作品タイトル不明
224 旧 友 2
聞いたところでは、恭ちゃんもレイコと同じく、歳を取ってからの記憶や経験はそのままではあるものの、それらはやや『客観的に 俯瞰(ふかん) するような感じ』であり、神様が記憶を呼び起こして強化してくれたらしい『22歳までの記憶』が今の状態に大きく影響しているそうな……。
なので、老人になるまで生きた人生の続き、というよりは、私が地球で死んだあの時、22歳の時点で分岐した、別の人生、というような感じらしい。
……ここで70年チョイ経った時点で、ふたつの人生を統合するのかなぁ。
それに、肉体の影響が大きいのか、今は本当に昔のあの頃みたいな感じらしい。
そりゃまぁ、いくら知識と経験を積み重ねていても、 筐体(からだ) と CPU(ずのう) がガタガタじゃあ、どうにもならないもんね。
そう、だからリフレッシュした魂と意識体が若い頃の身体に入ったら……。
「だから、この新しい命で、新しい世界に生きてゆく!」
「あんたもかいっ!」
うん、同じような本を読み、同じようなアニメを観ていたのだ、私達は……。
「ところで、香たちは今、この大陸中を旅して廻っているの?」
恭ちゃんが、急にそんなことを聞いてきた。
「ん? いや、一応はある程度定住しようかと思って準備しているんだけど……。
まぁ、大陸を横断したばかりだし、今回は隣国への旅からの帰還中だから、広い視点から見れば、そう言えなくもないかなぁ。
……で、どうしてそんなことを?」
私がそう尋ねると……。
「いや、神様が、香ちゃんは仲間達と一緒に大陸中を旅して廻ってる、とか言ってたから……」
「「あ~……」」
あの連中の時間感覚は、私達とは全然違う。だから、神様から見れば、私達は大陸を横断したあと、すぐにまた旅に出たように見えるのだろう。
いや、あの地球の神様は人間の感覚や常識には詳しいかもしれないな。多分、セレスからの又聞きだからだ。セレスからの情報が歪んでいるから、地球の神様が間違った受け取り方をしても、それは仕方のないことだ。
……うん、全部、セレスのせいだな。納得。
「……で、恭子はいったいどんな能力を貰ったのよ?」
あ、話がなかなか進まないからか、レイコが遂にその話を切り出した。
うん、問題は、そこだ。あの、 頭上の脅威(うえにうかんだの) は、絶対に それ(・・) のせいだよなぁ……。
そして、それに対する恭ちゃんの答えは……。
「あ、『私が知っている船を創造する力』だよ。詳細はその船について書かれた書物のとおりに造られて、その船の使い方についての知識も自動的に取得、ってことで」
「「…………」」
納得した。
私とレイコに与えたチート能力がちょっとマズかったかも、と思っていたであろうセレスも、それくらいなら了承しただろう。
……そしてその結果が、 上に浮かんでるヤツ(アレ) ってわけだ。
「架空の船もアリかいっ!」
思わず叫んだ私に、恭ちゃんがにやりと笑って答えてくれた。
「いやぁ、神様と見分けが付かないくらいに進化した種族にとっちゃあ、帆船だろうが豪華客船だろうがSF小説に出てくる宇宙船だろうが、みんな同じ。大して変わらないわよ。
私達にとっての、丸木舟とイカダくらいの違いでしかないだろうから、問題ないない!」
……そうだった。 恭ちゃん(コイツ) は、こういうヤツだったよ……。
「無茶苦茶だ……」
天を 仰(あお) いでそんなことを言うレイコだけど、そこで恭ちゃんが困ったような顔をした。
「……でもね、ちょっと問題があるのよ、この能力……」
「え? 創造する船に制限があるとか?」
「無茶をすると、ペナルティとして何らかの副作用が、とか?」
口々にそう質問するレイコと私に、恭ちゃんは残念そうな顔で告げた。
「船は完全装備で出せるんだけど、……乗員がいないのよ……」
「「はあああぁ?」」
その、あまりの内容に、思わず大きな声を漏らした私とレイコ。
「だから、船は出せて、私の頭にその操作法が流れ込んでくるんだけど、そこに乗員は乗っていないワケよ。だから、ひとりで動かせる船しか使えない、ってこと。
おまけに、人間とほぼ変わらない知性を持ったメインコンピュータ、っていうのも駄目だって。
