軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

218 状況説明

「こちらは、私を助けて雇ってくださった、事業所『リトルシルバー』の経営者、カオル様とレイコ様。そしてこの子は、私が脱出した時に一緒に連れ出した子、アラルよ。他の孤児院出身だけど、事情は私達と同じ」

イリーに代わって、ミーネが簡潔に孤児院組以外の者の紹介をしてくれた。

そして……。

「……経営者?」

うん、ま、当然そこを疑問に思うわなぁ、私が12歳前後だと思った場合には……。

* *

「えええええ! その歳で、加工作業場の経営者! そして、私達の孤児院を乗っ取った?」

「誰がじゃい! ちゃんと大金払って買い取ったわ!!」

あれからほんの少し移動して、木々の隙間、草地に腰を下ろした私達は、とりあえず状況を説明した。

そして、私達とミーネの出会いについて話していたところ、リュシーが話の途中で突然騒ぎだしたのだ。

「す、すみません、この子、慌てん坊でそそっかしいもので……。こら、リュシー、騒ぐなら話を最後までちゃんと聞いてからにしなさい! ……まぁ、こんな森の奥で深夜に大声で騒げば、すぐに魔物や野獣がやってくるでしょうけどね」

「ひっ!」

リュシーが小さな悲鳴と共に黙り込んだのは、多分、魔物や野獣の件ではなく、そう言ったイリーとミーネの顔を見たせいだろう。

……うん、それはそれはそれはそれは、怖い顔をしていたからね、ふたりとも……。

え、何? 私の顔の方が怖い? うるさいわっ!

まぁ、ミーネもイリーも、助けてもらった私とレイコにはすごく感謝してるみたいだからね。

それに、ミーネとアラルだけでなく、リュシー達3人を含めた、孤児5人の未来は私達に懸かっていると考えているだろうから、私とレイコの機嫌を 損(そこ) ねるような言動は 看過(かんか) できないのだろう。

……私とレイコは、幼い子供の考え無しな言動くらい、気にしないけどね。

「でも、このねーちゃんは、誰がどう見ても、完全に 悪党面(あくとうづら) ……」

「「「「…………」」」」

「どうして誰も否定しないんじゃ~い!!」

* *

そして説明が終わり、ようやく納得してくれたらしい、リュシー。

「それでは、 末永(すえなが) く、よろしくお願いします!」

私と結婚でもする気かいっ!

というか、まだ誰も『雇ってやる』とは言っていないんだけど……、って、だからこそ、何か言われる前に既成事実化しようとしての、その発言か。さすが、しっかりしてやがる。

いや、まぁ、勿論雇う気だけどね、最初から。

……って! 馬鹿か、私!

リュシーの足の怪我、そのままじゃん!

本人が平気な顔をしていたから、つい話に集中していて忘れてた!

痛くないはずがない。かなり酷く……蔦で巻いて縛り上げておかないと歩けないくらい、そして足を引きずって歩くくらい……、おまけに、岩で切ったというのに。

見ただけで、紫というかどす黒いというか、ヤバそうな色になって腫れ上がっているというのに。

「足を見せなさい!」

「え……」

「いいから、その左足を見せなさい!」

私が何をするかを恐れてか、それとも遠慮してか、少し引いていたリュシーに足を見せるよう強要。ミーネも私の言うとおりにするようリュシーに目で促してくれたからか、観念して、恐る恐る左足の足首を私の方に伸ばしたリュシー。

その足を、傷めた足首には触れないよう注意してふくらはぎの部分を下から支えるようにして保持し、じっくりと検分した。

「……合図では、『問題なし』って符丁じゃなかった?」

「これくらいなら、『問題なし』の 範疇(はんちゅう) よ。死ぬような怪我じゃないし、多少移動速度が落ちるとはいえ、動けなくなるようなものじゃないし……」

馬鹿じゃなかろうか。

無理をすればますます悪化するし、後遺症が残るかもしれない。また、菌が入って、化膿したり、破傷風のような病気に罹る可能性もある。

だから……。

急いでバッグに手を突っ込んで……。

(治癒ポーション、出ろ!)

そして、創り出したポーションの瓶を掴み出した。

「はい、これをかけて!」

そう言って、バッグから出したポーションを差し出した。

念の為、2本。1本は怪我をしている部分に振りかけて、もう1本は飲ませる。既に体内に菌が回っている場合に備えて……。

飲ませるだけでも大丈夫だろうけど、外傷なのに飲み薬だけ、っていうのは、明らかにおかしいものねぇ……。

しかし、リュシーはポーションの瓶を受け取ろうとはしない。

怪しい薬を使うのは気が進まないからか。それとも、高価な薬の代金を請求されて、何年もただ働きをさせられるのではないかと警戒しているのか……。

仕方ないか。初対面の者を簡単に信じるには、この子達は、今まで苦労をし過ぎてきた。

なら、仕方ない。自分でやろう。

ポーションの 蓋(ふた) を開け、リュシーの左足に、そっとポーションを振りかけた。

まずは、岩で切ったところへ。そして、捻挫して腫れ上がっているところへ……。

そして、もう1本を飲ませる。半ば、無理矢理に。

「え……」

「「…………」」

ぽかん……

「あ……」

瞬時に怪我が完治したのを見て、驚きの表情のリュシー、当然のような顔のミーネとアラル、両眼を見開いて固まっているイリーとフリア、そして何やら呆れたような顔のレイコ。

「み……うぷっ!」

「め……あぐぐ!」

そして、何やら言いかけたイリーの口を手で塞ぐ、ミーネ。

同じく、ミーネを見習って、フリアの口を塞いだアラル。

み? め?

ふたりは、何を言いかけたのだろう?

そして、ミーネとアラルは、どうしてあんなに慌ててふたりの口を塞いだのだろうか?

リュシーは、固まったまま、微動だにしないし……。

* *

「今夜は、このままここで夜営します」

こくこく!

皆の了承を得て、この場所での夜営が決定。

ここは、リュシーを確保した場所のすぐ近く、少し木々がまばらになっているところだ。

そこに、いつものように 馬車(パンツァー) を出して、続いて組み立てたままのテント、調理台、水タンク、食材、椅子とテーブル、その他諸々……。

万一に備え、就寝用には 神の戦車(メルカバ) よりもゴツくて防御力が高そうなパンツァーを選択。子供達をその中で寝かせ、私とレイコはテントを使う。……絶対、子供達は積もる話で盛り上がり、なかなか寝かせてくれないだろうからねぇ。

(……もう、隠す気ないんじゃないの?)

(う~ん……。でも、まぁ、まだ一応は『気付いていない振り』をしていなくちゃいけないんじゃないかなぁ……。物語だと、大抵はそうでしょ? 『オマエ、何で気が付かないの?』って状況が続くのが、お約束でしょ?)

(あ、やっぱり?)

「アラル、ミーネ、何か言った?」

「「いいえ、何も!」」

「あれ、そう? じゃ、夕飯を作ろうか。みんなも手伝ってね」

こくこく!

必死で頷く、新規メンバーの3人。

(とりあえず、『コイツに逆らっちゃ駄目だ』ということだけは理解したらしいな……)

そして、そんなことを考えている、レイコであった……。