軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

203 ブラックセレス登場!

「……あなたがカオルね?」

「え? ……うん、まぁ、そうだけど……」

買い物のため街を歩いていると、突然話し掛けられた。凄い美少女に……。

確か、アラルが6歳、ミーネが9歳だっけ? この子はミーネと同じくらいだけど、あのふたりは浮浪児生活やら孤児院やらで過ごしてきたからか、平均より少し小柄だから、手入れされた綺麗な髪と肌、シンプルだけど上等そうな服装の金持ちっぽいこの子は、年齢的にはミーネより少し下かなぁ……。

これがナンパ目的のチャラ男や腹に一物ありそうな商人、むさいおっさんとかならスルーするけれど、そういうのではなく何か私に用があるみたいだから、一応ちゃんと話を聞くことにしたのだけれど……。

「あなた、私の世話をしなさい!」

「何か、超図々しいの、キタ~~!!」

* *

「……で、レイアちゃんは……」

「レイア様、と呼びなさい。その時には、直立不動で、最初に『 畏(おそ) れ多くも』を付けるようにね」

「どこの天皇陛下かっ!」

「冗談よ……」

笑えんわ! さっきの話を聞いた後じゃあ……。

そう、コイツは、さっき恐るべきカミングアウトをしやがったのだ!

その内容というのが……。

「ま、 新米女神(こむすめ) のセレスティーヌがちゃんとやっているかどうか、私がしっかりと監査してあげるわよ」

そう、これだ……。

どうやら、セレスの同類、いや、上司か監督官、査察官みたいだ……。

まぁ、この連中は見た目と実年齢は全く関係ないだろうということは、理解できる。

……イカン。

イカンぞ、これは……。

セレスに迷惑を掛けるわけにはいかないし、もし、もし万一、『原住生物に、そんなチート能力を与えるなどと、いったい何を考えているのか!』ってことになって、私やレイコの能力が剥奪されたりすれば……。

……イカン。

イカンぞおおおぉっっ!!

* *

「……で、内緒の査察だから、勿論セレスティーヌには私のことは絶対秘密にするように。もし喋った場合のペナルティが怖ければね」

こくこく

頷く以外に、どうしようもないだろ!

「私がここで能力を使うとセレスティーヌに感知されちゃうから、私は力を使うわけにはいかないのよ。だから、私が困っている時には、あなたが何とかするように!」

こくこく

いや、それは納得できる理由だからね。

「とりあえず、住むところと、美味しい食べ物、それと、ええと、……おかね? それを、たくさん寄越しなさい。食べ物というものにはとても興味があるので、初体験において私の期待を裏切るようなことのないように!」

「いや、それは納得できる理由じゃねえぇ~~!!」

コイツ、セレスの腹黒バージョンだ!

そう、言うなれば、 腹黒(ブラック) セレス!!

「……で、一緒に住むつもりはない、と?」

「当たり前でしょう! そんなことをすれば、好き勝手なことが……セレスティーヌがあなたの様子を確認する時に見つかってしまうでしょうが!」

……今、本音、出た!

絶対、今のが本音だああああぁっっ!!

* *

「……で、街で一番の宿屋に部屋を取らせて10日分の宿泊費を払い、アイテムボックスに作り置きしてある料理を食べさせて、金貨30枚を渡してきた、と?」

「うん……」

私の報告を聞いたレイコは、しばらく考え込み……。

「嘘ね」

「だよね~!」

そう。セレスの仕事というか、役割は、次元世界の融合事故を防ぐことのはず。そこには、原住生物の生死なんか、殆ど考慮されていない。

セレス自身が、仕事の邪魔だとかムカついたからという理由で、簡単に『神罰』を下しているくらいだ。あの、ぽややんで悪意のない、温厚な性格であると思われるセレスでさえ、だ。

……つまり、あの種族は特殊な例を除いて、原住の下等生物のことなんか殆ど気にしていない、ってことだ。おそらく、人間がアリンコに配慮するほどの関心すら持っていないだろう。自分に何らかのメリットでもない限り。

だから、もし『査察』というものがあったとしても、それはセレスの『歪み』の調査のやり方とか、発生した『歪み』の処理の仕方とかが対象となるはずだ。……少なくとも、原住生物と接触したり、美味しいものを食べ歩いたり、お金をせびったりすることじゃない、決して!

……ということは、だ。

「「セレスに内緒で、こっそり遊びに来てるだけだ!!」」

あの種族は、人間には想像することもできないほど知性的に成熟しているため、悪意だとか憎しみだとかいう概念が殆どない。

セレスくらいまで知性と能力を低下させた分身体だと、僅かにそういう感情も発生するようであるが、それもそう大したものではない。セレスがそれで簡単に神罰を振りまくのは、そういう感情が強いからではなく、ただ単に、人間の生命など何とも思っていないからに過ぎない。

人間も、大した悪意もなく虫を殺すではないか。ほんの少しイラついたというだけで……。

私は、好きな人から世話を頼まれたペット。そしてその周囲の人間達は、ペットの子猫が連れてきた、遊び仲間の近所の野良猫。その程度なのであろう、多分。

だから、あの少女……の姿をした、高次生命体の分身体……も、おそらく『悪意』というようなものはあまり持ってはいないであろう。ただ、気紛れでここを訪れただけで……。

* *

「……とか考えているのでしょうねぇ、下等生物が……」

街で一番の高級宿の部屋で、紅茶を飲みながらカオルからせしめたお菓子をパクついているレイア。

「確かに、本体はそんな感情とは無縁だけど、下等生物との意思疎通の必要がある私達『極限まで能力を落とした分身体』には、下等生物の考えを理解するための必要性から、そういう感情もほんの少しあるのよねぇ。……陰謀、策略、 陥(おとしい) れ、その他諸々の思考や感情が……。

そして、私の本体が担当区域の『歪み』監視のために作り出した、セレスティーヌとほぼ同格の分身体が、謀略のために更に分岐して作り出した分身体である、この私。直属 分岐元(じょうし) の意を汲んで、謀略の限りを尽くすわよ!」

そして、左手に紅茶のカップ、右手に食べかけのお菓子を持ったまま、にやりと嗤うレイア。

「セレスティーヌより先に、より詳細な あの子(カオル) の暮らしぶりの情報を集めて、 地球の管理者(あのお方) に報告して、歓心を得るのです! そして、セレスティーヌよりも、直属 分岐元(じょうし) よりも、私に対して好感を抱いてもらうのです!

セレスティーヌどころか、直属 分岐元(じょうし) すら 蔑(ないがし) ろにするという、この極悪非道振り!

ああ、我ながら恐ろしくなるほどの、何たる悪意、何たる謀略! 悪の化身ですわっっ!!

くふ。

くふふ。

くふふふふふふ……」

精神的に成熟した、神の如き 超越種族(オーバーロード) 。

その超劣化分身体による、 渾身(こんしん) の悪行。

それは、所詮、この程度なのであった……。