軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

220 敵 1

「ガキばっかりで、 高価(たか) そうな馬が2頭だと? 親達はどこにいるんだ?

オイオイ、不用心にも程があるだろうが……」

「こんなに大勢のガキがいるんじゃあ、例のガキとは無関係っスよね……」

「チッ、ハズレかよ……」

「夜営用の空き地じゃないところで木々の間から火が見えたから、てっきり依頼のガキかと思ったのによう……」

あ~、料理のための火が、街道から見えちゃったか……。風向きを考慮してかまどの向きを決めたから、街道の方から火が見えやすい向きになっちゃったんだな。失敗した……。

忍者漫画で、『 風下(かざしも) に立ったが、うぬの不覚よ!』というのを、あれだけ何回も読んだというのに……。くそっ!

そして、やっぱりコイツら、リュシーの追っ手か。

でも、写真も人相書きもないから、多分コイツらはリュシーの髪の色を聞いたくらいで、あとは『ひとりで街道を歩いている、みすぼらしい恰好の7歳の幼女』という程度の情報しか持っていないのだろう。

まぁ、そんな者、リュシー以外にはそうそういるはずがないからね。

とにかくそういうわけで、8人の子供達の中にたまたま同じ髪の色をした子供が交じっていても、それがリュシーだとは気付かないか。8人のうち6人が、6歳から10歳までの子供なんだから……。

ま、多分、私とレイコも12~13歳くらいだと思われているだろうけどね。

そして、そんな子供達だけで旅をしているなんてことはあり得ないから、大人達が何かの事情で一時的に離れているだけ、と考えるのが当然だ。

「……って、何なんだよ、オマエら……」

ありゃ、ここ数日、何度も耳にした……というか、私が口にした言葉だ。それが、どうしてチンピラの口から溢れたのだろうか。

「どうして、夜中にこんなところで怪しい男達に絡まれてるっていうのに、全員が平然としてるんだよ! 普通、 怯(おび) えたり警戒したりするもんだろうが!

そしてお前! どうして肉や野菜を焼く手を止めずに、普通に調理を続けているんだよっっ!!」

……あ、私? いや、そりゃあ、チンピラ4人くらい、何の脅威にもならないからねぇ……。

レイコの 障壁魔法(バリア) 、攻撃魔法、私の『ニトログリセリンのようなもの』、体内に毒物生成、その他諸々。

うん、視界外から高速で襲い掛かってくる相手は相性が悪いけど、動き回っていない人間相手なら、私にも簡単に対処できる。

まぁ、まだ攻撃されたわけじゃないから、何もしないけどね。

リュシーの件は、こいつらも一応は『依頼を受けて、その依頼を遂行しようとしている』というだけだから、別にこっちから先制攻撃しなきゃならないという程のことじゃない。

……いくらそれが、ギルドを通さない非合法な依頼であったとしても。

もしコイツらがリュシーを捕らえて依頼者に引き渡すだけであれば、逃げ出した賃金前払いの使用人を捕らえる仕事を受けただけ、ということで、別にコイツらがその依頼を受けたこと自体は非合法ってわけじゃないし。非合法なのは、依頼した商人の行為だけだ。

生死を問わず、という条件にしても、別に生きたまま捕らえた幼女をわざわざ殺すこともないだろうし、捕らえる時に殺さざるを得ないということもないだろう。だから、それはただ『死体を発見した場合でも、報酬は出す』という程度の条件だと解釈すれば、そんなにおかしな依頼というわけでもないだろう。

……でも、自分で言うんだ、『怪しい男達』って……。

自覚、あったんだ……。

「……なぁ、それ、俺達に喰わせろよ」

ハァ? 『俺達にも』じゃなくて、『俺達 に(・) 』? 馬鹿か?

「お断り!」

「 失(う) せろ」

「下等生物めが……」

私、レイコ、レイアの、トリプルコンボ、ジェットストリームアタック。

「なっ!」

「ガキが!」

「ふざけやがって……」

いやいや、ふざけてるのはどっちだよ?

「……なぁ、もう、依頼のガキなんかどうでもいいから、コイツらを連れていかねぇか? ガキ8匹と上等な馬が2頭。かなりの値が付くぜ。依頼のガキ一匹なんかより、ずっといい稼ぎになるだろ?」

ありゃ、4人目が、何やら『名案を思いついた!』って様子で、そんなことを……。

「「「なる程、そりゃ名案だ!」」」

ありゃりゃ……。何か、好意的に解釈してあげれば『ただの、逃げ出した奉公人の捜索依頼を受けただけの人達』だったのに、それから、『完全な犯罪者、それも幼女誘拐と人身売買という重罪犯』にレベルアップしそうだぞ。

……いや、レベルアップじゃなくて、レベルダウンかな?

「そうと決まりゃ、親達が戻ってくる前に、さっさと片付けるぜ。

ま、こいつらを人質にすりゃ、もし親が戻ってきても、どうしようもねぇか。子供達だけを置いて離れた、自分達の馬鹿さ加減を 怨(うら) むしかねぇよな。

ハハ、こりゃ、ガキ一匹を捕まえる報酬なんかより、よっぽど稼げるぜ!

街道にいなかった以上、多分森の中に逃げ込んだんだろうけど、どうせガキひとりで何日も森の中で生きていられるはずがねぇ。今頃は、魔物に喰われて骨だけになってやがるさ。

もうあっちは諦めて、こいつらで大儲け、ってことでいいんじゃねぇか?

馬2頭、そしてこいつらを売り飛ばしゃ、当分は遊んで暮らせるぜ!」

「そりゃいいや! げはははは!」

大人達が戻ってきても、私達を人質に、とか言っているけれど、大人達と鉢合わせにならないに越したことはないだろう。子供達が連れて行かれるのを黙って見送る親なんて、いるはずがない。この場で抵抗、こっそり後をつける、最寄りの街で警備兵に通報、その他、取れる手段は色々とあるし。

うん、急いで仕事に掛かる、というのが普通だな……。

よし、コイツらを完全に『敵』に認定。あとは、手を出してきた時点で、実行犯としてアウト、と。

既にレイコが安全措置を講じているだろうから、子供達に危険はないだろう。

さて、どう出るか……。

「とりあえずふん縛って、焼けてる肉だけさっさとかっ喰らって、急いでここから離れる、ってことでどうだ?」

「それでいこう!」

ありゃ、急いでここから離れるのを最優先にすべきなのに、その前に肉を食う、って……。

そんなに腹が減ってるのか?

あ、もう数日間リュシーを捜し続けていたなら、携帯食とかしか食べていなかったのかな。水は、どこか近場に小川か湧き水でもあれば補充できただろうけど……。

「よし、てめぇら、おとなしく……、 痛(いて) っ!」

右手を突き出して私達に近付こうとして、思い切り指をぶつけた、4人のうちの主導権を握っているらしき男。

「な、何だ? 何にぶつかった? え? こ、ここに、何かある?」

そう、勿論、男がぶつかったのは、レイコ謹製、透明の 障壁魔法(バリア) だ。

「どうした?」

「何、遊んでやがる!」

他の男達も近寄ってきたが……。

「 痛(いて) っ!」

「あ痛っ!」

「な、何だこりゃ!」

勿論、同じ結果に。

「犯罪行為の宣言と、実力行使を確認」

レイコの、感情のない平坦な声。

「 交戦規定(R O E) 、クリア。 全(オール) 攻撃力(アタッキングパワー) 使用自由(フリー) 」

それに続く、同じく平坦な声での、私の台詞。

うん、向こうが一線を越えた。

これで、何の遠慮もなくやれる。

……『 殺(や) れる』じゃないよ。