軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

230 事業展開 4

はぐはぐはぐはぐはぐ!

一心不乱にお菓子を食べ続けるアラル。

しかし、誰もそれを止めようとはしない。

仕方ないだろう、イリー達『お使い組』が、帰宅した後、正直にアラルに告げてしまったのだから。……自分達が領主邸でお菓子を食べ放題であった、と。

そして、泣き出す寸前のアラルの目の前に、4人がポケットに詰め込んでいたお菓子を出して積み上げたのだ。……ちゃんとミーネが用意していた大皿の上に。

これで、アラルを制止できるわけがない。

イリー達がポケットにお菓子を詰め込んだ時には、あ~、習性はなかなか抜けないよなぁ、と思ったけれど、こういうわけか……。

領主邸でのことをアラルに内緒にする、という選択肢もあっただろうけど、後になって、何かの拍子にそれがバレた時、アラルは『裏切られた』と思い、自分が仲間外れにされたと思うだろう。

そして、以後イリー達が出掛ける時には、絶対に自分もついて行こうとするようになる。

そう、イリー達を信用しなくなるということだ。

……うん、それは『致命傷』だ。

だから、仲間内では隠し事はしない。

その場にいない仲間の分も確保する。

どんな仕事を担当しようが、得られたものは全てみんなで均等に分ける。

それが、孤児達が仲良く生きてゆくための方法なのだろう。

今はもう、食べ物にありつけなかった者が死ぬとか、空腹に耐えながら寒い夜を過ごすとかいうことはない。その場で一緒に食べられなかった者は、後で別のものを食べることができる。

……でも、この習性がコイツらからなくなる時は、来るのだろうか。

その日が来た方がいいのか、それとも、いつまでも変わらず、このままの方がいいのか……。

ま、今はこれでいいか。コイツらの好きなようにさせてやり、好きなだけ喰わせてやる。

コイツらの雇い主として。

そして、この世界で自由に生きるひとりの人間、『カオル』として……。

恭ちゃんが何を考えているかは分からないけれど、恭ちゃんも、黙ってアラルを見ている。

私達の基準だとあまり美味しくない、そしてアラルにとってはとんでもない贅沢品であろうお菓子を、必死に口に入れ続ける、アラルの姿を……。

* *

「帰ったよ~!」

「「お帰り~!」」

翌日、レイコが帰ってきた。

勿論、往復は魔法を全面活用。

そうでなきゃ、さすがにレイコひとりで行かせたりはしない。

そりゃ、盗賊に襲われようが魔物に襲われようが大丈夫だとは思うけど、たったひとりでとことこと徒歩で、またはバッドに乗ってぽくぽくと、というのは寂しいだろう。

魔法でずびゅ~んと行って、魔法でしゅば~んと戻ってくるから、レイコひとりに気軽に頼めたんだ。そうでなきゃ、いくら親友とはいっても、いきなり遠距離へのひとり旅を頼んだりはしない。それ相応の理由がない限り。

そういうわけで、昨日の朝に出て今日の夕方に帰ってきたのは、どこかに寄り道して遊んだり買い物をしたりしていたに違いない。往復と確認だけなら、昨日のうちに帰れたはずだ。

ま、いくら親友同士とはいえ、たまにはひとりで自由行動もしたいからねぇ。

何を買ってきたかは、後で教えてくれるだろう。

……で、調査結果の報告は、夕食を摂りつつ。

この件は、子供達も聞く権利があるからね。

何せ、みんなの仲間であるミーネを騙して奴隷扱いしていた商店のことなんだから。

そして、結果は……。

「無かった」

「え?」

「……何が?」

レイコの予想外の言葉に、よく意味が分からずに聞き返した私と恭ちゃん。

子供達は、口を挟まずに聞き手に専念しているけれど、思いは私と恭ちゃんと同じだと思う。

「店は無かった。店舗部分も、奥の母屋も、倉庫も、何もかも。そこにあったのは、ただの更地だけ。近くにいた人に聞いたら、『悪事が明るみに出て、潰れた』って……。

居抜きで売り飛ばそうにも、あまりにも悪評が酷くて、そんな建物を買い取っても商売なんかできやしないし、前の持ち主の関係者かと思われちゃ堪らない、ってことで、かなりの安値でも買い手は現れない、って。だから完全に取り壊して更地にして、全く別の用途のものを建てることによって『前の持ち主とは無関係です』ってアピールしなきゃ駄目なんだってさ。

