか子供達は私がいないと不安がるようなんだよねえ……。

表向きは平気な素振りをしているようなんだけど……。

前世じゃ、子供達が纏わり付くのは恭ちゃんで、私には全然寄ってきてくれなかったのに、どういうことなのか……。

いや、嬉しいよ? 嬉しいけど……。

そして、私が不在の間のことを我先にと報告してくる子供達。

リュシー救出作戦の時にはあんなにしっかりしていたのに、今はまるで普通の子供みたいだ。

……って、普通の子供だよねえ、この子達は……。

まあ、子供の自慢話は、黙って聞いてやるのが大人の対応ってやつだ。

* *

「ただいま~!」

翌日の夕食は、ちょっと遅め。

恭ちゃんが帰ってくる予定だったからね。

恭ちゃんが帰るのに必要な時間はごく僅かだけど、少しでも誰かに見られる確率を下げるためと、店を空ける日数を減らすために、完全に暗くなってからこっそりと店を出て街の外へ行かなきゃなんないから。

しばらくすると跡をつけようとする者も現れるだろうし、今のうちから警戒しておいた方がいいからね。

そういうわけで、今日の夕食は少し遅くして、恭ちゃんを待っていたわけだ。

なので、勿論今日も夕食はやや豪華。

そして、昨日と同じく、子供達の報告会が続いて……。

「じゃ、私達の報告会を始めるよ」

子供達が寝室へと引き揚げた後、私達は地下の司令部へ。

そう、今回はみんなが担当都市へ行ってからの、初めての帰宅だ。なので、取っ掛かりが上手く行ったかどうかの報告会を開き、不首尾に終わったならば対策を考えなきゃならない。

失敗した街から撤収して他の街でやり直すとか、光学偽装の顔を変えて同じ街でリトライするか、そして職業を変えるかどうか……。

3人で話し合うため、昨日はレイコともこの話はしていない。ずっと子供達にサービスしていた。

地下の司令部に入り、飲み物とお菓子を出して……。

「首尾はどうだった? まず、レイコからお願い」

「順調よ。最低ランクのFでハンター登録、お約束の2連チャンで実力を誇示、魔法バレは無し」

「……完璧ね。じゃ、次、恭ちゃん」

私が話を振り、次は恭ちゃんが報告する。

「商業ギルドのギルマスと副ギルマスと知り合いになって、店の買い取りも完了。今は内装を弄ったり商品を並べたりしてる。次に向こうに戻ったら、店員と水汲み兼雑用係兼調査員を雇う予定よ。後者は、非正規雇用」

それは、予定通りの行動だ。

『 リトルシルバー(うち) 』の子供達を使うという案は、以前の会議でボツになった。

子供達はどうしても、『ついうっかり』とか、『誘導尋問に引っ掛かって、ぽろりと』という危険が排除しきれない。

この街の名、私達の名、そして『 リトルシルバー(ここ) 』の名とかを口にされただけで、 商人サラエット(恭ちゃん) と私達や、こことの繋がりを探り当てられる確率はかなり高い……というか、ほぼ確実にバレるだろう。

何せ、そう離れていない街だし、私達はここではかなり名が知られている。この街に調査の手が及んだ時点で、ここと私達の存在は確実にバレる。

それを防ぐためには、ここの子供達を恭ちゃんの店の店員にするわけにはいかない。

……まあ、それ以前の問題として、ここからひとりかふたりだけを引き離して他の街でぽつんと店番、なんてさせられるはずがないよね。

あの子達は仲良しさんだし、何より、みんなまだ6歳から10歳までの幼い子供達なんだから。

いや、多分、店番はそつなくこなすだろう。文句も言わず、平気な顔で。

……でも、寂しい思いはさせられない。

子供を悲しませないのは、大人の義務だ。

異論は認めない。