軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

223 旧 友 1

「……動いた!」

球形のUFOの下部から、数本の突起が伸び出た。

インドラの矢か何かか? 今頃、あの中では『エネルギー充填120パーセント!』とか、『対ショック、対閃光防御!』とか言ってんのか?

初手(しょて) からいきなりスペシウム光線かよっ!

「レイコ、障壁ありったけ重ね掛け! インフラ・ラジウムとウルトラゴールドの壁形ポーション容器、出ろ!」

……

…………

………………

『お 久(ひさ) ~!』

UFOに付いているらしい拡声器のようなものから、そんな声が聞こえた。

……がっくし。

最後のヤツかよっ!

うん、そうだ。レイコの可能性予測の、一番最後のヤツ。

『……そしてチート能力を要求するにあたって、全く自重しなかったヤツ』だよっ!

「 恭子(きょうこ) 、遅いよ~!」

レイコのヤツが、 暢気(のんき) にそんなことを……、って、ま、マズい! 子供達が全部見てる!!

「レイコ、恭ちゃんとの会話は、日本語で!」

子供達には、あとで適当な説明を考えよう。

重力を無視してゆっくりと降下してくる『丸いの』。その下面から突き出したのは、攻撃用の武器ではなく、着陸脚らしい。

ま、今は全ての重量を脚部で支えるのではなく、反重力装置か何かで重量の大部分を相殺しておくのだろうけど……。

でないと、ここの地面ではあんな小さな底部面積の脚では重量を支えきれず、脚が地面にめり込んで大きく傾いたり、場合によってはころりんと転がって、面倒なことになりそうな気がする。

……絶対、地面に着陸するには不向きな形状だよねぇ、球形って……。

『丸いの』のサイズは、直径数十メートルくらいだ。

地球の船なら、全長300メートル以上の豪華客船とか、全長400メートル以上のコンテナ船とかタンカー等の、もっと遥かに大きい船がたくさん存在するけれど、直径数十メートルの球形というのは、決してそう小さな方じゃない。……特に、積み荷や乗客を運ぶためのスペースが主体である船ではなく、自艦の機能のみにその体積を割り当てている船としては。

それに球形は、普通の艦船の形状に較べて、見た目より遥かに大きな体積を持っている。

ま、それも些細なことだ。それに乗ってきたヤツの存在に較べれば……。

うん、さっき聞こえた声とその 抑揚(よくよう) は、言わずと知れた、我ら『KKR』の最後のひとり、 西園恭子(にしぞのきょうこ) 、恭ちゃんだ。

KKRの中の、一般人枠担当。

……と本人は思っているらしいけれど、それは、『この3人の中では、比較的普通の人寄りの発言をする』という意味に過ぎない。

そして、私とレイコが色々としでかさざるを得なくなるのは、大抵は恭ちゃんが『揉め事を引っ張ってくる』のが原因だ。

『一般人』ならぬ、一般から逸脱した女、『 逸般人(いっぱんじん) 』だ。

うん、恭ちゃんはやはり、私達の仲間として、『居るべくして居る』人材なんだよなぁ……。

あ、丸いのの降下が止まった。

……うん、あんなのが降りられるだけのスペースがないわ、ここ。

上空にいる時は分からなかったけど、下りてきたのをよく見ると、結構デカいわ、これ。

どうしてこんなデカいのに乗ってきたのか。

いや、それ以前に、これは何なのか……。

上空10メートルくらいで停止した丸いのの下部から、何やら着陸脚じゃないのが伸びてきた。

……ああ、乗降用のチューブかな?

そしてそれが地上に到達し、シュン、とスライド状に前面が開いて……。

「香! 礼子! ……の、中学生バージョン!! ……私もだけど!」

「恭ちゃん!」

「恭子……」

ぎゅっと抱き付いてきた恭ちゃんと、それに応える私とレイコ。

恭ちゃんにとっては、私は何十年も前に……私にとっては、5年くらいだけど……別れた、超久し振りに会う親友だもんねぇ。

そして、これで『KKR』がその真の力を発揮する。

……うん、私達は、3人揃ってこそ、だものね!

(女神様だ……)

(お星様に乗って地上に降りてくるなんて、もう、隠そうとか誤魔化そうとかいう気、 欠片(かけら) もないよね?)

(それでも、まだ『魔法使い』っていう設定を守らなきゃならないの?)

(う~ん……)

「え? 何か言った?」

「「「「いいえ、何も!」」」」

気のせいか……。

とにかく、恭ちゃんとの再会を祝して……。

「恭ちゃん、アレで私達と殺人未遂犯を街まで運んでくれない?」

うん、立ってる者は、クララでも使え。世界迷作劇場の、有名な格言だ。

他に、『死ぬなら、犬も道連れに!』とかいうのもある。

ためになるなぁ……。

「それは、ためになったんじゃなくて、だめになったのよ!」

レイコから突っ込みが入った。

ありゃ、口に出てたか……。

とにかく、子供達の眼と耳がある今は、いくら日本語を使うとはいえ、積もる話をするには色々と都合が悪い。

「今からじゃ、警備隊も領主様のところもみんな寝静まっていて、夜勤番の人が責任者を呼び出す、とかいうのも気の毒だよねぇ……。

よし、今日はこのままここで夜営して、明日の朝イチで移動しよう。……夜明け前の、まだ暗いうちにね。

旅人にこれを見られるのも、明るくなってから街の近くでこれから降りるのも、マズいでしょ」

空に浮かんだやつを指差しながらの私の提案に、こくこくと頷くしかない、恭ちゃんとレイコ。

ま、そりゃそうだよね。

殺人未遂犯達は、縛り上げてはあるけれど、念の為に『ぐっすりと眠れるポーション』で、起こされるまで熟睡。不自然な体勢で、何も敷かずに地面に転がって寝てるから、明日の朝には身体中がバキバキだろうけど、死ぬことに較べれば、それくらい大したことはないよね。

そしてバーベキューを再開して、みんなでお食事。

その後は、子供達を 神の戦車(メルカバ) とパンツァーに分けて眠らせ……どうせ、しばらくは眠れずに、どちらかの馬車に集まって互いの今までのことを話し続けるだろうけど……、私達3人はテントでお話。

恭ちゃんが、搭載艇の方が居心地がいいよ、と言って上を指差したけれど、あんなのに乗っていたら、子供達に何かあった時に気付くのが遅れる可能性がある。だから、馬車の隣に張ったテントにいる方が、余程安心できる。

……そして、『搭載艇』かいっ! あのサイズで……。

「……で、あれは何よ?」

そう言って、上を指差すレイコ。

その先にはテントの天井部しかないが、勿論、レイコが聞きたいのはテントについての解説じゃないだろう。

「搭載艇だけど?」

そして、シンプルな恭ちゃんの答え。

「……搭載艇、っていうことは、勿論、母艦がいるんだよね?」

「勿論!」

「「…………」」

そして、私とレイコの声がハモった。

「「どんなチート能力を貰ったああァ!!」」