軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

237 新人ハンター 3

「……ええ、まあ、ついさっきギルド証を受け取ったばかりですけど……」

レイコの答えに、うんうんと満足そうに頷く青年。

「ならば、うちのパーティに入れてあげよう。うちは若い者ばかりだから年齢も近いし、女性もいるので安心だからね。新人がソロというのは危険すぎるし、男性ばかりのパーティに無理矢理引き込まれると、その、色々と大変だからね……」

そう言って勧誘してきたのは、日本人であるレイコからは20代半ばくらいに見えるが、ここの基準では、20歳くらいか、それよりもう少し若いと思われる青年であった。

そしてその後ろには、4人の男女がいる。同じくらいの年齢の男と女、それぞれふたりずつ。

先程の男とは違い、悪意があるようには見えないが、普通、悪意バリバリの態度で話し掛ける詐欺師はいない。新人を騙して人買いに売る連中だとか、下っ端扱いして薄給で扱き使おうとしているだとかいう可能性は否定できない。

しかし、悪事を企んでいるという確証もないのに若手ハンター達を無下に扱うわけにもいかない。かといって、駆け出しパーティに加入する気は更々ない。なので、ここは穏便に断るしかなかった。

「……私、足手纏いは要らないので……」

((((((言い方ァ!!))))))

今日は、ハンターやギルド職員の心がひとつになることが多かった。

「え……」

見た目は15~16歳。

今、ハンター登録したばかり。

体格、肉付き、細く綺麗な腕から、鍛えた様子は皆無。

身体の動きから、武術の心得は皆無。

身体の一部分だけを護る革の防具。

……そして武器、防具は傷ひとつない新品。

「「「「「ああ、 妄想系(ちゅうにびょう) !」」」」」

「違うわっっ!!」

そう、この世界にも、日本での『厨二病』に相当する言葉があった。

そしてレイコの翻訳機能は、それを正確に訳したのであった。

「とにかく、相手がどのような人物かも、 職種(ジョブ) も確認せずにいきなり勧誘とか、まともなパーティとは思えないから、御遠慮します」

「「「「あ……」」」」

レイコに声を掛けた、リーダーらしき男性以外の4人は、納得の声を上げた。

レイコの言い分に、あまりにも説得力があったので……。

ハンターには魔術師などいないし、たとえいたところで、30分くらい詠唱してロウソク程度の炎を出しても意味がない。

そして弓を持っておらず短剣装備のレイコは一見前衛職と思われるかもしれないが、鍛えた形跡のない華奢で小さな身体、貧弱な革の部分防具、体格に合わせているため武器が剣ではなくリーチの短い短剣であること等から、前衛だと考えるには些か無理があった。

なので、主武器である槍や弓を整備に出している、街の中では邪魔になる槍や弓は持ち歩かずに護身用の短剣だけを身に着けている等、考え得るケースは多い。

なのにそれらを確認もせずに勧誘のために声を掛けたということは、相手を戦力としてではなく、若い女性を 別の目的で(・・・・・) 勧誘した、と思われて当然であった。

「なっ! お、俺はただ、新人の可愛い女の子がソロで活動するのは危険だし、タチの悪い連中に声を掛けられたら大変だと思って……」

「「「「「…………」」」」」

慌てて弁解するリーダーに、他のメンバー4人とレイコの、冷たい視線が突き刺さる。

普通、相手の職種と自分達のパーティ編成との相性を考慮せずに新人に声を掛けたりはしない。

他人のことを気に掛けて、自分達の生存確率を大きく下げるようなことをする馬鹿なハンターはいないし、仲間と相談もせずに独断でそんなことを決めるリーダーがいれば、普通はパーティ解散である。……他のメンバーに見放されて。

つまり、他のパーティメンバー、レイコ、そして居合わせたハンターやギルド職員達の全てが、こう考えているわけである。

((((((美少女だから、というだけの理由で、パーティに入れようとしたな……))))))

