軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

219 魔 物

翌朝は、朝食はアイテムボックスから出した出来合いのもので簡単に済ませて、すぐに出発。

私達が合流したからにはリュシーの安全は確保されたわけだけど、幼い子供達に森の中で何泊も夜営させるつもりはない。なので、さっさと森を抜けて反対側の街道へ出て、そのまま『リトルシルバー』目指して一直線、という予定だ。

いや、途中、街道脇で夜営したり、宿場町で宿に泊まったり、そしてミーネが働かされていた商家の様子を確認したりするから、あまり『一直線』というわけでもないけれど……。

ま、今の『リトルシルバー』は干物や燻製等、嗜好品しか扱っていないから、一週間や二週間お休みしても誰も困らない。おまけに、領主様公認だから、長期不在でも全く問題ない。

そもそも、仕入れのために数日から数週間お休みとか、この世界ではごく普通のことだ。

……まぁ、食材が近場で手に入る『 リトルシルバー(うち) 』には仕入れの旅とかは関係ないけどね! そういうわけで……。

『停止!』

うおっ!

馬語でのレイコの停止指示に、ハングとバッドが停止した。

まぁ、ぽくぽくとゆっくり歩いていたから、乗っている者達も別に急停止で驚くようなことはない。

あ、今は、ハングにミーネ、アラル、フリア、バッドにイリーとリュシーが乗っている。

さすがに4人乗りは厳しいので、私とレイコは徒歩だ。徒歩ほ……。

ミーネ達は、自分達が歩くから私とレイコは馬で、としつこかったけど、雇用主権限で命令した。

まぁ、雇い主を歩かせて自分達が馬で、というのもアレなんだろうけど、それよりも、ひ弱なお嬢様では森歩きは無理だと思ったのだろうな。そして孤児である自分達は鍛えられているから問題ない、と……。

たしかに、普通であればそうかもしれない。

でも、私達には疲労回復ポーションがあるから、どうってことはない。草や雑木で手足に傷ができても、ポーションですぐ治るし。

ポーション、万歳!

……いや、今はそれどころじゃない。

「中型魔物4頭、急速接近中! 明らかに私達狙いよ、みんな、固まって!」

探索魔法で魔物を探知したらしいレイコの指示で、私が子供達を乗せたままのハングとバッドを寄り添わせた。そして、それを見たレイコが魔法の呪文を唱えた。

「 障壁魔法(バリア) !」

本当は呪文(魔法名の詠唱)なんか必要ないけれど、子供達を安心させるためと、私に『みんなが今、どういう魔法で護られているか』を教えるために、余裕がある時には魔法名を唱えることにしているのだ。

……本当の理由は、『その方が、カッコいいから』らしいけど……。

勿論、相手が人間で、こちらの手の内を晒したくない場合は、無詠唱だけどね。

こういう時には、私のポーション作製能力は今ひとつなんだよねぇ……。

いや、決して役に立たないというわけじゃない。怪我をしてもすぐに治せるから、死にさえしなければ大丈夫、というのはとてつもない安心材料だ。

……でも、先制攻撃や自衛には、あまり相性が良くないんだよねぇ。

とんでもない高速で木の陰から飛び出して襲い掛かってくる魔物なんて、『ニトログリセリンのようなもの』を創り出してうまく爆発に巻き込んで、なんて、絶対に無理だ。

魔物避けの薬剤にしても、夜営の時に周囲に撒く、というような使い方ならばともかく、移動中には使い勝手が良くないし、簡単に狩れる柔らかくて旨そうな獲物を見つけた後では、多少の忌避感のある臭いがしようが、関係なく襲い掛かってくるだろうから。……今のように。

……銃器型ポーション容器?

無理無理! 多分、味方の背中を撃つか、暴発させて指を吹っ飛ばすのが関の山だ。

そもそも、至近距離で急に木の陰から飛び掛かってきた魔物や野獣に 咄嗟(とっさ) に撃って命中させるとか、どこのガンマンだよ……。

それに、銃を日常使いにするのは気が進まない。

女神の奇跡とか、御使い様の怒りとかなら、いいんだ。多少派手にやっても。

それらは、人間風情の手に余る、『絶対に手に入れることのできない力』だから。

でも、私が銃を使うのを見た者は、どう考える?

そう、『あれを手に入れれば、自分にもあの力が』、だ。

そりゃマズいだろう。

ま、私も、いざとなればそんなことは言っていられないのは分かってる。

でも、今はレイコがいてくれる。

……そういうことだ。

適材適所。互いに得意な部分でカバーし合う。

今は、それで充分だ。

「 光線(レイ) 銃(ガン) !」

ぴちゅん、ぴちゅん、ぴちゅん、ぴちゅん!