それでも、相場よりかなり安くなる、って言ってたよ」

「「あ~……」」

私と、事情を説明済みの恭ちゃんが、納得の声を漏らした。

そして子供達は、何というか、その……、『必殺シリーズの、仕事を終えた後の人』みたいな顔をしている。

……まぁ、気持ちは分かる……。

こうしてみると、イリーとフリアが扱き使われていた店は、リュシーとミーネがいた店に較べて、なんと幸運だったことか……。

それは、ひとえにその2店がふたりに対して比較的まともな扱い……給金が碌にない以外は、普通の従業員とあまり違わない待遇……をしていたことと、従業員仲間に割といい人が多く、イリーとフリアが店がいきなり潰れることを避けたいと言い出したからだ。

……それと、ミーネとリュシーほど過激な子じゃなかった、ってことかな。

でも、イリー達も、あと数カ月そのままであればミーネ達と同じ事をやったかもしれない。

ミーネとリュシーがやったのは、『店を混乱させ、追っ手がかかる確率を下げ、そしてもし追っ手がかかるとしてもその初動を遅らせ、かつ人数を減らす』というためには必要なことだった。

イリーとフリアがそうする必要がなかったのは、私達がいたから『安全、確実に逃げられる』という保証があったからだ。もしミーネと同じ状況ならば、ふたりも同じことをやった確率はかなり高いと思う。

……だって、イリーとフリアも、『あの孤児院の出身者』だぞ?

「イリーとフリアがいた店と、ミーネとリュシーがいた店との報いの差が大きすぎない?」

恭ちゃんが、そんなことを言い出した。

確かに、その通りではある。でも、今更だよねぇ……。

そう思っていたら、レイコが案を出してきた。

「その2店も、机の上にナイフを突き立てた警告書を置いてきたから、もう二度と孤児院には手出ししないと思うわよ? それと、念の為に半年後、それ以降は1年ごとに、確認に行きましょう。

もし、またやらかしていたら、その時は……」

そう言って、しゅっ、と首を掻き切る動作をするレイコ。

「まぁ、そんなトコかな。その時には、イリーとフリアに良くしてくれていた従業員には、再就職までの繋ぎ資金を渡すか、もし『 リトルシルバー(うち) 』が発展していて人手不足になっていた場合には、うちに来てもらってもいいしね」

まぁ、孤児に親切にしてくれるような人なら、いい人なんだろうからね。多分……。

あ、繋ぎ資金を渡す場合は、勿論そのお金は商店主から回収する。当たり前だよね。

「じゃ、そういうことで。

これで、みんなに関する心配事は全部終わったよね。これからは、前を向いて、未来に向かって進むよ!」

「「「「「お~~っ!」」」」」

しっかりと仕込まれたのか、アラルも他の4人とぴったり息のあった声を上げた。

よしよし、ひとりだけ出身孤児院は違うけれど、問題なく、仲良くやってくれそうだ。

……但しアラル、年上の女の子ばかりのハーレムなんか形成するんじゃないぞ!

そして、みんなを引き連れて冒険の旅とかに出掛けるなよ!!

* *

「……というわけで、作戦会議なんだけど……」

私とレイコは、既に嫌というほどふたりだけの時間を過ごしたので、これは恭ちゃんのための現状説明回だ。

再会してからずっとバタついていたし、子供達が落ち着くまでは私達『大人組』の誰かが付いていてあげなきゃならなかったから、私達3人だけで長時間姿を消す、というのは控えていたのだ。

でも、もう子供達だけでお使いに出ることもできるし、夜中に悪夢にうなされて飛び起きるということもなくなった。

なので、子供達が寝静まった後、久し振りに地下深くの秘密基地、作戦指令室に3人揃って下りてきたわけだ。

「今までに、大体の経緯は説明したと思うけど、これからのことについてはあんまり話してなかったよね。だから、これからの計画について話し合いをしたいんだけど……」

「カオルのことだから、どうせ安全第一、現地の人達に迷惑を掛けない、混乱させない、自分達が目立ったりおかしな連中に 集(たか) られたりしない、秘密厳守、……そして楽ちんで怠惰な生活ができるようにお金を稼ぐ、ってとこでしょ?」

「さすが、わかってらっしゃる!」

「「ウイダバシャバ!」」

「やめんかっっ!!」

全く、コイツらは……。