* *

「……というわけで、決しておかしな思惑があったわけじゃない!」

「犯罪者の方達は、皆さんそうおっしゃいます……」

「違う、そうじゃない!!」

あれから、必死で 説明(いいわけ) を続ける青年。

この若手パーティのリーダーで、名はリーフというらしい。

しかし、その必死の弁明も、誰にも信じてもらえる様子がない。……自分のパーティメンバーにすら……。

それには、パーティの残り4人……男女ふたりずつ……が、それぞれ2組のカップルのように寄り添っているということも影響しているのかもしれなかった。

「じゃあ、どういう理由で私を勧誘して、どういう配置につけさせようとしたの? 新人である私をどうこう、ではなくて、パーティ側の理由としては?」

「うっ……」

レイコの突っ込みに、返答できないリーフ。

そして……。

「後衛だ! 君は後衛として遠隔攻撃を担当し、そして敵が接近して近接戦闘になった場合には短剣で前衛の背中を護ると共に自衛に努めてもらい、前衛が前方の敵との戦いに全力を集中できるようにしてもらう!」

何とかそれらしい回答をしたリーフであるが……。

「残念、私は前衛職でした~!」

「「「「「「えええええええっ!!」」」」」」

レイコの答えに驚く、リーフと観衆たち。

「「「「「「そんな馬鹿な!」」」」」」

「いや、あなた達は、さっき私の『硬貨斬り』を見たでしょうが……」

「「「「「「あ……」」」」」」

そう、レイコの体格や腕の太さ、手の平、そして身のこなし等を見れば、そう思うのも無理はない。……しかし、観客である他のハンターやギルド職員達は先程の『硬貨斬り』を見たにも拘わらずその考えを改めないというのは、ハンターやギルド職員としての資質を疑われても仕方ない程の失策であろう。

だが、リーフ達はそのことを知らなかった……。

「嘘だ、あり得ん! もしそれが本当ならば、ハンターになるための訓練も何もしていない、全くのずぶの素人だということになる。10歳未満の見習いの子供ならばともかく、正規のハンターとして、そんな奴をソロで活動させられるものか!」

正論である。人間の命というものを大事にする者からすれば、それは全くの正論であり、その主張に反対する者など居ようはずがない。

……その対象が、レイコ、……『キャンディーダ』でさえなければ……。

「とにかく、君がソロで活動することを看過するわけにはいかない。そんなことをさせると、すぐに魔物か盗賊、タチの悪いハンター達の餌食になるに決まっている!」

「はァ?」

リーフの主張に、呆れたような顔のレイコ。

「いや、どうして私とは何の関係もないあなたに、わたしがハンターとして活動することに関して許可を得たり指示に従ったりする必要があるのよ? 無関係の、いえ、『若い女を無理矢理自分のパーティに入れてやろう、げひひ……』とか考えている男の言うことに……」

「な、なっ……」

驚いたような声を出すリーフであるが、現在の状況としては、レイコが言う通りであった。

観衆達も皆、うんうんと頷いている。

「そ、そんなことはない! よし、君がソロや前衛ではやっていけないことを証明してやる!

裏庭の訓練場へ来たまえ!」

((((((あああああああああ!!))))))

お約束ギャグの繰り返し。

いわゆる、『天丼』である。

どんなネタであっても、100回繰り返せばギャグになる。

「別に、あなたに勝とうが負けようが、私がハンターとしてやっていけるかどうかとは全く関係ないと思うけど……。

それに、ハンターになって何年も経っているらしいあなたが、ついさっきハンターになったばかりのFランクの新人に勝ったところで、何の証明にもならないでしょう?

そして、もし私が負けたとしても、別にあなたが言うことに従ったり、あなたのパーティに入ったりしなきゃならない理由はないし……。

新人にいきなり勝負を吹っ掛けて、ボコボコにして言うことをきかせるって、犯罪行為なのでは?」

レイコの言葉に、こくこくと頷く観衆。

勿論、その中にはギルド職員や仲間のパーティメンバーも含まれている。

そして……。

「じゃ、訓練場へ行きましょうか……」

「「「「「「行くんかいっっ!!」」」」」」

そして、ハンター達の間で賭けが始まっていたが、全員が片方にしか賭けようとしないため、賭けが成立しそうになかった。