相手の姿が見えた瞬間、レイコが親指と人差し指を立てて拳銃を模した形にした右手の、人差し指からビームが放たれた。

レーザーなのかメーザーなのか知らないけれど、まぁ、 光線(レイ) 銃(ガン) と 熱線銃(ヒートガン) 、ブラスターとかは、SFではお馴染みだ。今は軍隊で実用化レベルの……、って、レイコが死んだ頃には、もうとっくに完成して民間にも出回ってたのかも。後で聞いておこう……。

いや、よく考えたら、それ、魔法とは違うのでは……。

まぁ、『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』って言うからなぁ……。

霊光波動拳とかとは関係ないのだろう。……多分。

「すごい!」

「 森林狼(フォレストウルフ) が、瞬殺……」

「さすが、みつか……魔法使い様!!」

「さすまほ!」

何じゃ、そりゃ……。

そして、再び前進開始。

それ以降も時々魔物や野獣の類いが出てきたけれど、レイコによって問題なく排除。

とても便利だぞ、レイコ! 一家に一台、欲しいところだ。

私達と合流した以上、リュシーが追っ手を避けるために森で時間を潰す必要はない。なので、ルートを少し右寄りに戻し、経路にロスが出ないように進み、森を抜けて街道に出た。

そしてその時点で既に日が落ちかけていたため、出発は翌日にすることにして、今日は街道脇で夜営することにした。旅人の夜営用に作られた空き地ではなく、ちょっと森に入ったところの、街道からは見えない木々の間で。

寝るのは、 神の戦車(メルカバ) とパンツァーの両方を出して、子供達のテント代わりに。

パンツァーに今回助けた3人、 神の戦車(メルカバ) にミーネとアラルで、私とレイコはテントでいいか。

まぁ、それは後でいい。別に設営作業が必要だというわけじゃないから、寝る寸前に出して用意すればいいだろう。とりあえず魔物と野獣と虫除けの薬剤を 撒(ま) いて、まずは夕食の準備をしよう。

森の中ではあまり火を使いたくなかったし、匂いで魔物や野獣が寄ってくるのもあまり嬉しくはなかったから、出来合いのものやパン、果物とかを出していた。だから、ちゃんとした料理をリュシーに食べさせるのは、これが初めてだ。よし、気合い入れて作るぞ!

そしてアイテムボックスから簡易かまどと調理台、バーベキュー台その他を出して、ちゃちゃっと肉や野菜を切って焼き始めた。子供達は、嬉しそうにはしゃいでいる。

……うん、まぁ、こういうのは初めてなんだろうな。食材のレベル的にも、イベント的にも。

そして、しばらくすると、美味しそうな匂いが……。

「うおっ!」

子供達がいるのとは反対側から、何やら強い視線を感じて振り向くと、……いた。

「……」

「「…………」」

「「「………………」」」

「レイア……」

そう、セレスの同族……但し、セレスより更にレベルが低い劣化分身体らしく、あの『通常状態の、ぽややんセレス』より、更にぽんこつだという問題児……が、じっとこちらを……、いや、バーベキュー台を見詰めていた。

あ~……。

「ハイハイ、いいよ、一緒に食べよう。……で、どうしてこんなところに?」

いや、まぁ、予想は付くけど……。

「いいの? やったぁ! ……いえ、情報収集のためにあなた方を見張っていたのですけど、美味しそうでしたので、つい……」

最初の台詞は地が出たのか、子供らしい言葉だったけれど、すぐにいつもの気取った喋り方になったレイア。

でも、初対面の時に較べると、随分素直になった感じがするなぁ。

本当はセレスみたいにすごい年齢なんだろうけど、それは本体や上位分身体が、であって、いくらそれらの記憶や凄い能力があっても、この子が分身体として、人間並みの低レベルの思考体として生まれたのは、つい最近らしい。 身体(ボディ) も、私達なんかよりはずっと優れた身体なのだろうけど、別に鋼鉄並みの強度とかじゃないだろうし……。

それに、セレスに見つかりたくないから、『謎の力』的なものはあまり使いたくないらしいし。

なので、本当であれば自分で何でもできるくせに、私に金貨をせびっているわけだ。

大損だよっ! プンプン!

ま、だから、普通に相手をしてあげればいいだろう。変に気を遣ったりせずに。

セレスも、何か、そういうのを喜んでいたみたいだからね。

おそらく、 超越者(オーバーロード) である上位存在ではない、現地の生物とコミュニケーションを取るために極端に知能と思考速度を下げたセレスやレイアのような存在は、本体がとっくになくした『そういう感情』の欠片を持っているのだろう。

だから、セレスは私のことを個人的に気に掛けてくれているのだろうし、『あのお方』とやらに対する感情のようなものも……。

それも、『原住生物とコミュニケーションを取る』という目的のために、下等生物の思考を理解するために意図して与えられたものかもしれないけれど、それも含めての『セレス』であり、『レイア』なのだから、そこは深くは考えない。

で、まぁ、とにかくみんなにレイアを紹介した。

いや、勿論、表向きの方の立場をね。私達のお目付役、監視役という口実で追ってきたけれど、その実、自分も親元を離れて好き放題やりたかっただけの跳ねっ返りのお嬢様、という設定の方。

(……この子も御使い様?)

(さぁ……。ただの、カオル様とレイコ様の親戚、というだけかも。そう片っ端から御使い様にはしないんじゃないかなぁ、女神様も……)

(((なるほど……)))

「何か言った?」

「「「「いえ、何も!」」」」

気のせいか……。

ま、レイアも『外見年齢が近い子供達』と一緒に過ごすのは、いい経験になるかもしれない。もし、少しでも『下等生物』に愛着を持ってもらえれば、重畳だ。

……たとえそれが、ペットに対して抱くような感情であったとしても……。

そして私は、その場を盛り上げる為に、美味しい料理を……。

「おいおい、旨そうなモン喰ってるじゃねえか……」

また、何かキタ~~!!

……焼き始めたばかりで、まだ喰っちゃいないけどね。

いや、そんなことはどうでもいいか。

とにかく、怪しい奴らが現れた。

男達は、 如何(いか) にもチンピラでございます、と言わんばかりの連中で、人数は4人。

……リュシーを捜している連中か、それとも別件か?