軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

984 ハガネ将国の被害

迎撃に失敗した!

そう判断した俺が咄嗟に障壁を張り巡らせるのと同時に、凄まじい爆炎と轟音が第二部隊を襲っていた。

投擲された球型抗魔竜人が、同時に大爆発を起こしたのだ。

「くぅぅぅっ……!」

『フラン! 大丈夫か!』

(なん、とか……!)

四方から吹き付ける爆風のせいで、身動きすらできない。

全力の障壁でも防ぎきれない高熱のせいで、フランの皮膚があっという間に炭化していくのが見えた。俺の刀身も泡立ち、耐久値が削れていく。

俺はフランを回復しながら、ディメンジョンシフトで難を逃れた。迎撃のために無理をし過ぎて、いつも以上に発動までに時間がかかってしまったのだ。

戦場に荒れ狂う炎と粉塵のせいで、周囲の様子が確認できない。炎に強力な魔力が含まれていることで、スキルでの感知も阻害されているのだ。

すぐ近くにいたはずのマツユキの気配さえ、感じ取ることができない。

10体中9体は遠くへと弾き飛ばしたはずなのだが、球型抗魔竜人の自爆があまりにも凄まじ過ぎたのだ。

100メートル程度では、完全に無効化することができていなかった。

これで直撃は1発だけなのだから、恐ろしい。全てが至近距離で炸裂していたら、俺やフランもどうなっていたか分からなかった。

十数秒ほど経過し、ようやく視界が晴れてくる。だが、フランは言葉を詰まらせ、立ち尽くしてしまった。

「みん、な……」

『こりゃぁ、酷ぇ……』

ハガネ将国の兵士の半数以上が、大きく抉れて瓦礫だらけとなった大地に倒れ伏している。倒れる多くの者たちの肉体は炭化し、四肢が折れ曲がり、欠損していた。

その肉体の損傷を見れば、ただ転倒してしまっただけでないのは一目瞭然だ。

想定以上の被害であった。

それでも生き延びた者たちがいるのは、マツユキのお陰である。ギリギリでベルセルクの力を使い、爆発の威力を殺したのだろう。

そのため、彼女の背後にいる兵士たちには、無傷で立っている者もいた。

大きな被害の出たハガネ将国に対し、冒険者たちの被害はほぼない。

イザリオがイグニスの力を使い、結界を張ったのだ。火炎はその結界に吸収され、衝撃も相殺されたのだろう。

ただ、残っていた抗魔はこの間も動き続けており、結界の中に逃げこもうと走っている最中に攻撃されて怪我を負った者たちがいた。

そんな残った抗魔たちも、爆発によってほとんどが排除されたが。

だが、これで終わったわけではない。

『くるぞ!』

「!」

人型の抗魔竜人たちが、未だ混乱している第二部隊の目前まで迫っていた。

球型抗魔竜人の自爆特攻がなくとも、10体の人型抗魔竜人だけでこちらが壊滅しかねないほどの脅威なのだ。

いや、近づいてきているのは8体だけである。2体はウルシが引きつけてくれていた。かなりボロボロになりながらも、挑発を繰り返して敵意を自分に向けるように立ち回っている。

『俺たちも、負けてられないぞ!』

「ん!」

とは言え、どう動くべきだ? イザリオはまだ神剣を開放したままだが、これ以上の消耗は危険だろう。マツユキは――。

ゾクッ。

「ん?」

『あれ?』

急に視界が切り替わり、フランが驚いている。だが、一番驚いたのは俺だ。なんで俺は転移を使った?

いや、分かっている。突如湧き上がった恐怖心に従い、逃げたのだ。そうせずにはいられぬほどの怖気が、俺を襲っていた。

その恐怖の大元は、黒と白が入り混じった不気味な魔力を立ち上らせて立ち尽くす、一人の少女だ。

『マツユキの様子がおかしい……』

(あの黒と白の魔力、ベルセルク?)

『ベルセルクと、その鞘だ!』

マツユキや剣からは黒い魔力が、鞘からは白い魔力が立ち上っていた。

その様子を見ているだけで、この場所から逃げ出したくなるような不安感が湧き上がってくる。それはフランも同じであるらしく、その尻尾がヘニョンと垂れ下がっていた。

どんな敵からも逃げ出さずに戦い続けてきたフランが、マツユキとベルセルクを見て怖気づいている。今のマツユキは、それほどの威圧感を放っていた。

もしかして、狂神剣が開放されようとしているのか?

そこに、イザリオから声がかかった。

「嬢ちゃん! 逃げるぞ!」

そう叫んだイザリオは、抗魔竜人と第二部隊の間に炎の壁を作り出す。神気が込められた、凄まじい炎壁だ。

ただ、イザリオが逃げると言った相手は、抗魔竜人ではない。彼は冒険者たちを引き連れて、マツユキから逃げようとしていた。炎の壁は抗魔竜人に邪魔されず、逃げる時間を稼ぐためのものだろう。

その様子を見て、フランも即座に動き出す。

(イザリオがあんなに焦ってる)

『ああ! ウルシ! もういい! こっちに戻ってくるんだ!』

(オン?)

『大丈夫だ! それよりも、急げ!』

(オ、オン!)

念話でウルシを呼び戻す。こうなったら、俺たちも逃げるしかない。

背を向けた俺たちの耳に、マツユキの声が聞こえた。

「暴力の正しき姿を示しなさい。狂い、壊せ、ベルセルク! 神剣開放!」