何でも、そこまで進んだAIは女神様達にとっては生物と同等の扱いであり、勝手に 弄(もてあそ) ぶことは禁止、だってさ。
あ、私達がそれらをどうこうするのは別に構わないらしいんだけど、女神様がそれらを造って私に奴隷として提供したりするのは、あの種族の倫理的に駄目なんだとか……。
原住生物を大量に殺すのは気にしないくせに、よく分かんない連中……」
慌てて、恭ちゃんの口を塞いだ。
セレスの奴、たまに覗いてやがるからなぁ……。
「ま、そういうわけで、人格付与コンピュータとかいっても、言われたことをやってくれるだけで、自分で考えたり、アドバイスしてくれたり、友達のように話せるようなAIじゃないのよねぇ。自動操縦とかは問題ないんだけど……」
なるほど、ロボット船はいいけれど、チャイカやパオロン、ソードブレイカーやリプリム号とかは駄目だというわけか……。
SF小説に出てくる宇宙戦闘艦の大半は、なぜかかなり科学が進歩していても大勢の乗員が必要なんだよなぁ。操艦も武器管制も、全部 艦橋(ブリッジ) でひとりで操作できそうなもんだけど。攻撃とかは全部AIに指示して。別に、全ての砲を自分で目視照準で撃たなきゃならないわけでもないだろうに……。
それに、帆船や蒸気機関の船を出しても、船員がいないんじゃ、どうしようもないだろう。
どうしてそんな不便な能力になってしまったのか。
多分、それは……。
「セレスだからねぇ……」
うん、そういうことだ。
おそらく、言葉尻を捉えての嫌がらせ、なんてつもりは更々なかったに違いない。セレスは、そんな奴じゃない。
ただ単に、気付かなかっただけ。言われた通りの能力を付与しただけ。
……多分、恭ちゃんに神様並みの超能力が与えられたというわけではなく、恭ちゃんが船を造ろうとすればその都度、それを感知した『何か』が注文通りのものを造ってお届けするのだろう。
一瞬の内に船を造るとか、どんだけ……。
もしかすると、時間の進行速度が地球やこの世界に較べて数百万倍の速さの世界でゆっくり造って、完成したらこの世界へお届け、とかかな。
……とにかく、そういうわけで……。
「使えるんだか使えないんだか分からない、微妙な能力だ……」
レイコの言葉に、がっくりと項垂れる、恭ちゃんと私であった……。
* *
そして、積もる話で寝るのが遅くなった私達は、 寝惚(ねぼ) け 眼(まなこ) で朝食の用意をし、子供達を起こした。
日の出までにはかなり時間があり、辺りはまだ暗い。
おそらく恭ちゃんの船だと移動はあっという間だろうから、手早く食事をしてからすぐに出発すれば、明るくなる前にリトルシルバーに到着できるだろう。そしてその後、殺人未遂犯達を領主様に引き渡せばいい。今回のことを私達に都合良く説明して。
捕らえたのは他国でだけど、被害者は自領の住民だし、『どこで捕らえたか』なんて、誰も気にしないだろう。
連中のところの領主だって、数人の犯罪者のために他国の領主と揉め事を起こしたいとは思わないだろう。 大事(おおごと) になって互いの国の王宮にまで話が上がった場合、自領の商人による大罪と、口封じのために被害者である子供達に刺客を放ったということが露見したら、自分の立場が悪くなることくらいは分かっているだろうからね、馬鹿でない限り。
うん、何も問題はない。
レイアは、昨晩、いつの間にか姿を消していた。
朝食は大した 料理(もの) が出ないと思って、また遠くから時々観察する、ってパターンに戻ったのかな。
昨晩出てきたのは、本当は料理目当てというより、みんなとわいわい食べる雰囲気に引き寄せられたのかもね。
そして、朝食後はすぐに撤収。アイテムボックスに入れるだけなので、一瞬だ。洗い物とかは、あとでやる。
眼をキラキラさせていたりビクビクしていたりと様々な反応をしている子供達と、女神に地獄へ連れて行かれると思い半狂乱の殺人未遂犯達を順に乗降用のチューブに押し込んで、出発。
馬車やテントはアイテムボックスに入れたけれど、ハングとバッドはそのまま乗船。
……乗降用チューブ、太さを変えられるんだ……。
ま、それくらいは簡単か。何せ、星間帝国の技術力なのだろうからねぇ……。
「よし、発進!」
「あああ、それ、私の決め台詞うぅ!」
恭ちゃんが膨れているけど……。
いいじゃん、少しは私にも楽しませてよ!